日本消化器内視鏡学会甲信越支部

69.AIDS発症で判明した消化管Kaposi肉腫の1例

信州大学 医学部 消化器内科
倉石 康弘、奥原 禎久、関口 智裕、北畠 央之、丸山 康弘、岡村 卓磨、小林 聡、大工原 誠一、中村 真一郎、野沢 祐一、山田 重徳、長屋 匡信、菅 智明、田中 榮司
信州大学 医学部附属病院 内視鏡センター
福澤 慎也、新倉 則和
信州大学 医学部 呼吸器・感染症内科
牛木 淳人、金井 信一郎
信州大学 医学部 臨床検査部
上原 剛

症例は50歳代、男性。30歳代にB型肝炎ウイルスキャリアと診断された。 2012年秋より腹部から両下肢にかけて帯状疱疹が出現し、同時期より左上腕に紅色の皮疹が出現し、12月頃より左頸部に腫瘤を自覚していた。2013年2月頃より咽頭違和感を自覚し、3月に当院の耳鼻科を紹介受診し、左口蓋扁桃に発赤調の隆起性病変を認めた。その後、全身倦怠感が出現し改善せず、黄疸も認めたため当科に紹介となった。 肝胆道系酵素、HBs抗原の高値を認め、B型肝炎の再燃と診断し精査加療目的に入院した。 また、2カ月以上持続する咳嗽、入院時より間欠熱を認めていた。血液検査上HIV陽性であり、CD4<200 /μl、CD4<CD8、リンパ球<1200 /μlと免疫不全状態であった。入院時、咽頭・皮膚のKaposi肉腫疑う所見、B型肝炎急性増悪、ニューモシスチス肺炎を疑う所見を認めAIDS発症と考え、テノホビルとラルテグラビルによるHAART療法開始した。また、入院後、上下部消化管内視鏡検査を施行し、頸部食道から十二指腸にかけて多発する発赤調の平坦病変と直腸に散在する発赤調の隆起性病変を認め、消化管Kaposi肉腫と判断した。Kaposi肉腫はAIDS患者に高頻度に合併する悪性腫瘍で、消化管の頻度は皮膚に次いで多いとされる。今回我々は消化管Kaposi肉腫を経験し、内視鏡的に経過観察し得たので、文献的考察を加え報告する。