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◆第22章 永住と帰化◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。8月は大変な猛暑でしたが、9月に入り、ようやく涼しくなってきました。みなさんはこの夏はいかがお過ごしだったでしょうか。さて、今回は在日外国人にとって重要なポイントである永住と帰化についてお話します。

日本にお住まいの外国人の方にとって、日本に暮らして行く上で必要となる手続きの中で最も重要なものは、在留期間の更新でしょう。観光など一時的な来日ではなく、仕事や留学、結婚等でしばらく日本に滞在する場合、通常、短ければ1年、長くとも3年ごとに在留期間の更新を続けて行かなければなりません。何らかの原因で在留期間の更新が認められなければ不法滞在となり、強制退去の対象となってしまいます。このように在留期間の更新は重要なものですが、外国人の方が在留期間の更新をせずに日本で暮らす選択肢もあります。方法は2つあるのですが、いわゆる永住権を取得する(永住者の在留資格に変更する)方法と、帰化申請する方法の2つです。どちらの場合も活動(仕事の種類)に制限がなくなるというメリットもあります。
※興行の在留資格など、3ヶ月や6ヶ月で更新しなければならず、更新できる回数に制限がある資格もあります。また構造改革特区では5年の在留期間が認められます。

外国人のまま日本で暮らす永住と、外国籍を離れ日本国籍を取得する帰化とは、根本的に意味が異なります。永住(永住者)は在留資格の一つなので入国管理局に申請しますが、帰化は国民としての身分関係を扱う法務局に申請するなどの違いはありますが、条件や必要書類など手続き的に似ている部分も多くあります。

永住が認められる条件として、入管法で挙げられているのは、

  • 1 素行が善良であること(素行条件)
  • 2 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(生計条件)
  • 3 その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

以上の3点ですが、実務上の取り扱いとしては、そのほかに

  • 4 10年以上継続して日本に在留していること(住所条件、例外あり)
  • 5 最長の在留期間(3年)を付与されていること
  • 6 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

となっています。

これに対して、帰化が認められる条件は、国籍法では、

  • 1 引き続き5年以上日本に住所を有すること(住所条件)
  • 2 20歳以上で本国法によって能力を有すること(能力条件)
  • 3 素行が善良であること(素行条件)
  • 4 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること(生計条件)
  • 5 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと(国籍条件)
  • 6 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと(暴力条件)

以上の6点ですが、実務上の取り扱いとしては、そのほかに

  • 7 日本語の会話や読み書きができること(日本語条件)

となっています。

日本人の配偶者や子などについては住所条件や生計条件が緩和されており、簡易永住許可、簡易帰化と呼ばれています。たとえば、日本人の配偶者については、結婚してから3年以上日本に在留していること、あるいは海外で結婚していた場合は、婚姻後3年経過しており、かつ日本で1年以上在留していればよいとされています。ただし、これらの条件を満たしていたとしても必ずしも永住や帰化が許可されるとは限りませんので注意して下さい。永住の条件も帰化の条件も内容がよく似ていることがお分かり頂けると思います。ごく大雑把に違いを言えば、永住が10年の在住が必要となっているのに対して、帰化が5年でよいというところです。

ここでは必要書類については列挙しませんが、必要書類は上記の条件を満たしているかどうか証明するために添付や提示するものなので、似た条件であれば必要書類も同じようなものを揃えることになります。

外国人が今後も長期にわたって日本で暮らすと決めて、そのために永住か帰化のどちらかを選ぶとしたら、ポイントとなるのは何でしょうか。日本で稼いで本国に送金することだけが目的の外国人の中には、単純に必要となる期間の短さだけに着目して、「永住が10年で帰化が5年ならば帰化にしよう」と帰化を選ぶ人もいます。そういった人の場合は、「日本人と結婚すれば3年でいいのなら結婚しよう。帰化が認められれば離婚すればよいし、偽装結婚でもかまわない。結婚している間は日本人の配偶者として、活動(仕事の種類)に制限がなくなるので最もよい」などと考えているケースもあります。偽装結婚も以前は別居しているのが普通でしたが、最近では帰化できるまでの結婚と割り切って同居する偽装結婚も行なわれているようです。しかし、自分の人生の問題としてもう少し総合的に考えてみるなら、自分や子孫が日本人になるかどうかということがテーマになるでしょう。

永住と帰化に共通するメリットは、職業選択が自由にできるようになり、在留資格変更の手続きが不要になることです。在留期間更新も不要です。帰化のメリットは、選挙権の行使など日本人として外国人には与えられていない法律上の権利を取得できることです。外国人ではないので、問題を起こしても国外追放・強制退去させられることがなくなり、外国人登録カードの携帯も不要、再入国許可を必要とせず、出入国が自由になります。パスポートも日本のものを取得することになるので、世界の多くの国へビザ免除で旅行することができるようになります。これに対して永住の場合は、問題を起こせば国外追放・強制退去させられますし、外国人登録カードの携帯が必要で、海外へ旅行する場合は再入国許可も必要です。

一方、帰化のデメリットは、それまでの国籍を放棄しなければならなくなり、以前の本国地に行く場合に、ビザが必要となります。また出身国によっては、入国拒否者リストに登載されるなど自由に出入国できなくなる場合があります。日本で大災害などに遭った場合、永住なら本国に帰ることができますが、帰化してしまえば簡単には本国に帰れなくなります。

以上のように外国人のまま日本で暮らす永住と、外国籍を離れ日本国籍を取得する帰化とは、根本的に立場が異なります。国際化の中で「日本人になる」ということの意味も少しずつ変わってきていますので、国籍の捉え方も従来のようにアイデンティティと密着したものではなくなりつつあるという面もありますが、それでも国家の枠組や文化の違いの問題などは今なお厳然とあります。結局、自分や子孫が日本人になるかどうかということを考えて、永住するか帰化するかを選ぶべきだと思います。

平成18(2006)年9月1日

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