複雑な法律手続きから、文化摩擦、生活設計、結婚生活の悩みまで、国際結婚に関するあらゆる情報をお届けします。
みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。前回まで3回にわたり日本人とフィリピン人との国際結婚を取り上げました。外国人との国際結婚手続きについては今後も解説して行きますが、今回から数回にわたって、日本人と国際結婚する外国人に必要な入国とその後の手続きについてお話しようと思います。
日本で国際結婚し、生活するために日本に滞在しようとする外国人は、有効なビザ(査証)と在留資格の取得が必要です。ビザや在留資格がないということは、ビザの取得が法律で免除されている特別の場合を除き、不法入国やオーバーステイ(不法残留)をしているという状態であり、不法入国やオーバーステイは「犯罪」になります。犯罪と言っても、就労目的で滞在しているだけでは道徳的な罪ではありませんが、不法入国やオーバーステイは政府の出入国管理上政策的に犯罪とされているので、強制送還や処罰の対象となるのはご存じでしょう。
ビザと在留資格はしばしば混同されることがあり、たとえば「日本人の配偶者等」という在留資格を結婚ビザ、「興行」の在留資格を興行ビザと言ったりします。しかし、関連はしていますが、ビザと在留資格は違うものです。管轄についてもビザは外務省、在留資格は法務省、と異なっています。簡単に言いますと、入国時に必要なのがビザ、入国後に必要なのが在留資格です。外国人でも在日コリアンなど日本で生まれ育った者は、外国から日本に入国したわけではないのでビザは必要ありませんが、日本で暮らすための在留資格は必要です。
通常日本に入国しようとする外国人は、在外公館(大使館や領事館)で、パスポートが有効であり、日本入国が差し支えないかどうかを申請します(反対に外国に行く日本人は、日本にある外国公館〔大使館や領事館〕にビザの発給を申請します)。ビザには、外交・公用・就業・一般・短期滞在・通過・特定の7区分あり、入国目的に応じていずれかのビザが発給されます。比較的取得しやすい短期滞在ビザや通過ビザに対して、就業ビザは取得が難しいなど、入国目的により取得の難易度や提出書類が異なっています。通常は在外公館が発給するかどうかの判断をしますが、外務省への照会や法務省との協議が必要とされる場合は、発給までに相当時間がかかることもあります。在外公館が外国人の入国を差し支えないと判断すれば、ビザが発給されパスポートの査証欄に押印されます。ただし、相互にビザ免除の措置を取っている国が約60ヶ国あり、ビザ免除措置国から日本に、あるいは日本から、ビザ免除措置国に観光旅行や親族訪問などで短期滞在する場合のビザの取得は不要です。
ビザ取得後、日本に到着すると入国審査官に上陸申請を行なうことになりますが、入国するにはビザとは別に上陸許可を得る必要があるので、ビザを取得している(免除されている)からと言って必ず日本に入国できるというわけではなく、上陸許可を得られずに帰国しなければならない場合もあります。この入国審査官は空港または海港に置かれている法務省の職員で、パスポートの有効性やビザの有効性・入国目的・滞在予定期間などの審査を行ないます。入管法に定められた上陸条件をクリアーすると入国が認められ、入国審査官によってパスポートに上陸許可証印が押印されます。上陸許可証印には、在留資格、在留期間、上陸許可年月日などが表示されます。
先に述べたようにビザには7区分ありますが、在留資格は27種類で、そのうち外国人が日本で行なう活動に基づく在留資格23種類と、外国人の日本での身分または地位に基づく在留資格4種類があります。ビザの7区分と在留資格のうち永住者の在留資格を除いた26種類は対応関係が規定されており、対応している在留資格のみが認められ、対応していない在留資格が認められることはありません。すでに日本に何年か在留していることが必要条件である永住者の在留資格のみ、ビザと関係なく与えられます。
見てお分かりのように在留資格の種類はビザの区分よりかなり多くなっていますが、これは在留資格ごとの活動範囲が細かく区分けされているためで、就業ビザを例に取れば「教授」「芸術」「宗教」「報道」「投資・経営」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術」「人文知識・国際業務」「企業内転勤」「技能」「興行」と14種類の在留資格に分類されていて、それぞれに決められた範囲でのみ日本での活動が認められています。たとえば理科系の「技術」の在留資格で滞在している場合、人文系の「人文知識・国際業務」の仕事をすれば資格外活動に当たりますし、出世して管理職になったり経営陣に加わったりするには「投資・経営」に在留資格を変更しなければなりません。日本人のサラリーマンなら、総合職(ゼネラリスト)として入社した場合、様々な部門や現場を回って経験を積んで行くことになりますが、在留資格によって活動範囲が決められている外国人の場合は専門職(スペシャリスト)としてのみ就業することになります。
最後に、ビザと在留資格の関係を整理しておきましょう。外国人が日本に入国し上陸許可を得るには、取得が免除されている場合を除いてビザが必要であり、入国後は活動内容に応じた在留資格が必要です。この時、ビザと対応していない在留資格は認められないので、在留資格取得の前提として、希望する在留資格に対応するビザを取得しておくことが必要だということです。
在留資格の取得については、次回にもう少し詳しく解説します。
現在、国際結婚にも関わってくる法律の改正が検討されています。
一つはこのメルマガでもたびたび取り上げている「法例」です。法例は、二つ以上の国が関係する渉外事件についてどの国の法律を適用するかを定めている法律です。法例は1898年に作られた古い法律なので、片仮名で文語体の法律を改め、内容もインターネット取引のトラブルなどにも対応できるように現代化されます。名称も「法の適用に関する通則法案」と改められるようです。
もう一つ、出入国管理及び難民認定法(入管法)も改正が見込まれています。入管法は、テロ対策の一環として、16歳以上の外国人に入国審査時の指紋採取が義務づけられます。またテロリストと認定された者については、強制退去(国外退去)処分が可能になります。外国人登録法の指紋押捺制度は平成5年に一旦全廃されましたが、今改正で復活するようです。ただし、かつて人権問題にも発展した特別永住者は例外とされています。
両法案の改正は今国会に提出される予定ですが、まだ詳細は不明で、また絶対に可決されるかどうかは分かりませんが、国際法務に携る申請取次行政書士として、今後の経過を注目して行きたいと思います。
平成18(2006)年2月15日
Copyright(c) H17〜 K-office. All rights reserved.