もしも桶谷先生に出会わなかったら、歌の文句ではないけれど今頃何をしていたでしょうか。開業をするつもりでおりましたが、今のような母乳相談室としてではなかったかもしれません。
昭和61年3月、大阪にある桶谷先生の研修センターに見学に行きました。
お母さんが手技を受けているベットを囲むように、研修生が真剣なまなざしで先生の手の動きを見ながら、メモをしている姿が印象的でした。桶谷先生はニコニコしながら、お母さんや研修生に話しかけておりました。
私は、手技を終えたお母さんを下駄箱のところまで追いかけていき、「手技は痛くなかったか」訊ねてみました。
1人目のお母さんは、痛いどころかとっても気持ちよいと教えてくれました。
2人目のお母さんは、手技を受けている最中足の裏まで血液がズンズンと流れるような感じがして足の裏が温かくなってくるような感じですと答えてくれました。
3人目に訊ねたお母さんは、両肩が、ふわっと風船がついたように軽くなったと話してくれました。
手技は乳房の血流が良くなるだけでなく、その結果体にも影響あることをその時初めて知りました。
心も体も癒されるような感じで、にこやかに帰って行ったその後ろ姿をみて、私は、学びたいなと心から思いました。
助産師学校を卒業して以来、勤務しながら先輩の見ようみまねで乳房を触らせていただいた時期もありましたが、乳房のトラブルに対応するだけの知識と技術はありませんでした。
ましてや、痛くなく行う手技が本当なのかを自分の目で確かめたいという思いで、桶谷先生のところに伺いました。それでまずお母さん方に尋ねてみたわけです。
それから1年後、家族の協力を得て、研修生として学ぶことが出来ました。
乳房手技だけでなく、仕事への姿勢も教えていただきました。桶谷先生はパイオニア的な存在でもあり、プロフェッショナルな存在でした。
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