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◆第19章 国際結婚と食の文化摩擦2◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。今回も前回に引き続いて、国際結婚における食の文化摩擦についてお話します。

平成16年に結婚した約18組に1組が国際結婚であることからもわかるように、現在、日本の国際化は市民レベルでも着実に進行しています。当然、人の移動に伴って食の国際化もどんどん進んでいます。タイ、ベトナム、インドなどのアジアの料理は大人気ですし、世界中の各国料理の専門店をあちこちで見かけます。今は気軽に海外旅行に出かけ、現地で本場の味を食べることができますが、海外旅行に行かなくても、日本国内で世界各国の料理を楽しむことができます。しかもそれらはすでに決して非日常的な珍しいものとしてではなく、日常的なものとして定着しているのです。逆に、日本料理の国際化という現象も見られます。スシはもっとも有名ですが、最近ではスシだけではなく、世界中で日本料理が食べられるようになりました。日本酒も注目されてきています。

これは、少し前の日本からは想像さえできないことです。今見られるような外食産業が発展し始めたのは1970年代のことです。フレンチでさえ、本格的に食文化の中に入ってきたのは70年代のことであり(辻静雄の功績が大きいと思います)、フレンチを普段着感覚で気軽に食べるようになったのはもう少しあとの1980年代になってからのことです。80年代はグルメ本の普及とともに、各国料理(エスニック料理よりも広い概念)が一般化し始めました。当時はイタリアンはまだ各国料理に分類されていたりもした時代でした。80年代のグルメブームをきっかけに、日本人の食の幅は随分広がって行きます。現在、東京では70ヶ国ぐらいの料理が食べられるそうですが、それらの料理店では現地出身のシェフが招かれて腕をふるっていて、国際結婚カップルが経営していることも多いです。

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私が国際結婚における食の文化摩擦の一端にふれたのはもう随分前、1970年代の小学生の頃です。まだまだ国際結婚が珍しい時代でした。

当時、父の知人が台湾人女性と結婚しました。何かのきっかけで彼女の手料理をご馳走してもらうことになり、私もお相伴にあずかりました。

最初はたしか、中華おこわと、豚肉を煮込んだものなどを頂いたと記憶します。彼女の料理はそれまで味わったことのない香辛料が使ってあり、食べられないというものではなかったのですが、美味しいとは思いませんでした。今思うと、使われていた香料は、八角か五香粉(ウーシャンフェン)で、豚肉の煮込みは東坡肉(トンボーロー)だったと思います。香菜(シャンツァイ)も使われていたのかもしれません。

現在は八角も好きですし、香菜は好物です。東坡肉は得意料理の一つです。今、彼女の料理を食べたらきっと美味しいと感じるでしょうが、当時は味や香りの違いにとてもびっくりしました。その後も彼女の料理は何度か頂きましたが、全部は食べ切れず、他の人も含めて随分残されていたと思います。料理に関して言えば、父の知人の両親や近所の人々など昔の人は香辛料を受け付けなかったのではないでしょうか。今なら、自治会やNPOなどで台湾料理教室を開いていたかもしれません。当時はまだそういう食文化交流もそれほどありませんでした。数年後、父の知人と彼女は離婚し、料理を頂くこともなくなりました。

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現在、日本の食文化はすっかり国際化し、多国籍化・無国籍化しているように見えます。しかし、日本人の食の幅は随分広がったのは間違いありませんが、食事というものは、たまに食べるのは美味しいと思うものでも、毎日毎日では飽きてしまいます。毎日食べても飽きが来ないものが、自分にとっての本当の味です。

ソウルフードという言葉があります。もともとは貧しいアメリカ黒人の料理を指していましたが、今では各国、各地方の郷土料理全般に使われています。日本の古い言葉では、おふくろの味に相当します。毎日食べても飽きが来ず、しばらく食べなければ元気がなくなり、ひどい場合は精神的な安定を欠くような料理、それがソウルフードです。

食の摩擦というのは、微妙な違和感でも毎日三食積み重なっていくものなので、見過ごしにはできません。しかし、その文化摩擦を、どちらかの味に同化させる形で解消しようとするのも、問題です。カップルにはそれぞれのソウルフードがあるからです。国際結婚においては、日本の味と相手の国の味の魅力を楽しむとともに、違いもよく認識して、相互理解を深めていくことが大事です。

平成18(2006)年7月15日

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