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◆第44章 日本語学校について◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。先月、京都市の日本語学校による学費未返金問題がクローズアップされました。今回は日本語学校についてお話します。

日本語学校とは、日本語を母語としない人に日本語教育を行なう学校で、学校教育法上は専修学校や各種学校あるいは私塾に当たります。母語とは赤ん坊の頃から自然に習得した言語のことです。「外国人に日本語教育を行なう」ではなく「日本語を母語としない人に日本語教育を行なう」というのは、日本国籍を持っていても必ずしも日本語を母語としない人がおり、逆に日本国籍を持っていなくても日本語を母語としている人がいるため、日本語教育が必要なのは外国人とは限らないからです。たとえば、帰化者や帰国子女の場合は日本語教育が必要な場合がありますし、外国人でも特別永住者(二世以降)などの日本語のネイティブスピーカーには日本語教育は必要ありません。

外国人が日本に滞在するためには在留資格が必要ですが、日本語学校に通うために来日した外国人の在留資格は「就学(就学ビザ)」です。ただし、日本語学校に通っていても、仕事を終えてから通っている人の場合はいわゆる就労ビザ(就労可能な在留資格)ですし、その家族が通っている場合は家族滞在、国際結婚の場合はいわゆる結婚ビザ(日本人の配偶者等などの在留資格)で、就学ビザは日本語学校入学を一義的な目的として来日した人のためのものです。

ちなみに勉強を目的として来日する在留資格には「就学」と「留学」があり、「就学」は日本語学校だけでなく高校や各種学校の留学生に適用される資格、「留学」は大学・大学院あるいは大学に準じる専修学校の専門課程や高専などの留学生に適用されます。

就学ビザで日本語学校に通う外国人留学生は、卒業後は日本の大学または大学院に進むのが一般的です。というより、日本の大学または大学院を目指す外国人が、その準備のために日本語学校に通うというのが一般的です。2006年度に全国の日本語学校を卒業した約1万7000人の7割近くが、日本の大学等に進学したそうです。なお、日本で就職するためには一定の学歴・資格・経験・技能などが必要なので、日本語学校を卒業したというだけでは日本で働くことはできません。

日本語学校の就学生についての最大の問題点は、外国人問題でよく話題になる不法就労です。就学生は、資格外活動許可を受ければ、1日につき4時間以内のアルバイトができます。日本語の習得ではなく賃金格差を利用してこの資格外活動の報酬を目当てに来日する学生も多いのですが、合法な範囲ならばともかく、最初から不法就労を目的に来日する学生も少なくなく、こうした外国人にとっては学費や渡航費が高い(年収の何倍かになる)ので、来日の仲介をするマフィアなどから借金し、それを返すためにも働かなければならないというケースも多いようです。

以上は就学ビザで来日する外国人側の問題点ですが、冒頭に述べた日本語学校の問題は受け入れ側の問題です。簡単に説明しますと、在留許可が下りなかったために来日できなかった生徒に対して、日本語学校が受け取っていた学費を返還しなかった(返還が遅れている)というものです。日本語学校には財団法人日本語教育振興協会が策定した「日本語教育機関による就学生・留学生の受入れに関するガイドライン」があり、在留資格認定証明書が不交付の場合は出願選考料を除いた納入金を、在留資格認定証明書は交付されたがビザが下りなかった場合は出願選考料と入学金を除いた納入金を返還するという自主基準が決められていますが、問題なった日本語学校はこのガイドラインを守らず学費を返還しなかった(返還が遅れている)ので、就学生から苦情が寄せられているのです。

学費が返還されていない(返還が遅れている)のは当然この学校に責任があるわけですが、このような問題が生じた背景にはここ数年の入管による審査の厳格化があるようです。2003年までは就学生は年々増加していて5万人を超えていましたが、2004年には約4万3000人になり、2005年には約2万8000人と激減しました。2006年には約3万7000人まで回復しましたが、就学生の減少によって全体的に日本語学校の経営は大変厳しくなっているようです。入管による審査の厳格化は、不法就労やオーバーステイ、就学生の犯罪事件などに対応したものですが、日本語学校の経営という観点からは、就学生の入学見込み人数が大きく変動することはリスクが高くなることは間違いありません。それは、日本語学校が無理をしたり、不正に手を染めたりする背景にもなり得るものです。

現在「長期滞在目的の外国人の入国や在留期間の延長を審査するに当たって、日本語能力を審査基準に加える」「日本語能力の高い外国人に対しては、実務経験の短縮など在留資格要件を緩和する」ことが政府によって検討されており、日本に来たい外国人、日本で生活する外国人にとって日本語能力の重要性は増してきています。当然、日本語教育を担う日本語学校の重要性も高くなっていますが、日本語学校は学校教育法上も明確な位置付けがなされていないために学校によっては定期が使えない場合もあるなど、その社会的重要性に比して法整備やセーフティネットなどのシステムが整っていないということもあります。日本語学校の不祥事や不法就労などの問題を少なくするためにも、また就学生として来日する外国人の日本に対する友好意識を醸成するためにも、外国人受け入れの中心となる日本語教育の明確な位置付けと政策の一貫性が必要になるでしょう。

平成20(2008)年2月1日

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