日本消化器内視鏡学会甲信越支部

52.胃癌の診断を契機に発見されたサルコイドーシスの1例

済生会新潟第二病院
菅野 智之、関 慶一、窪田 智之、西倉 健、石原 法子、井上 良介、渡邉 雄介、阿部 聡司、岩永 明人、石川 達、本間 照、吉田 俊明

サルコイドーシスは消化管に発生することは稀であるがその大部分は胃に発生する。一方、悪性腫瘍に伴うサルコイド反応は本邦では胃癌、肺癌に多いと報告されている。今回我々は早期癌類似進行胃癌と同時に胃壁、領域リンパ節にサルコイド肉芽腫の多発を認めた1例を経験した。症例は50歳代の女性。心窩部痛を主訴に当院を受診し、CTにて胃小弯に1cm弱の腫大リンパ節を指摘された。EGDで幽門輪の変形と、幽門前壁部~幽門輪に褪色調の不整な陥凹局面の多発を認めた。また胃体部にはヒダ集中を伴う黄白色調の平坦ないし平坦隆起性病変が多発していた。穹隆部には中心陥凹を伴う大きさ5mm程のSMT様の黄白色調小隆起を2個認めた。幽門部を主病変とする胃癌の粘膜下進展および壁内転移、胃原発の悪性リンパ腫等を疑い病変部から生検した。生検では幽門部の病変は低分化腺癌を伴う印環細胞癌、胃体部および穹隆部の病変からは粘膜深層から粘膜下層に多発する非乾酪性類上皮肉芽腫が認められた。胃癌に対し幽門側胃切除+D2郭清が施行された。外科切除標本の病理組織診断はIIc+IIa-like advanced with ulcer scar ,45x28 mm, por2 > sig , pT2 (MP), sci, INFc, ly0, v0, pN0, pPM0 , pDM0, pStageIBであった。腫大が疑われた領域リンパ節に癌の転移は認めずそのほとんどで肉芽腫の形成を認めた。胃壁にも腫瘍周囲や体部の瘢痕部に一致して粘膜深層から固有筋層に肉芽腫が多発していた。特殊染色では血管炎、抗酸菌感染、真菌感染は否定的であった。胸部CTでは肺野末梢に小粒状影を認め、サルコイドーシスに矛盾しない所見であった。以上より胃MP癌とサルコイドーシスの胃病変の合併例と考えられた。胃癌に伴うサルコイド反応との鑑別が問題となるが、癌腫切除後の残胃の肉芽腫病変の経時変化がその一助になると考え、内視鏡所見も含めてその後の経過を報告する。