目的:食道胃静脈瘤破裂例の危険因子を検討した。対象:2005年1月より2009年9月まで当施設で食道胃静脈瘤を加療した延べ258例。破裂例は62例(24.0%)。方法は年齢,性,食道静脈の部位,形態,RCの有無,Lg有無,入院日の検査(Alb,T-Bil,血小板数,PT%),腹水有無,脳症有無,HCC有無,肝疾患原因がアルコール性か否か,を検討した。内訳は平均年齢65.1歳,男165(64.0%),女93,Location s 54(20.9%),m 164(63.6%),i 40(15.5%),Form 0と1 204(79.1%),2と3 54(20.9%),RC陽性233(90.3%),Lgあり109(42.2%),Alb3.2g/dl未満145(56.2%),T-Bil 1.4以上79(30.6%),血小板76000未満204(79.1%),PT% 63.4未満139(53.9%),腹水あり128(49.6%),脳症あり54(20.9%), HCC109(42.2%),アルコール性35(13.6)。統計学的処理はχ二乗検定および多重ロジスティック回帰分析を用いた。結果:年齢(p=0.2623),性(0.1045), 部位(0.2166),形態(0.4678),RCの有無(0.3264),Lg有無(0.812),Alb(Odds 3.13 p=0.0004),T-Bil(Odds 2.56 p=0.0015), 血小板数(Odds 0.3509 p=0.0004),PT%(Odds 1.95 p=0.0264),腹水有(p=0.1267),脳症有(0.4687),HCC有(0.216),アルコール性肝障害(0.0508)。多重ロジスティック回帰分析ではAlb p=0.0032 oddds 1.2472 1.4868-7.1933,T-bil p=0.0188 odds 2.4168 1.1574-5.0467, 血小板数 p=0.0001 odds 0.2689 0.1375-0.5258, PT% p=0.3932 odds 1.3810 0.6582-2.8975.考察 対象を静脈瘤治療の緊急例・待機例・予防例としたため、内視鏡所見に有意差は得られなかった。多変量解析で3.2g/dl未満のAlb低下例とT-Bil 1.4以上肝機能進行例は破裂の危険の独立危険因子として抽出された。高度肝障害者では定期的な上部消化管内視鏡検査により静脈瘤の状態を調べる必要が示唆された。