◆新品同様
〜サンプルカー移籍例〜

※14.10.04 KC-RN210CSNとKL-RP250GANについて、現状を反映しました。

バスというのは自動車の一種ですから、国から型式別に認可をもらって製造・販売することになります。
このとき、限定的な車輌は別として、一般的には認可時の審査用の車輌を用意します。
また、カタログの撮影、事業者への売り込み用の車輌が用意されることもあります。

このように、メーカー自身が必要とする車輌があります。
しかし、目的が終わればただの不用品。
そこで、住宅センターなどの展示品と同じように、一般に放出されることもあります。
こうした車輌は、新古車、カタログ車、サンプルカーなどと言われます(以降サンプルカーと呼ぶことにします)。

富士重工架装のサンプルカーは、ボルボを除けば、殆どは日デ車となります。
日デは三菱と共に、比較的車輌を放出するほうで、多くの車輌が各地にもらわれてゆきました。

7E・8E架装のサンプルカーは、前中扉で、前扉直後に大型の方向幕を持つ例が大半です。
しかし細かな点は、その後の量産車と異なることもあり、趣味的に興味深い存在になっています。

今回はそんなサンプルカーの移籍例を集めてみました。
なお、白ナンバーの車輌は、一般人が乗車可能なもののみを扱い、企業や学校の送迎車などは除外しました。

・P-U33K→宮城交通 
P-U33K P-U33K
初の7E架装型式であるP-U(UA)33系の1台。
サンプルカーコレクターの東の横綱?である、宮城交通で登録されました。
両端の窓の淵も黒くなっているのが特徴。また、車体の白い塗装の部分は種車のものを、そのまま流用しているようです。

現在は廃車になっています。

(2000.4 仙台市泉区)

・U-RM210GSN→宮城交通
U-RM210GSN U-RM210GSN
8E最初の架装型式であるU-RM系も宮城交通に引き取られました。
この車輌、サンプルカーとしては珍しく前後引戸です。
また、通常U-以降であれば車体下部の開口部はパンチ状となるのですが、
メッシュ状となっているのが大きな特徴です。

宮城交通では、後ろドアを締め切りにして、中に座席を設置しました。
宮城県北部の分離子会社で使われています。

(2002.2 宮城県登米郡迫町(佐沼) 撮影時・宮交登米バス)

・U-RP210GAN→宮城交通
U-RP210GAN U-RP210GAN
つづいて9m大型のRPも宮城交通にやってきました。宮城交通唯一のU-RPです。
この車輌も、開口部はメッシュ状になっています。

やはり宮城県北部の分離子会社で使われています。

(2002.2 宮城県登米郡迫町(佐沼) 撮影時・宮交登米バス)

・U-UA510LAN→宮城交通
U-UA510LAN U-UA510LAN
宮城交通のサンプル軍団の中でも一際異彩を放つのがこの車輌。
U-UAの高出力車(8気筒エンジン車)です。
路線車として位置づけられたので、路線仕様ですが、実際に製造された車輌は7Bを架装した貸切タイプでした。
やはりメッシュ状の開口部を持っています。
宮城県南部の白石に配置され、山登りや高速道路走行など、高出力であることを生かして使用されていました。。

この3台のほかに、U-UA440HSNのサンプルカーも宮城交通に移籍しましたが、オートマが不調で
比較的早くに廃車になっています。

(2002.10 宮城県白石市)

・KC-RM211GAN→昭和自動車
KC-RM211GSN KC-RM211GSN KC-RM211GSN
サンプルカーコレクター西の横綱?なのが昭和自動車。
KC-以降では、こちらが多くの車輌を獲得してゆきます。
これはKC-RMのエアサス車。通常、KC-以降の車輌は、ドア部分の車体に(縦方向に)黒ゴムの縁取りがついているのが
特徴ですが、この車輌にはありません(当時カタログをみる限り、全てそうなっていた模様)。
エンジン開口部は量産車では少数派の2段に分割されていないタイプです。
当初は福岡地区に配置されていましたが、路線の大規模縮小に伴い、唐津に異動しています。

(左:2001.9 福岡市西区(姪浜)) (中・右:2013.5 佐賀県唐津市)

・KC-RM211GAN→宮城交通
KC-RM211GAN KC-RM211GAN
やはりKC-RMのエアサス車ですが、こちらは型式審査やカタログ用の車両ではなく、工場内の都合で作られた車両の模様。
ドア部分の車体に黒ゴムの縁取りが付く、通常通りの仕様です。
エンジン開口部は、やはり分割されていないタイプとなっています。
分社側に在籍し、長い間涌谷で使用されていましたが、路線廃止に伴い古川に異動しています。

(2009.10 宮城県大崎市(古川) 撮影時:ミヤコーバス)

・KC-JP250NTN→宮城交通
KC-JP250NTN KC-JP250NTN
JPのデモ車として使用されていた車輌。
1996年6月製で、日デの製番は中途半端なものになっています。
最大の特徴は、軸距が400mm短縮されていることで、後に関東バスや横浜市交通局が導入しています。
宮城交通に移籍し、当初は泉区方面の各線で使われたようですが、後にミヤコーバスの名取に転属しています。
しかし、東日本大震災で津波に被災し廃車になりました。

(2004.8 宮城県黒川郡大和町(吉岡))

・KC-RP250GAN→(自家用)→水間鉄道→産交バス
KC-RP250GAN  KC-RP250GAN  KC-RP250GAN 
KC-RP250GAN
9m大型車、KC-RP系のサンプルカー。
その後も、日産ディーゼル関連の施設で自家用車として使用されていたようですが、
2006年頃に水間鉄道に移籍しました。
ターボ付きですが、サンデン交通や山交バスの車輌と同様に、非常口側最後部の細長い開口部がありません。
また、この車輌もドア部分の車体の黒ゴムの縁取りが省略されています。
その後、九州産交系列に再移籍しています。

(上3枚:水間鉄道のとき 2007.8 大阪府水間市)
(下:九州産業交通系列に再移籍後 2010.5 熊本県熊本市)

・KC-RP250GAN→東日本フェリー(送迎用)
KC-RP250GAN KC-RP250GAN
こちらはシャーシの製造番号が10001の車両。確証はありませんが、平成10年騒音規制時の受審車と思われます。
富士重工の製番から1997年に製造された車輌と思われます。
この車輌も、ターボ付きながら、非常口側最後部の細長い開口部がありません。

現在は東日本フェリーが保有し、白ナンバーの自家用登録で、フェリーターミナルでの送迎に使われています。
以前は新潟県の直江津港で使われいたようですが、現在は青森フェリーターミナルで室蘭航路等の送迎で使われています。

(2008.5 青森県青森市)

・KC-UA460NAN→ビーエム観光(埼玉県熊谷市)
KC-UA460NAN KC-UA460NAN
前中引戸で前扉直後に大型方向幕、屋根には通風口というのが、この頃の日デ+7Eのサンプルカーの標準ですが、
こういった、ごくフツーの大型路線車のサンプルカーは、日デ+富士では、どうも自家用や送迎用に行くことが多かったと感じます。
この車輌は平成10年騒音規制時の受審車。
東京都と埼玉県にある大学の送迎用として使われています。

(2013.7 東京都板橋区)

・NE-UA4E0LAN→丸建自動車(埼玉県上尾市)
KL-UA452KSN KL-UA452KSN
NE-UA系(CNG車)のサンプルカーのうちの1台。
恐らくは平成10年騒音規制時の受審車。
なにゆえ、3扉でメトロ窓という某交通局を連想させる仕様であるのかは不明です。

埼玉県上尾市の丸建自動車に移籍し、特定輸送で使用されています。
なお、もう1台、同じ仕様で存在し(こちらが平成6年排出ガス規制の受審車と思われる)、
同市内の日産ディーゼルの送迎で使用されていました。

(2008.5 埼玉県上尾市)

・2020.4.25 型式を修正しました。

・KC-UA460KAM→じょうてつ
KC-UA460KAM
 
KC-UA460KAM
 
KC-UA460KAM
ノンステップバスのサンプルカー。型式認証時なので、屋根が薄い改良型の車体となります。
その後、じょうてつが、札幌市交通局から路線の移管を受けた際、この車輌が移籍しました。
同社では、この車輌の塗装を、そのまま移管路線専用塗装としましたが
後に、移管路線が拡大した際に、標準塗装になっています。

前中両方の扉がグライドスライド式なのが、少々特徴的な点です。
また移籍時に、側面の窓ガラス位置の入れ替え、ミラーの交換が実施されています。
川沿営業所の所属です。

(左:現在の塗装 2007.5 札幌市中央区)
(中:移籍時の塗装 2002.6 札幌市中央区)
(右:サンプルカー時代、西武バスのイベントで展示中の姿 1998.9 埼玉県所沢市)

・KC-RN210CSN→宮崎交通
KC-RN210CSN KC-RN210CSN
京王帝都電鉄の要望により開発されたチョロQことKC-RN210CSN。
そのカタログ用の車両は宮崎県内の路線バスを一手に引き受ける宮崎交通に渡りました。
同社で唯一の富士重工製チョロQです。
コーナリングランプつきなのがちょっと特徴的ですね。

都城営業所に配置されていましたが、2014年7月に確認したところ、ナンバーを外され
宮崎空港の構内用に転用されています(塗装はそのまま)。

(左:2009.5 宮崎県都城市、右:2014.7 宮崎空港)

・KK-RN252CSN→東観光バス(群馬県佐波郡)→日本城タクシー→八晃運輸
KK-RN252CSN KK-RN252CSN KK-RN252CSN
KK-RNは西工だけ・・・というのが定説でしたが、実は富士でも1台だけ製造されました。
その車輌がこれで、製造番号は00001。なんらしかの諸事情で、KK-RNでの架装は中止になったのでしょう。
群馬県佐波郡境町の無料巡回バスを受託する東観光バスに移籍。2005年に同町が伊勢崎市に合併後も運行されていましたが、2008年3月末で終了。
その後、暫くして、2011年秋に大阪市の日本城タクシーに移籍しましたが長くは続かず、2013年には岡山市の八晃運輸に再度移籍しています。。

リアの画像は、こちらを参照ください。

(左:東観光バス 2004.10 群馬県佐波郡境町)
(中:日本城タクシー 2012.1 大阪府松原市)
(右:八晃運輸 2013.8 岡山市北区)

・KK-RM252GSN、KK-RM252GAN→昭和自動車
KK-RM252GSN
KK-RM252GAN
 
KK-RM252GSN
 
KK-RM252GSN
KK-の中型長尺は、リーフサス(RM252GSN)、エアサス(RM252GAN)ともに昭和自動車に移籍しました。
両車輌とも同じ車体を持っています。 時代の流れで、中型とはいえ中扉がワイドドアになっていますが、床高さはツーステップです。
当初はKL-JPのサンプルカー(西工)と共に、佐賀営業所に配置され、郊外のショッピングセンターと結ぶ路線で使用されました。
その後は標準塗装になっており、特にリーフサスのほうは前原→唐津と異動しています。

(上左:KK-RM252GSN 2001.9 佐賀県佐賀市)
(上中:昭和自動車の標準塗装になったKK-RM252GSN 2006.9 福岡県前原市)
(上右:KK-RM252GSN 2013.5 佐賀県唐津市)
(下:KK-RM252GAN 2001.9 佐賀県佐賀市)

・KL-RP252GAN→くしろバス(→自家用)
KL-RP252GAN KL-RP252GAN
KL-RP+新7Eなんて稀少型式にもサンプルカーはいます。
ツーステップの車輌は、路線用では北海道中央バスが導入しただけですから、
その点でも珍車といえます。

くしろバスに移籍しましたが、白糠営業所に配置されたため、
比較的目立たない存在でした。
その後、再度、くしろバス沿線自治体保有の自家用(スクールバス)となっています。

なお、KL-RPのサンプルにはもう1台、新7Eの試作車として作られたRP252GSN(紫色の車輌)がありましたが、
そちらはどうなっているのでしょう?

(2008.5 北海道白糠郡白糠町)

・KL-UA452KSN→丸建自動車
KL-UA452KSN KL-UA452KSN
KL-UAのサンプルカーのうち、現在緑ナンバーの車両は変り種ばかり。
短尺車であることはいいとして、リーフサス、ツーステップ、とどめは前後引戸仕様である点。
量産車でこんな仕様の車両は、ありません。

丸建自動車に移籍し、やはり特定輸送で使用されています。

(左:2008.5 右:2012.5 埼玉県上尾市)

・KL-UA452TAN→昭和自動車
KL-UA452TAN KL-UA452TAN
こちらはトップドアのツーステップ、長尺車です。
通常なら7B架装となるような車種ですが、このようなところがサンプルカーの面白いところ。
これも昭和自動車に移籍。唐津営業所に配置され、仕様を生かして、福岡〜唐津の高速バスに充当されました。
その後、福岡に異動し、福岡〜前原方面の短距離高速バスで使用されています。

(左:2005.8 右:2006.9 福岡市博多区)

・KL-UA272KAM→丸建自動車→神戸バス
KL-UA272LKAM KL-UA272LKAM
KL-UAのフルノンステップ車。
中扉もグライドスライド式というのも目立ちますが、なによりも特徴的なのは右側面の窓配置。
通常、軸距4.8mでも5.3mでも4枚の逆T字窓が並びますが、これは逆T字窓3枚と固定窓1枚になっています。

丸建自動車に移籍し特定輸送で使用されていましたが、廃車になり神戸空港に本社を置く神戸バスに移籍。
空港島内の無料循環バスで使用されています。

(2011.8 神戸市中央区(神戸空港))

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