日本消化器内視鏡学会甲信越支部

67.壊疽性膿皮症を伴った潰瘍性大腸炎の一例

新潟大学医歯学総合病院 消化器内科
水戸 正人、熊木 大輔、横山 純二、本田 穣、鈴木 健司、小林 雄司、水野 研一、上村 顕也、竹内 学、青柳 豊
新潟大学医歯学総合病院 皮膚科
下村 尚子、藤川 大基、貴舩 夏子

【症例】50代男性【臨床診断】#1. 潰瘍性大腸炎(UC),#2. 壊疽性膿皮症,#3. 左頬粘膜癌【既往歴】2011年7月 血便で3週間入院(他院)【入院までの経過】2013年5月上旬 発熱出現。左前脛部の自発痛が出現し、徐々に腫脹。また、時期不詳だが、左後頸部、左背部にも同様の腫脹が出現し、排膿も認めた。5月下旬 発熱が持続するため、近所の総合病院を受診し、全身精査で頬粘膜癌と診断された。6月11日 頬粘膜癌治療目的で当院紹介入院。【入院後経過】<#1. UC>入院後、血便が出現。6月19日 下部消化管内視鏡検査(CS)施行し、潰瘍性大腸炎(全大腸炎型・活動期・中等症)と診断した。プレドニゾロン内服開始し、約1ヵ月で臨床的・内視鏡的に寛解。<#2. 壊疽性膿皮症>入院時、左前脛部膿瘍、背部潰瘍、左耳介後部潰瘍、左中指腫脹を認めた。切開排膿、抗生剤投与、抗生剤軟膏塗布を行ったが全身の皮膚症状は改善せず。膿瘍からの頻回の培養検査ではほぼ全て無菌性であった。背部潰瘍の皮膚生検では好中球性皮膚症所見は認めなかったが、総合的に判断し壊疽性膿皮症と診断した。その後、左前脛部潰瘍が拡大。他部位の皮膚所見は改善。7月2日 左前脛部潰瘍に対し顆粒球吸着療法(GCAP)開始し、以後週2回施行。潰瘍の拡大が停止し、GCAP全10回終了後、徐々に肉芽の色調が紅色調に改善。8月9日 創閉鎖までの期間短縮を期して局所陰圧閉鎖療法(VAC)開始。開始後、上皮化が進行してポケットも消失。8月19日 VAC終了。以後、軟膏塗布を継続し、潰瘍は治癒傾向。9月20日 左前脛部潰瘍は縮小。<#3. 頬粘膜癌>8月20日 切除術施行。術後経過良好。【まとめ】UCの腸管外合併症として壊疽性膿皮症が知られている。本症例では、全身に壊疽性膿皮症による皮膚所見を認め、左前脛部潰瘍の治療に当初難渋したが、GCAPおよびVAC療法により改善を認めた。