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◆第37章 上陸特別許可◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。今回は上陸特別許可について解説します。

上陸特別許可に類似したものに在留特別許可があります。在留特別許可はよく知られているものなので、このメルマガをお読み頂いている読者の多くはお聞きになったことがあると思いますが、ご存じないという方のためにまず在留特別許可についてごく簡単に説明しておきましょう。在留特別許可とは、オーバーステイなどで正規の在留資格を持たず、本来なら退去強制事由に該当する外国人が、日本に在留するに足りる特別な事情を訴えて認められた場合に、特別に在留を許可される制度です。この在留特別許可に類似したものとして、在留特別許可ほど知られてはいませんが、上陸特別許可という制度があります。

上陸特別許可の前提として、まず上陸審査について説明します。日本にやってきた外国人は、入国するにあたって空港や港で上陸申請し、入国審査官の審査を受けなければなりません。上陸審査では、正規のパスポートを持っているか、ビザが有効かどうか(免除されている場合を除く)、滞在目的が正当か、上陸拒否事由に該当していないか、などの項目がチェックされます。上陸拒否事由に該当すると判断されれば上陸不許可になりますが、上陸拒否事由は入管法の第五条第一項各号に規定されています。代表的なものとしては、

  • 刑事事件で一年以上の懲役刑に処せられたことがある者
  • 麻薬など薬物関連法事件で刑に処せられたことがある者
  • 売春に直接関係がある業務に従事したことのある者
  • 麻薬や銃などを所持している者
  • 麻薬や銃などを所持していたとして上陸拒否されてから一年以内の者
  • 退去強制処分を受けてから五年以内の者
  • 退去強制処分を複数回受けてから十年以内の者
  • 出国命令により出国して一年以内の者

などがあります。

上陸特別許可は、上陸拒否事由の中でも、基本的に退去強制処分を受け、入国拒否期間中の者に関わる制度です。上陸拒否事由に該当している場合は通常は上陸不許可となるのですが、今回テーマにしている上陸特別許可を受けられれば、特例的に入国することができます。

入国審査官は上陸を許可しない場合、特別審理官に外国人を引き渡します。特別審理官は口頭審理を行ないますが、上陸条件に適合していない時は、外国人にその理由を示し、不服がある場合は法務大臣に異議を申し出ることができる旨を知らせます。異議の申出があれば法務大臣は申出に理由があるかどうかを裁決し、理由があると認められれば上陸が許可されますが、理由がないとされた場合は退去が命じられます。しかし、法務大臣は理由がないと認めた場合であっても、「再入国の許可を受けているとき」「人身売買されて日本に来たとき」「その他特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき」の三つのケースでは、その外国人の上陸を特別に許可することができると入管法第十二条に規定されています。これを一般的に上陸特別許可と呼んでいます。

「その他特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき」というのはどういうケースかと言えば、基本的には日本人と結婚している場合を指します。在留特別許可は在留資格を持たずに日本で暮らしている者、上陸特別許可は入国拒否期間中の者と違いはありますが、本来なら入国を認められていない者の入国を特別に許可するという点で共通した制度です。両方とも特例として認められるものであり、要件を充たせば認められる申請ではなく、願い出というべきもので、許可されるかどうかも法務大臣の裁量にかかっています。

上陸特別許可は法律に認められているものですが、あくまで法務大臣の裁量による特例として認められているものなので、具体的な手続きは規定されていません。しかし、この制度を願い出るカップルが多いため、実務的に一応の制度化がされています。その手続きを踏まないで来日し、空港で突然申し出たとしても許可されることはまずありません。

手続きとしては、まず代理人が入管に在留資格認定証明書の交付を申請します。通常の場合よりも審査が厳しいですが、事情が認められ認定証明書が交付されれば、次に本人が在外公館でビザの申請をします。ここでも協議に時間がかかりますが、ビザが下りれば、来日し、上陸特別許可の申し出を行ないます。事前に入管にいつどの便で来日するか連絡しておく必要があります。そして特別に上陸を許可すべき事情があると認められれば入国できるという段取りになっています。上陸特別許可がどの場合に認められるのかは公表されておらず、明確な基準は不明ですが、退去強制処分を受けてから少なくとも二年以上経過していること、内縁ではなく正式に婚姻届を出して結婚していること、執行猶予期間中の場合は許可されることはほとんどないので執行猶予期間を満了していること、などが必要だとされています。

上陸特別許可を得ることは決して簡単なものではありませんが、恋人が退去強制処分を受けて離れ離れになったとしても、上陸特別許可を願い出ることで、法律で定める入国拒否期間を短縮して、日本で結婚生活を送ることができる道が開かれています。

平成19(2007)年7月1日

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