アメリカカンザイシロアリ

アメリカカンザイシロアリは、「乾材シロアリ」の一種で、乾いた木材中の僅かな水分で生育できるシロアリです。 元々日本には存在しなかった種ですが、木材や家具の輸入によって運び込まれ、繁殖しつつあります。
土の中に巣をつくる「土壌性」のヤマトシロアリやイエシロアリと違って、加害した木の中に巣(孔道)をつくり、 蟻道や蟻土を作りません。また、温度変化や湿度の影響を受けにくいと言われています。

アメリカカンザイシロアリの被害

加害は建物下部材から小屋組材まで、建物全体に被害が及ぶ可能性があります。 巣(コロニー)の周辺は空洞になってしまいますので、被害箇所によっては、耐震強度が著しく低下する恐れがあります。
ひとつの巣(コロニー)の規模は小さく、数百〜数千頭で1つの巣(コロニー)を作っているようです。 1軒の建物に1つの巣(コロニー)というわけでなく、 たくさんの巣(コロニー)が1軒の家の中でバラバラに点在していることが多く、発見と駆除を難しくしています。
ヤマトシロアリやイエシロアリと比較すると食害の進行が遅く、被害の兆候が現れるまでに 数年かかるといわれています。しかし、早期発見が難しく、駆除法が確立されていない上に再発率も高いため、 被害は広がりやすいといえます。

アメリカカンザイシロアリの形状

羽アリ(有翅虫)の体長は6〜8mm程度で頭部は赤褐色、他は黒褐色。 動きは非常に敏速で、暖かい日に少数で飛び立ちます。体色が似ていることから、日中に群飛するヤマトシロアリと誤認されやすいので注意が必要です。
兵蟻は8〜11mm程度、頭部は濃褐色で頭部前方は黒色です。
職蟻は全体が乳白色で、ほぼ円筒状です。ヤマトシロアリやイエシロアリよりも大きく、ずんぐりしています。容易に他の階級に分化する能力をった疑職蟻で、数頭でコロニーを再生できます。

アメリカカンザイシロアリの生態

アメリカカンザイシロアリも他のシロアリと同様に 羽アリが飛び立ち、雄と雌がつがいになって新たな巣を作ります。
羽アリは 木の表面に穴を開けて飛び立ちます。 羽アリの飛び出す時期は、所によって、条件によって、集団によってまちまちです。 春夏秋冬どの時期でも、割合温暖な日に少数ずつ飛び出しますが、主に7月〜9月の昼間に飛び立ちます。 飛ぶ距離は一度に2〜3m しか飛ばないものが多く、同一家屋内か、近隣に順次拡大します。
住宅への侵入経路は、 羽アリの飛来か被害材(家具など)の搬入によって侵入します。
飛来してきた羽アリは雌雄が対となり、翅を落として材の表面に穿孔し、1センチほどの深さに洋ナシ状の王室をつくります。穿孔は早材部や割れ目、窪みなどから行うことが多いようです。穿入孔は木片と排出物で塞いでしまうため、 侵入時の食害痕は発見が難しいようです。また、輸入家具などは、搬入前にしっかりチェックしておくことが必要と思われます。

被害の発見の決め手

被害を発見するには 粒状の乾いた糞(拡大鏡で見ると均一な俵状)が発見の決め手です。糞は乾燥した砂粒状で、長径約1ミリ程度、黄色から褐色です。糞が見られたら、どこかに(多くの場合その直上)に生息部位があると考えてください。また、軽く叩いてみて糞が落ちるような材木が生息部です。
ごく初期には糞はなく、侵入口の下に木粉(木屑)が積もっています。木粉や羽根が落下している場合は、近所(もしくは、同じ建物の他の場所)から飛んできて間のない状態と思われます。

アメリカカンザイシロアリの駆除

アメリカカンザイシロアリの故郷であるアメリカでは、燻蒸処理とホウ酸塩処理が一般的な対策方法として用いられています。燻蒸処理は家をシートで覆って家全体をガスで処理します。 駆除効果はありますが、残留効果がないため、近所にカンザイシロアリが生息していれば再発の可能性があります。
ホウ酸塩処理は短期間での駆除効果は期待できませんが、分解されることなくゆっくりと木材内に浸透拡散し、長期間に渡って被害を抑制してくれます。 新築時に家全体をホウ酸塩処理すれば、床下から屋根裏まで被害を抑える事ができるので安心です。