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◆第27章 イスラム教の結婚(3)婚姻要件◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。前回は、イスラム教の一夫多妻制についてお話しました。今回は、イスラム法の婚姻要件についてお話します。

婚姻要件とは婚姻を有効に成立させるための要件のことで、結婚するには婚姻要件を満たしていなければいけません。婚姻要件は世界各国それぞれの法律や慣習において決められています。シャリーア(イスラム法)の婚姻要件としては、次のようなものがあります。

▼近親婚

近親婚について、コーランには男から見て結婚してはいけない相手のことが書いてありますが、現代的に解釈し直すと、日本と同様、兄弟姉妹・おじ・おば・甥・姪・直系姻族(配偶者の父母・配偶者の子・子の配偶者など)とは結婚できません(配偶者の連れ子の場合は、配偶者と性的関係がなければ結婚できるそうです)。また、同時には姉妹と結婚することができないという一夫多妻制のイスラムならではの規定もあります。乳母や乳姉妹(乳母の子供)とも結婚できないようです。イトコ間の結婚については、韓国や中国のように禁じている国もありますが、イスラムでは推奨されることすらあるようです(マホメットもイトコと結婚していたそうです)。

▼重婚婚

前回お話したように、イスラムは一夫多妻制が認められているので、男性は4人までは結婚できます(それを超えては結婚できません)。女性は、コーランに「夫のある女とは結婚してはいけない」という規定があるので、重婚はできません。

▼異教徒との結婚

一神教のイスラム教では多神教を信じる相手とは結婚できません。男性は啓典の民(同じ一神教のユダヤ教徒・キリスト教徒の女性)と結婚することは許されていますが、女性はイスラム教徒以外との結婚は禁じられています。

▼タラークによって離婚した前妻

タラークというのはイスラムの離婚方法の一つで、夫から妻に対して一方的に離婚を宣言する方法です。タラークはイスラムの女性蔑視という批判の根拠の一つになっています。タラークを行なった場合、男性側から一方的に2回まで復縁することができますが、3回離婚を宣言すると復縁できなくなります。ただし、離婚した女性が別の男性と結婚して更に離婚した後では、もう一度復縁できる場合もあるようです。

▼再婚禁止期間(イッダ)

再婚禁止期間のことをイスラムではイッダと呼びますが、離婚した場合のイッダは離婚後3回の生理が来るまでの間、死別した場合のイッダは4ヶ月と10日とされています。

▼婚姻適齢

結婚可能な年齢については、シャリーア(イスラム法)でも学派によって見解が異なっています。通常は15歳ぐらいのようですが、モハメットが3人目の妻であるアーイシャと結婚した時、彼女が9歳だったことから、それが一つの目安ともされています。イスラムでは通常男女が隔離されているので出会いが少なく、恋愛結婚より親族や知人が決めるお見合い結婚の方が一般的ですが、男の子は12歳、女の子は9歳ぐらいという子供時代に親族同士が後見人や代理人として結婚を決めてしまうことも行われています。ただし、イスラム社会でも現在では近代法が取り入れられつつあり、幼児婚も否定されるようになってきていて、婚姻適齢とされる年齢は上がってきています。また、婚姻適齢は国によっても異なっています。

▼アクド・ニカー(婚姻契約)

これまでに述べてきた要件を満たした上で、実際に結婚する場合には、男性側と女性側との間でアクド・ニカー(婚姻契約)を結びます。男性側からの婚姻の申出(イージャーブ)に女性側が受諾(カブール)すれば、アクド・ニカーを結ぶ運びとなります。イージャーブもカブールも元々商売用語で、イスラムでは結婚も恋愛というより契約として考えられています。結婚という契約において、夫には扶養義務があり、妻には夫に従って家事や子供を養育する義務があります。妻は夫に従わなければ扶養を受ける権利を失いますが、夫が扶養義務を怠り、履行を請求しても応じない場合や、扶養能力がなければ離婚を要求することができます。

アクド・ニカーには、男性側から女性側に贈る婚資(マフル)の額が記載されますが、これはイスラムの結婚が契約であることを示しています。マフルは一族の格式などによって決められますが、現金だけではなく土地や・宝石・駱駝などがあり、金額もピンからキリで大変高額な場合もあります。結婚時に半額が支払われ、その後に残りが支払われるのが一般的だそうですが、残額は普通夫から離婚した場合の慰謝料として予定されています。女性側は離婚防止のために最初に高額の慰謝料予定金を契約しておくこともあります。高額の慰謝料は花嫁の価値や花婿の力を示すものでもあり、これを契約しておくことはネガティブなものではありません。マフルは妻の固有の財産とされていて、自由に処分することができます。

▼結婚式

少なくとも成人のイスラム教徒2人の立会いのもとで、本人が誓いを述べれば結婚が成立します。イスラム教には聖職者が存在しませんし、キリスト教などのように結婚に際して必要な役職者はありません。結婚式をモスクで挙げなければならないということもないようです。国や地域によって異なりますが、普通は双方の親族や友人が出席し、イスラム法をよく知った長老格の人の司会で新郎が誓いを述べ、契約内容を確認し、本人、両家の父親、証人が契約書に署名して、婚姻が成立します。アクド・ニカーには法的拘束力が認められています。披露宴は行わなくてもいいのですが、結婚を社会的に認知してもらう必要もあり、披露宴を行うことが一般的です。国によっては、この他に法律で役所に婚姻届を提出することと決められている国もあります。

平成18(2006)年11月15日

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