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行政書士 高坂大樹
本メルマガ恒例となったお正月映画紹介。今回は日韓の国際恋愛を描いた国際交流の映画を3本紹介しましょう。
昨年12月19日、韓国では第17代大統領にハンナラ党のイ・ミョンバク(李明博)氏が選ばれ、10年ぶりに保守政権が誕生しました。保守と言っても、政策の中心は日本と同じように若者の雇用不安や格差が拡がっている状況を是正する経済重視の立場ですが、何かとぎくしゃくしていたノ・ムヒョン(盧武鉉)政権とは異なり、今後は日韓関係も新しい局面が開かれることが期待されています。
2006年から2007年にかけて、日本人と韓国人の国際恋愛を描いた映画が3本公開されました。他にもあるかもしれませんが、私の目に入ったのはこの3本です。まさに同時代の映画ですが、かつての日韓の国際恋愛を描いた映画と比較すると、ある傾向の違いが見られることに気づきました。日韓の国際恋愛を描いた映画やテレビドラマは、以前なら物語上の必然性もないのに歴史認識とか民族差別とかの問題が盛り込まれることが多かったのですが、この3本にはほとんどそういうものがありません。このうち2本は日本人監督であるということもあるかもしれませんが、1本は韓国人監督であり、歴史認識や民族差別の問題に関しては日韓の三人の監督に大きな違いが見られず、これは現実の日韓関係の質的な変化を反映したものだと思われます。それでは、その3本の映画を紹介しましょう。
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日本の大学に赴任した陶芸家で大学教授の父について京都に来た活発な韓国人の高校生と、クラスメートになった絵の好きな物静かな日本人の少女との純愛を描いています。韓国を代表する美青年俳優イ・ジュンギと、天才と言われる宮崎あおいの共演で話題になったラブストーリーです。監督は韓国人ですが、あくまで個人と個人の恋愛を描いており、歴史認識や民族差別の問題は全く姿を現しません。韓国人高校生と日本人高校生との間にちょっとした葛藤が生じますが、それは韓国人だからとか外国人だからというような意味はなく、どこの学校でも見られる、目立っている転校生に対する挨拶代わり程度のものです。本人は言うまでもなく、双方の家族にも、日本人だから、あるいは韓国人だからというような意識はありません。むしろ従来の常識からは無さ過ぎると感じるほどです。作品としてはピュアな青春映画そのもので、京都の名所を美しく撮った観光映画にもなっています。
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2001年1月26日に、JR新大久保駅で線路に転落した日本人を助けようとして韓国人留学生イ・スヒョン(李秀賢)さんと日本人カメラマン関根史郎さんが亡くなりました。日韓共催サッカーワールドカップは2002年、『冬のソナタ』でブレイクした韓流ブームは2004年からなので、新大久保駅の出来事はそれらによって日韓の関係が大きく変わる前夜のことで、イ・スヒョンさんの勇気ある行動が日本人に強い印象を与えたニュースでした。この映画はそのイ・スヒョンさんを主人公に、バンドをやっている日本人の女の子との恋愛を描いたラブストーリーです。日本人の女の子の方の父親が韓国人嫌いという設定ですが、それも過去に事業で韓国人とトラブルがあったからで、民族差別ではありません。内容的には音楽映画と言った方がふさわしく、あの事件そのものをテーマに描いた作品ではないのですが、日韓の架け橋になったイ・スヒョンさんを描いたということで、後援には外務省・日韓議員連盟・釜山市・在日本大韓民国民団などが名を連ねています。
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韓国代表から外されて日本に気晴らしに来た韓国のカーリング選手のことを韓流スターと勘違いして、話題作りにしようと一夜を共にした売れない女優が、彼がスターではなくカーリング選手であると知って、今度はオリンピックに出て脚光を浴びようとカーリングチームを結成、彼に無理やりコーチを頼むというラブコメディです。韓国の大スター、キム・スンウが韓国人カーリング選手の役をやっています。韓国人男性と日本人女性が、お互いに何の遠慮もなく感情をぶつけ合い、かっこ悪いところも見せ合って、いつの間にか本当に好きになっていくというストーリーです。
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以上3作紹介しましが、特に名匠中原俊が撮っている『素敵な夜、ボクにください』は日本社会の中で活動する韓国人の描き方がきわめて自然で、3作の中では映画としてもっとも成熟した作品です。実は現実の世界ではもっと以前から日韓の国際恋愛は自然な形で数多く存在していたのですが、いざ映画やドラマにする場合には、歴史認識や民族差別の問題を前提に置いてそれを乗り越えるという図式が一般的でした。そして、観客・視聴者の方も多少身構えて観なければなりませんでした。他の国との国際恋愛ではそのような政治的意味づけは不要だったので、そこには日韓関係の特殊性があったと考えられます。それが、いつのまにかそうした図式を必要としない時代になってきたようで、そのことは日本人と韓国人の国際恋愛を描いた映画にも反映しています。日韓の恋愛映画の主人公が高校生ならば祖父母は戦後生まれということも普通にある世代になっており、そのような現実に表現が追いついてきたということでしょう。
最後にひとこと。この3作だけではなく、現在までの日韓の国際恋愛を描いた映画・ドラマはほとんどが韓国人の男と日本人の女のカップリングになっています。歴史認識や民族差別の図式を必要としなくなってきた一方で、このカップリングの図式は強固にあり、これは日韓関係の微妙な政治性を表わしているのではないかとも思われます。なぜなら、現実には日本人の男と韓国人の女というカップリングの方が多いからです。ヨーロッパにおける国際恋愛のようにカップリングの組み合わせがフリーに描かれるようになった時が、本当に日韓関係が自然なものになった時と言えるのかもしれません。
最後に日韓の結婚や旅行などに関する最近の各種統計を記載しておきましょう。
韓国・朝鮮出身者との国際結婚(平成18年)
8376組(うち夫が日本人6041組、妻が日本人2335組)
※厚生労働省人口動態統計「夫妻の国籍別にみた婚姻件数の年次推移」
韓国・朝鮮出身の外国人登録者(平成18年末現在)
59万8219人(特別永住者約44万人含む)
※法務省入国管理局「平成18年末現在における外国人登録者統計について」(PDF)
3ヶ月以上韓国に在留する邦人(平成18年10月1日現在)
2万2488人
※外務省領事局政策課「海外在留邦人数調査統計」(PDF)
韓国からの入国者(平成18年)
237万0163人
※法務省入国管理局「平成18年における外国人入国者及び日本人出国者の概況について」(PDF)
韓国への日本人訪問者(平成18年)
233万8921人(韓国観光公社調べ)
※国際観光振興機構「訪日外客数・出国日本人数」(PDF)
韓国出身の不法残留者数(平成19年1月1日現在)
3万6321人
※法務省入国管理局「本邦における不法残留者数について」(PDF)
平成20(2008)年1月1日
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