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◆第36章 外国人研修制度が変わる?◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。最近、外国人研修制度が大きな問題になっています。今回は、外国人研修制度の現状について書きます。

外国人研修とは、平成五年(1993)に始まった制度で、開発途上国への技術移転や開発途上国の人材育成など国際協力を図るために、諸外国から研修生を受け入れ、研修先で座学(講義)だけではなく、現場での実習(OJT)を行なうことを通じて技術を習得し、帰国後は母国の産業発展に寄与してもらうことを目的とした制度です。今風に言えばインターンシップ、昔風に言えば徒弟や丁稚のようなものですが、研修期間は1年以内、技能検定基礎2級習得が目標になっています。

研修を終え、技能検定基礎2級(相当試験)に合格した者は、研修期間の1.5倍以内(2年以内)の期間、技能実習制度に移行することができます。ただし、研修の場合は入管法令の要件を満たす同一作業の単純反復でない業務が対象で(つまり単純労働でなければいいということです)、技能実習については62職種114作業に限られています。修得する技能のレベルは技能検定3級が目標になっています。

研修制度と技能実習制度の違いについて説明しましょう。修得する技能のレベルが違うということもありますが、研修生は労働者ではないとされているのに対して、技能実習生は労働者として扱われるというのが最大のポイントです。従って、研修生については、適用される法律も労働基準法などの労働法令ではなく、入管法令です。そのため、研修生に対しては、賃金ではなく、研修手当(生活の実費分)が支払われるという建前になっています(技能実習生には賃金が支払われます)。

しかし、外国人研修・技能実習制度には、技術移転や人材育成など国際協力を図るといった良い面ばかりではなく、悪い面もあります。一番問題とされているのは、研修生に対する雇用者の人権侵害で、受け入れ企業が制度を悪用し、研修の名目で長時間働かせる、残業代を支払わない、パスポートや預金通帳などを管理するなどのトラブルが多発しています。また、営利目的で研修生を斡旋するブローカーの問題や、不法就労の隠れ蓑になっているという指摘もされています。

これらの問題についてはニュース番組や新聞でもしばしば取り上げられており、最近も、「平成17年に、全国の労働局が外国人研修・技能実習制度で来日した外国人労働者が働く事業所を監督指導したところ、8割の事業所で長時間労働や基準外賃金の未払いなどの違反があった(5月13日)」「外国人研修・技能実習制度で来日し縫製会社で働いていた中国人女性3人が、1日13時間以上働き残業手当は時給350円という過酷な労働と低賃金に耐えかねて逃走した(5月13日)」「法務省から在留資格認定証明書がおりたが、派遣元企業が存在しないなどの理由で在中国公館に査証発給が拒否され入国できなかった中国人労働者が、平成17年と18年の2年間で1300人以上いた(5月20日)」など、相次いで報道されています。

外国人研修・技能実習制度については、制度開始当初より、理念である国際協力ではなく実態は産業界の要請によるものであり、単純労働者(特に不足しているいわゆる3K労働者)を安価に使用するためのものではないかという批判がありました。外国人が日本に滞在するためには在留資格が必要です。労働目的の場合はいわゆる就労ビザ(就労するための在留資格)が必要なのですが、分野ごとに定められた一定以上の資格などが必要な就労ビザの取得とは異なり、研修・技能実習の場合は、そういった要件を満たしていなくても、最長3年間の滞在が可能になります(外国人研修の在留資格は「研修」で、技能実習の在留資格は「特定活動」です)。平成18年の研修生は8万人を越え、技能実習生は3万人を越えていると言われますが、一般の就労ビザ取得者が20万人ぐらいですから、研修生・技能実習生が外国人労働者に占める割合の多さが分かるでしょう。

以上のような経緯があり、制度の見直しが問題になっていましたが、平成19年5月以降、厚生労働省と経済産業省が報告書を発表し、長勢法務大臣が閣議後の会見で私案を述べるなど、見直しへの動きが加速しています。

三案の骨子をごく簡単に解説すると、厚生労働省案は、問題が生じやすい研修制度を廃止して技能実習制度に一元化し、最初から雇用関係の下で最長3年間(より高度なレベルの技能実習の場合は5年間)の実習をするするというもの。経済産業省案は、不正の防止は図るべきだが研修の有用性を認め、将来的には受入人数枠の拡大や優秀な技能実習修了生には就労資格を与えるべきというもの。長勢法務大臣案は、建前と実態がかけ離れており技能実習制度は廃止し研修制度も見直す、その代わりに国内の労働力確保の観点から3年を限度とする短期の外国人単純労働者の就労制度を創設すればどうかというものです。

厚生労働省は外国人労働者の人権擁護寄りの立場、経済産業省は産業界寄りの立場という微妙な軸足の違いはありますが、労働力の確保という行政当局の本音が伺えます。両案が外国人研修・技能実習制度の建前の部分も残しておきたいというニュアンスがあるのに対して、長勢法務大臣は労働力の確保という点は共通していますが、実態とかけ離れた建前を全廃し、なおかつ外国人労働者が定着することはあらかじめ予防しコントロールしておきたいという従来の法務省の考えを代弁したものになっています。いずれにせよ、数年の間に外国人研修・技能実習制度は見直される運びなのは間違いありません。

今回の話題は国際結婚とは少し外れていますが、日本の外国人政策という大きな枠組の中の問題として押さえておきたい事柄です。たとえば条件付きであるにせよ外国人の単純労働が合法化されるとすれば、偽装結婚は相当減少すると考えられますし、不法就労が少なくなることでオーバーステイ中の結婚による在留特別許可の需要なども減少すると考えられます。

※参照URL

厚生労働省案

経済産業省案

長勢法務大臣私案

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最近の報道から、国際結婚ネタを一つ。5月6日の河北新報の報道によると、青森県東通村が、村内の独身男性を対象に中国人女性との国際結婚斡旋事業に取り組んでいるそうです。

嫁不足に悩む同村は、独身男性への出会いの場を提供するため、2003年に日本人女性とのお見合いパーティーやスキーツアーなどを企画しましたが、カップルは1組も成立しなかったので、2005年から国際結婚斡旋事業に取り組み始めました。2005年8月にハルビンでのお見合いで2組の夫婦が誕生し、うち1組は数ヶ月で離婚してしまったそうですが、残る1組は幸せな結婚生活を送っているそうです。

国際結婚にありがちなトラブルを防止するため、コーディネーターを通じた事前照会の他、来日前に語学学校に通うなどの条件を付けています。中国への仕送りを希望する人はお断りという条件もあるようで、これが中国の家族と縁を切らせるという意図のものであるとすれば、これを厳密に適用するとカップルが成立しにくい(したとしても円満に長続きするのは難しい)のではないかと思いますが、本年度も希望者があればサポートするということです。

平成19(2007)年6月1日

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