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◆第45章 留学生の就職について(1)◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。3月になり、学生の皆さんにとっては卒業のシーズンになりました。すでに就職が決まっている卒業生の方が多いとは思いますが、ビザの問題がある留学生は日本人学生よりも就職が難しい面があり、まだ求職中の方もおられると思います。今回は留学生の大学・専門学校等の卒業後の就職についてお話します。

本論に入る前に、まず最新のニュースを紹介します。毎日新聞等の報道によると、2月28日、東京都の専門学校生(中国籍)が有印私文書偽造などの容疑で逮捕されました。容疑者の専門学校生は大学の卒業証明書などを偽造して留学生らに販売していたそうです。偽造証明書を依頼していた3人(いずれも中国籍)も入管法違反で逮捕されています。専門学校生のパソコンからは、19大学63学部と9専門学校の偽造卒業証明書など計86人分が見つかりました。最初に事件が発覚したのは昨年の4月で、さいたま市の東京入国管理局出張所に在留資格変更の申請に来た男(中国籍)の成績単位修得証明書が良すぎることを入国審査官が不審に思ったのがきっかけだそうです。内偵を進めていたところ、今年も犯行を繰り返していたので発見逮捕したという経緯であると推測されます。捕まった依頼者の1人は「大学の卒業資格があれば、日本でいい企業に就職できると思った」と供述しているようです。

政策的に単純労働者を受け入れていない日本で、外国人が日本で就職するためには就労可能な在留資格を取得しなければなりませんが、それには一定以上の学歴・資格・経験・技能などが必要とされています(就労に制限がない特別永住者や日本人の配偶者等は除きます)。日本の大学等を卒業した(専門学校を卒業し専門士の称号を取得した場合も含む)というのはその要件の一つで、上に紹介した事件のように卒業証明書を偽造するメリットはそこにあります。事件の発端となった成績単位修得証明書が良すぎて不自然だったというのも、卒業証明書だけではなく在学時の成績も考慮されることがあるので、成績単位修得証明書までも偽造していたのかもしれません。

さて、留学生が卒業後に日本国内の事業所に就職する場合は、日本人の学生とは異なりどんな就職先でもいいという訳にはいきません。まず取得可能な在留資格に関して言えば、通常「技術」か「人文知識・国際業務」のどちらかの在留資格になります。「技術」はSEや技師など、「人文知識・国際業務」は事務や営業などで、ごく大雑把に言えば理工系の学校を卒業した者は「技術」の在留資格、文科系の学校を卒業した者は「人文知識・国際業務」の在留資格になります。就労可能な在留資格には14種類(外交・公用まで含めると16種類)ありますが、それらは弁護士や医師、大学教授や教師、研究者、ジャーナリスト、宗教家、芸術家、歌手・スポーツ選手、外国料理のコックなど資格や専門知識、業績、実務経験がなければならないものがほとんどで、一般的に留学生が進路として選択することが難しいものです。それ以外では、どこかに勤務するのではなく自分で起業することでも「投資・経営」という在留資格が取得できます。これは才覚のある留学生には可能です。

それに加えて、「留学生本人の能力・資格・成績など」「会社の事業内容と財務状態など」「留学生の能力と業務との関係と必要性」の3点を満たし、日本人が従事する場合と同等額かそれ以上の給料を受け取る必要があります(労働ダンピングを防ぐためです)。

基本的に学校で学んだ内容と業務が関連していなければなりませんが、ただし「人文知識・国際業務」には、翻訳や通訳・語学指導・国際取引など外国語を使う仕事や、外国人ならではの感受性が必要なデザイン・商品開発などが含まれているので、この範囲の業務には学校で学んだ内容と業務が全く関連していない場合でも認められる可能性があります。また、会社側にもその者を雇う必要性がなければなりません。たとえば、日本国内だけで仕事をしている建設業者が、通訳として外国人を雇いたいとして申請しても、その必要性は認められないでしょう。また個人商店の場合や、法人でも、資本金があまりに少ない場合は雇用が認められにくく、財務状態も健全である必要があります。

就職が決まれば、留学から在留資格を変更することが必要になります。在留資格変更申請書以外の必要書類は、留学生はパスポート・外国人登録証・卒業証明書(卒業見込証明書の場合は卒業証明書を再提出する)・専門士の称号を有することの証明書・履歴書など、会社は雇用契約書の写し(業務内容・雇用期間・地位・報酬が記載してあるもの)・登記簿謄本・損益計算書・会社の事業内容を明らかにする資料(パンフレット等)・雇用理由書などです。

次回は卒業までに就職できなかった場合の手続きについてお話します。

平成20(2008)年3月1日

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