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◆◆◆メールマガジン国際結婚◆◆◆

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◆第55章 謹賀新年◆

明けましておめでとうございます。

旧年中は本メルマガをご愛顧頂きましてまことにありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

行政書士 高坂大樹


▼現代アメリカの黒人映画

2008年はブラックパワーの時代でした。アメリカにおいても、日本においても。そこで、本メルマガ恒例となったお正月の映画紹介は、現代アメリカにおける黒人を描いた映画を紹介しましょう。

その前に、まず日本における黒人との関係の歴史のお話から。日本人と黒人との初めての出会いは、織田信長の時代だと言われています。信長はイエズス会のヴァリニャーノが連れていた黒人奴隷を見て驚き、騙されているのではないかと黒人を徹底的に洗わせても色が落ちないのですっかり気に入り、ヤスケと名付けて家来にしたと言います。ちなみに、本能寺の変以後のヤスケの消息は不明ですが、どうなったのでしょう。

その後は、江戸幕府の鎖国政策や地理的に離れていることもあって、日本では黒人は意識すべき存在ではありませんでした。日本人と黒人が本格的に出会ったのは、第2次世界大戦の敗戦後です。敗戦国の日本には占領者の米軍が進駐してきましたが、進駐軍の米兵に少なからぬ黒人がいました。米兵と日本人女性が付き合ったり結婚したりするようになると、ハーフの子供たちが生まれます。当然、白人のハーフだけではなく、黒人とのハーフも生まれました。有名人では野球の鉄人衣笠幸雄やミュージシャンのジョー山中が進駐軍の黒人米兵と日本人女性との子供です。昨年日本の演歌界の目玉になったジェロの母親も、黒人米兵と結婚した日本人女性のハーフです(つまりジェロは日本人の祖母を持つクォーターです)。また、進駐軍ではなく、日米安保条約に基づく在日米軍になりますが、女子プロレスラーのアジャ・コングも黒人米兵との間に生まれたハーフです。この当時は、欧米ほどではないにしても、日本でも黒人や黒人とのハーフに対する差別があったようです(白人とのハーフに対する差別もありましたが)。

80年代になると、黒人は差別の対象ではなく、クールな存在として受け取られるようになっていきます。それ以前も、ブルース、ジャズ、ソウルなど音楽やダンスの世界では、黒人はミュージシャンやダンサーにとって憧れの存在でした。顔を黒く塗って黒人への憧れとリスペクトを表わしたシャネルズ(ラッツ&スター)は象徴的です。80年代になると、陸上のカール・ルイス、ボクシングのマイク・タイソン、歌手のマイケル・ジャクソンやホイットニー・ヒューストン、俳優のエディ・マーフィなどが外タレとして一世を風靡し、日本国内でも「変なガイジン」のオスマン・サンコンや巨人のウォーレン・クロマティが大活躍しました。その後もデンゼル・ワシントン、ハル・ベリー、ビヨンセなどの黒人のスターが次々に生まれ、黒人は音楽やダンスの愛好者だけではなく一般的にも憧れの対象となります。ファッションにも黒人のものが取り入れられ、ガングロの流行なども日本人にとって黒人が憧れの対象であることの極端な例です。最近も日本に帰化したボビー・オロゴン(近田ボビー)や在日韓国人とアフリカン・アメリカンとのハーフである歌手のクリスタル・ケイなどが活躍しており、黒人は日本人にとってすっかり日常的な存在になったと言えるでしょう。

そして昨年平成20年(2008年)は、日本でブラックパワーが席捲した年でした。音楽界では、黒人の血を引く二人の新人が活躍しました。すでにふれた黒人演歌歌手のジェロは母方の祖母が日本人であるクォーターですし、「そばにいるね」が大ヒットした青山テルマは父方の祖父がトリニダード・トバゴ人というクォーターです。また、ソフトバンクのCMで人気が出たダンテ・カーヴァーがCMタレント好感度ランキングで、前年まで8年連続で1位だった木村拓哉を押さえて男性部門1位に選ばれるなど、黒人や黒人の血を引くアーチストの活躍が目立ちました。

アメリカでは、何と言っても昨年11月4日のアメリカ大統領選挙で民主党のバラク・オバマ候補が当選したことがブラックパワーの最大のものでしょう。オバマ氏が正式に第44代大統領に就任するのは2009年の1月20日の大統領就任式後になりますが、オバマ氏はケニア生まれの父(黒人)とアメリカ生まれの母(白人)との間に生まれたハーフということですが、初めてのアフリカン・アメリカンのアメリカ大統領の誕生となります。人気テレビドラマ『24』の世界が現実のものとなったわけです。

もちろん、オバマ大統領が誕生するとは言え、アメリカにおける黒人と白人の人種対立の現状はまだまだ深刻です。黒人だけではなく、アメリカにはあらゆるエスニックに対する差別、またエスニックグループ間の差別や対立が存在しています。これには日本人のような人種というものに強い執着を持たない雑種民族と異なり、有色人種を差別する白人の根強い意識にも原因があるのでしょう。アメリカにおける黒人と白人の人種対立の現状は映画でも描かれていて、『クラッシュ』(05)や『フリーダムランド』(06)など枚挙に暇がありません。黒人だけではなく、ラティーノ、アジアン、プア・ホワイトをひっくるめて貧困層の問題と捉え、その克服を目指す『ステップ!ステップ!ステップ!』(05)、『レッスン!』(06)、『フリーダム・ライターズ』(07)などもあります。反対に、ヒップホップ・カルチャーに関しては黒人の方がエリートでありクールで、白人はイケてないという視点を持った『セイブ・ザ・ラストダンス』(01)や『8Mile』(02)、『ヘアスプレー』(07)などもあります。

以上に挙げた映画はそれぞれ観ておいて損のない作品としてオススメしておきますが、今回は新年ですから、人種問題をあまり深刻にならずに笑いの要素を入れて描いた黒人が主人公のコメディ映画を3本紹介することにしましょう。

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マーシーX フレンズ以上、恋人未満!?
  • 製作2003年、アメリカ
  • 監督リチャード・ベンジャミン
  • 出演リサ・クドロー、デイモン・ウェイアンズ

過激な内容でアメリカ全土の顰蹙を買っている黒人ラッパーの所属するレーベルに対して不買運動が起こります。レーベルを所有するユダヤ人メディア王がショックで入院してしまい、世間知らず恐い物知らずの社長令嬢が会社存続のためと黒人ラッパーの説得に向かいますが、超セレブのユダヤ娘とギャングまがいの黒人ラッパーが変な風に化学反応を起こして事態はとんでもない方向に展開していくという抱腹絶倒のコメディ映画です。ラップシーンは、黒人娘に淡い恋心を抱く大統領候補の民主党上院議員(白人です)を主人公にしたヒップホップ映画の名作『ブルワース』(98)のそれと並ぶ白眉です。

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ゲス・フー〜招かれざる恋人〜
  • 製作2005年、アメリカ
  • 監督ケヴィン・ロドニー・サリヴァン
  • 出演アシュトン・カッチャー、バーニー・マック、ゾーイ・サルダナ、ジュディス・スコット

保守的な家庭に育った黒人女性と軟弱な白人青年が結婚するまでの紆余曲折のプロセスを描いたコメディ映画です。黒人女性の父親は軍隊上がりの頑固親父で、娘の相手が軟弱な白人の若者と知り、黒人女性の家族に騒動が巻き起こります。マッチョな黒人オヤジといまどきの若者である白人青年との対立を通して、人種問題をユーモアあふれる軽妙なタッチで描いています。これは往年の名作『招かれざる客』(1967年)のリメイクで、前作では黒人男性と白人女性の結婚をめぐる人種問題がテーマでしたが、約40年が経過して人種差別の状況が変化していることもあり、性別が変更されています。そしてむしろ黒人が白人を差別している話になっています。

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『僕のアイデンティティーは一大事?!』
  • 製作2007年、アメリカ
  • 監督マイク・セローン
  • 出演ドナルド・フェイソン、ジェイミー=リン・シグラー

アメリカのリトルイタリーで育てられ、本人も自分は色の黒いイタリア人だと思っている黒人青年が、本当の親が現われたことでアイデンティティに混乱を来たし、彼をイタリア人だと思って付き合っていたユダヤ人の恋人ともぎくしゃくしはじめるというという民族や文化の違いをテーマにしたコメディ映画です。青年はどこから見ても黒人なのに、本人も恋人もそれに気づかないという大ボケの設定が、ゆるい笑いをかもしだしています。

平成21(2009)年1月1日

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