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みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。庶民には実感のないものでしたが、戦後最長であった「いざなぎ景気」を超えたと言われた昨年夏頃までの好況もどこかへ吹き飛び、昨年秋から日本経済は急激な景気後退にさらされています。サブプライムローン問題に端を発した今回の不況は、100年に一度の危機とも言われており、日本経済にも輸出産業を中心に大打撃を与え、それに伴って昨年末から派遣切りをはじめとする雇用不安が大きな社会問題になっています。当然ながら、日本の景気の良し悪しは日本人だけではなく日本で暮らす外国人にも大きな影響を及ぼします。そこで、今回は在日外国人と日本の不況について取り上げましょう。
「小泉改革」の一環として平成16年に労働者派遣法が改正され、製造業でも派遣労働が可能となり、派遣労働者数は飛躍的に増加しました。経済のグローバル化の下、派遣労働者だけではなく、正社員から非正規雇用従業員へと雇用システムがシフトしていくなかで、労働者の3分の1が非正規雇用従業員で占めるまで拡大していましたが、今回の世界的不況によって、自動車や家電といった輸出産業が未曾有の不況に陥ったため、派遣労働者・期間従業員の雇い止めや解雇、期間満了前の契約切りが大規模に行われています。この流れは今後しばらく続き、派遣切り等による失業者は数十万人から最大で百万人に上ると予測されており、また雇用調整は非正規雇用従業員だけではなく正社員にも及ぶと考えられています。
企業の人員削減が加速するなかで、日本人と同様かそれ以上に打撃を受けているのが外国人労働者です。平成19年に雇用対策法が改正され、平成19年10月1日からすべての事業主に、外国人労働者(特別永住者などを除く)の雇用や離職の際に氏名・在留資格・在留期間などを届け出ることが義務づけられたのですが、今年の1月に平成20年10月末現在の外国人雇用状況の届出状況が厚生労働省から発表されました。それによると、外国人労働者数は48万6398人で、このうち労働者派遣・請負事業の事業所に雇用されている外国人労働者は16万3196人、外国人労働者の33.6パーセントとなっています。総数には留学生らのアルバイトも含まれていますので、それを除くと外国人労働者の約4割が派遣や請負労働者ということになります。その多くが、今回の派遣切りに直面しています。
外国人の場合、派遣労働者になるにも要件があり、通常、「日本人と結婚している」「日本人の子である」など日本人との身分または地位に基づく在留資格の就労に制限のない外国人でないと派遣労働者になることができません。それで、ブラジル人やペルー人の99パーセントは日本人との身分または地位に基づく在留資格で滞在しているので、外国人派遣労働者の主力となっていました。外国人労働者に占める派遣労働者の割合は静岡・滋賀・岐阜・山梨・三重・栃木・群馬の7県で5割を超えていますが、なかでも静岡県は64パーセントを超え、多くの日系人派遣労働者が生活していました。現在の雇用状況は深刻で、静岡県浜松市は全国最多の2万人のブラジル人が居住していますが、世帯主のほとんどが派遣・請負労働者であるため、ハローワーク浜松では業務開始前からブラジル人が長蛇の列を作っているそうですが、求人はほとんどありません。日本人派遣労働者と同じく職と一緒に住居を失い、家族でホームレスとなるブラジル人も増えています。帰国していく日系人も増えていますが、じつは帰国費用があるだけまだマシで、帰国旅費すらままならない日系人も多数存在するようです。
また、派遣労働者だけではなく、外国人研修生や技能実習生の雇用も悪化し、研修切りや実習切りが始まっています(外国人研修生は労働者ではありませんが)。留学生が日本で就職することも難しくなってきています。そのうえ、留学生はここのところの円高で仕送りの価値が減ったため、生活も苦しくなっています。
体力のある大企業やメーカーが非正規雇用従業員を使い捨てのように使用して安易に派遣切りを行なうのは問題ですが、不況下における雇用調整は企業にとって避けられない側面があります。とりわけメーカーからの仕事が全くなくなった下請企業が死活問題として従業員を切るのはやむを得ないところがあります。市場経済を推し進める代わりにセーフティーネットをしっかりと張っておくという話だったはずですが、実際に不況になってみるとセーフティーネットはなかったということが露呈した状況です。今回の不況に際して場当たり的であっても緊急の対策が必要なのは言うまでもありませんが、日本人労働者の対策と同時に、日本の経済を支えてきた、また少子高齢化で人口が減っていく今後の日本を支えるであろう外国人労働者の対策も、長期的な観点から真剣に考えていく必要があるでしょう。
平成21(2009)年3月1日
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