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みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。今回は国際結婚における子育ての中から、子供の言語教育についてお話します。
国際結婚における文化問題については、当事者同士の文化摩擦やそれぞれの家族親戚との文化摩擦が目に付きやすいのですが、見過ごしにできない問題として、子育ての問題があります。子は鎹(かすがい)という慣用句があり、これは、夫婦間でいさかいがあったとしても、子供に対する愛情によって家族の絆が保たれるという意味です。この言葉は国際結婚でも当てはまるところもありますが、子育てが新たな文化摩擦の原因になることもあります。
各家庭の状態によって問題は異なるでしょうが、子供の言葉はどうするのか、子供の宗教はどちらのものにするのかなどは、どの家庭にも共通したテーマでしょう。その前にどちらの国で育てるのかという問題がありますが、ここでは日本で子育てをすることを前提にしてお話します。
宗教については、日本人は宗教に関してアバウトなところがあるので、結婚相手の宗教に改宗したり、子供を相手の宗教で育てたりすることについては、それほど問題にすることはないかもしれません。反対に、自分が宗教に対して強い感覚を持っていないために、結婚相手や家族の宗教を、軽んじるわけではないにしても、その重みを理解しないということはあるかもしれません。
それでは、言葉(言語教育)についてはどうでしょうか。当事者以外の者はバイリンガルに育てればいいのではないか、というより日本人が国際化に駆り立てられている現代では、ハーフ(最近はダブルということも多い)の子供はバイリンガルだから羨ましいという感じかもしれませんが、現実には当事者には様々な考えや状況があります。
いくら幼児や子供は言語を吸収する力があると言っても、両親が意識的に努力しなければバイリンガルに育てることはまず不可能です。片親が外国人で外国語を話す場合でも、回りは日本語という環境であれば、普通は日本語が優位になります。子供が生まれ育った土地の言葉を覚えてしまうというのは、国籍を異にする国際結婚だけのことではなく、同じ国籍の者同士の結婚でも、母国以外の国で生活する場合には問題になることです。両親とも外国人の場合でも、日本で生まれ育ち日本の小学校に通う子供は、日本語を話し漢字も書けますが、母国語では会話はできても筆記はできない子供もいます(現実に在日コリアンは日本語しか使えないのが普通です)。
相手が英語圏の人の場合は、日本語と英語のバイリンガルに育てるというのは有力な選択肢でしょう。幼児の頃から英会話を教育し、小学校にも英語学習が導入されているのですから、日英両国語を使えるようになることは得なことと言えます。これからの経済状況を考えれば、中国語のバイリンガルに育てるという選択も、今後は増えてくるでしょう。両親とも日本人の場合でも、日本人を受け容れているアメリカンスクールや華僑の学校に子供を入れるケースも増えてきています。
しかし、日本に出稼ぎに来て、日本人と結婚し将来的には日本への帰化も視野に入れているために、積極的に日本語以外の言葉は子供に教えないという親もいます。ただし、この場合には親との意思の疎通が図れなくなるという深刻な問題が生じます。外国人である片親が日本語を上手く話せず、子供の方は日本語のネイティブスピーカーではあるものの片親の言葉は上手く話せないということになれば、親と子供は深い会話や難しい話ができません。子供と会話できないことは、結婚相手と会話できないことよりも片親の孤立感、疎外感を深める恐れもあります。
このように、在日一世と二世・三世の文化的断絶は、言葉において最も如実に表れます。子供の言葉をどうするかということは、子供のアイデンティティの問題も含めて、国際結婚カップルにとって非常に切実な問題です。
平成18(2006)年8月1日
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