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◆◆◆メールマガジン国際結婚◆◆◆

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◆第24章 国際離婚(2)◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。『メールマガジン国際結婚』も始めてから1年になりました。読者の皆様に感謝致します。今後ともご愛読よろしくお願い申し上げます。さて、今回は国際離婚の第2回です。

日本人と外国人とが恋愛関係になった場合に、国際結婚する動機の一つとして、結婚すれば「日本人の配偶者等」という在留資格が得られるということがあります。「日本人の配偶者等」を取得する(変更する)メリットとしては、一般に「人文知識・国際業務」などの就労を目的とする在留資格(就労ビザ)よりも取得しやすく、しかも色々と制限の多い就労ビザよりも、日本での活動(就労)に制限がないという経済的なメリットが挙げられます(偽装結婚も、経済的メリットを目的として行なわれています)。国際結婚したからと言って、必ずしも「日本人の配偶者等」に変更する必要はなく、他の在留資格で在留することも可能なのですが、ふつうは「日本人の配偶者等」を取得(変更)します。外国人配偶者は、日本人と結婚している限り、在留資格を更新していけばずっと日本に滞在することができます。結婚している限り安定的に日本に在留することができること、子供が確実に日本国籍を取得できることなど、結婚後に日本で安心して共同生活が送って行けるという精神的なメリットは、経済的なメリットと同じくらい重要と言えるでしょう。しかし、国際結婚したとしても、当然ながら国際離婚する場合もあります。

国際離婚した場合、外国人配偶者の法的な地位が問題になってきます。平成16年に入管法が改正され、それまでも裁量的に行なわれていた在留資格の取消制度が創設されました。新しい制度では、取得している在留資格に関する活動を3か月以上行なっていない場合、たとえば、学校を退学したり仕事を辞めたりした場合は、在留資格を取り消すことができ、取り消されれば、30日以内に日本から自主出国しなければなりません。しかし、「日本人の配偶者等」だけではなく、「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」という入管法別表第二に記載されている在留資格には、改正入管法の在留資格の取消は適用されません。そのため、国際離婚した場合はその日から日本人配偶者ではなくなりますが、離婚後3か月経過しても「日本人の配偶者等」は取り消されず、在留期限が切れるまでは「日本人の配偶者等」の在留資格のままで日本に滞在できます。しかし、離婚すれば当然ながら「日本人の配偶者等」は更新できませんので、在留期限が切れれば、帰国するか、他の在留資格に変更するかしなければなりません。

他の在留資格に変更する場合、選択肢はいくつかあります。

まず就労ビザですが、就労ビザは条件が厳しく、外国人配偶者が単純労働者や専業主婦(パートタイマー)の場合は変更できません。離婚してからきちんとした会社に就職して就労ビザに変更することは、現実的に大変難しいでしょう。もともと就労ビザを取得していて、それを「日本人の配偶者等」に変更し、現在もその職業を継続している場合などでないと、変更は厳しいと考えておいて下さい。

次に永住申請も選択肢の一つですが、離婚した場合には条件が厳しくなりますし、申請中も別の在留資格があることが必要なので、「日本人の配偶者等」の期限が切れるまでに許可されなければ、一度、他の在留資格に変更しなければなりません。

第三に、再婚して新たに「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することもできますが、この場合は相手を見つけなければなりませんし、見つかったとしても偽装結婚と判断される可能性もあります。

第四に「定住者」への変更があります。「定住者」とは、「法務大臣が個々の外国人について特別な理由を考慮して居住を認める在留資格で、人道上の理由その他特別な理由があることが必要とされる」とされていて、難民や中国残留孤児、日系人などに与えられる在留資格です。離婚した外国人配偶者の場合には、在留期間等を考慮して与えられます。子供がいる場合は、離婚後、子供を養育していれば「定住者」の在留資格に変更することが可能です。ただし、実際に引き取って手元で育てていることが必要で、離婚後の親権者になっていても、施設に預けていたり、本国の親元に預けておいて本人は日本で働いていたりする場合は、許可されません。

在留資格が取得でき、離婚後も日本に滞在できるようなったとしても、生活をどうしていくかという問題があります。外国人配偶者が女性で、子供もいる場合には、これは最も考慮しなければならないポイントです。「定住者」は「日本人の配偶者等」と同様、就労に制限がなく、夜の商売も可能ですが、子供を抱えて暮らしていくのは大変です。となると、別れた夫から慰謝料や養育費などを貰う必要も出てきます。

離婚の慰謝料は、離婚原因、有責性の度合い、婚姻年数、それぞれの年収などが考慮されるので一概には言えませんが、調停(裁判・審判)の場合、日本人同士の離婚でも500万円を超えることはあまりありません。2〜300万円が一般的な相場と言われています。

子供への養育費は、慰謝料とは異なり、親であれば当然に支払う義務があります。養育費の額は、子供の数、親の資力や生活水準が考慮されるので、これも一概には言えませんが、一般的な相場は月額で4〜6万円のようです。養育費の支払期間は、一般的には二十歳までとされていますが、学校を卒業し自立する(就職する)までなど、家庭の事情によります。慰謝料や養育費は、お互いによく話し合って決定し、話がまとまれば正式な書類にしておく必要があるでしょう。また、事情が変わればその段階で見直す必要もあります。

離婚後、生活に困窮した場合、日本人なら生活保護を受けることができますが、日本人でなくとも「定住者」や「日本人の配偶者等」など入管法別表第二に記載されている在留資格の場合は、生活保護を受けられる可能性もありますので、生活保護を必要とされる方は、福祉事務所のケースワーカーや民生委員に相談して下さい。

さて、ここまでは離婚を前提に話を進めてきましたが、離婚を切り出されても離婚したくないということもあるでしょう。最後に、そうしたケースについて考えておきましょう。

夫婦のどちらかが離婚したくない場合は、当然に協議離婚は行なわれません。調停がまとまらず、最終的に裁判で争うことになっても、不倫やDV、浪費など明確な離婚原因がなければ、離婚は認められませんので、一方的に離婚されることはありません。ただし、離婚理由の一位は性格の不一致だそうですので、性格の不一致が原因で婚姻が破綻し、将来的にも修復の可能性がないということになれば、何も落ち度がなく離婚したくないという場合でも、家庭裁判所が離婚を認めることもあります。

それから、離婚に合意していない場合、あるいは、一度は離婚届に署名したものの気が変わって結婚を続けたい場合に、勝手に相手が離婚届を提出してしまうことがあります。勝手に相手が離婚届を提出してしまっても法的には無効なので、家庭裁判所に離婚無効の申し立てをすればいいのですが、面倒な手続きですので、離婚届不受理申出という制度を利用するのがいいでしょう。日本人配偶者の本籍地の市区町村役場に離婚届不受理を申し出ておけば、相手が離婚届を提出したとしても、6ヶ月間は受理されないので、離婚の成立を防ぐことができます。離婚届不受理申出は更新することもできます。

平成18(2006)年10月1日

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