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◆第35章 不法就労対策の最近の動向について◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。今回は、わが国の入管行政における不法就労対策の最近の動向を紹介します。

ご存じの方も多いと思いますが、日本は単純労働目的の入国を認めていません。しかし、実際には不法就労は行なわれています。当然、法務省や入管は様々な対策を取って不法就労やオーバーステイを減らそうと努めています。

たとえば、入国管理局によれば、平成19年1月1日現在の不法残留者数は、昨年に比べ2万2906人減少し、17万839人になっています。平成16年からの3年間を見ると、4万8579人も減少したそうです。平成18年中に退去強制手続が執られた外国人は5万6410人で、内訳は不法入国者が1万441人、不法残留者が4万2829人、その他3140人。このうち、不法就労していたという理由で退去強制となった者は4万5929人です。不法残留者が4万2829人も退去強制になっているにも関わらず、昨年に比べて2万2906人しか減少していないのは、新たに不法残留する者も後を立たないためですが、全体としては減少傾向にあるとは言えます。

また、外国人が日本(空港など)に到着すると、まず入国審査官の上陸審査を受けることになっていますが、その審査で日本入国が不許可になることを上陸拒否と言います。平成18年の上陸拒否数は1万1410人で、昨年に比べて688人増です。国籍別では韓国が4121人(36.1パーセント)で第1位。以下、中国・台湾・フィリピンとなっています。上陸拒否の理由としては、不法就労等の目的を偽って上陸申請を行なうなど入国後の活動に疑義が認められた事案が大半を占めています。このように上陸拒否という形で水際での不法就労対策がなされているわけです。

その他にも、これは法務省ではなく外務省の、しかもフィリピン人に特化した対策ですが、日本人男性とフィリピン女性の結婚の場合の偽装結婚対策として、日本人男性の本人確認・書類審査の厳格化など審査態勢の強化や、担当職員の増員、入国管理局との情報共有化を検討しているという情報もあります。これは平成17年に入管法が改正され、興行ビザ(在留資格「興行」)の取得が厳しくなって、フィリピン人エンターテイナーの入国が激減したため、偽装結婚して興行ビザではなく結婚ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」)で入国するということが急増したことを受けての対応です。

さて、不法就労対策に関して現在最も注目されているのは、雇用対策法の改正です。2月に厚生労働省が「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案」を国会に提出したのですが、これを見ますと、外国人雇用状況の届出制度が義務化される見込みです。外国人労働者の雇用状況については、これまでも平成5年度から年1回外国人雇用状況報告制度が実施されていますが、これは強制ではなく協力という形を採っており、「不法就労者の把握又は、不法就労者及び事業主の摘発を目的とするものではありません」と注記されていました。それが今回の改正では、事業主に対して、外国人(特別永住者を除く)が就職あるいは離職した場合に、氏名・在留資格・在留期間などを厚生労働大臣(ハローワーク)への報告を義務付けるとともに、義務に違反した時は罰則を科すものとしており、また法務大臣が情報を求めた場合は厚生労働省から情報が提供されることになります。この改正案が通過すると、不法就労をしている外国人にとって極めて厳しい事態になることは確実でしょう。この改正案には日弁連などから反対の意見表明がありますし、国会で審議中でもあるので最終的にどうなるのかはまだ分からないのですが、注視していきたいところです。

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これまでにも離婚後300日問題について何度か取り上げてきましたが、4月はいくつか新しい動きが見られましたので、フォローしておきましょう。

まず、法律を改正して、再婚禁止期間を6ヶ月から100日に短縮するという法案が検討されています。当初は与党が法案を提出するという話だったのですが、自民党内で強い反対があり、与党案は断念されることになったので、今度は野党が提出するのではないかと報じられています。ただし、この改正によって早い再婚が可能になれば、離婚後300日問題に抵触する子供の件数が増えることが予想されますので、300日規定そのものの見直しまでが必要になります。

実際、300日規定の見直しも検討されています。ここでも保守的な立場からの慎重論が強く、与党の「民法772条見直しプロジェクトチーム」の当初案は戸籍法に特例を設けてDNA鑑定などで子供の親が証明されれば出生届を受理できるようにするというものでしたが、これでは前夫と婚姻中に夫以外の男性の子供を妊娠した場合でも夫以外の男性の子供として届出が可能になるため、家族制度の崩壊につながるという反対があり、現在は離婚後に妊娠した子供に限って夫以外の男性の子供と認めるという線で検討されているようです。

上記の2法案の結果がどうなるかはまだ分かりませんが、4月6日の長勢法務大臣の会見によると、法務省は4月末までに民法772条の運用を見直すという民事局長通達を出すということです。内容は、離婚後に妊娠したことが医師の証明書で明らかな場合は、離婚後300日以内に生まれた子でも、結婚している場合は再婚相手の子、結婚していない場合は非嫡出子(嫡出でない子)として出生届を受理することができるというものです。
※通達が実際に出されたかどうかは未確認です。

外務省も5月中に旅券法施行規則を改正し、離婚後300日問題のために戸籍がない子供に対して「子供を戸籍に記載するため親子関係不存在訴訟などの裁判手続きを起こしている」「海外への渡航を認める人道上の理由がある」「子供の日本国籍が証明できる」などの条件を満たした場合は特例としてパスポートを発給するという規定を設ける方針を固めたということです。

以上、離婚後300日問題に関して、現実に合わせて法律を変えるという対応が検討されているということを紹介しましたが、この問題は従来の家族制度の根幹を揺るがす部分がたしかにあり、その点をどうクリアするかが焦点になると思います。今の方向では実子であるかどうかをDNA鑑定で決めていくという方向になっていきますので、それはそれで大きな問題が孕まれていることは明らかでしょう。

平成19(2007)年5月1日

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