症例】80歳代男性。【現病歴】虚血性心疾患の既往あり当院循環器内科外来へ通院中であった。平成25年6月、定期検査として施行された上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部大弯に発赤した陥凹性病変を認めた。NBI拡大観察にて崩れたネットワーク血管を認め分化型腺癌を疑った。また流水では取れない白色の物質が目立っていた。抗血栓薬2剤内服中であったため1剤休薬してでの生検を勧めたが、患者本人の希望により生検せずに内視鏡治療を行うこととなった。【経過】7月にESD施行し一括切除した。病理では粘膜に広く広がる粘液癌主体の癌であり、極一部に粘液が粘膜下層に浸潤しており深達度はsmと判定された。粘液癌は表層近くにあり癌は表面に露出していた。【考察】粘液癌は早期胃癌の約1%の頻度で認められる稀な病変である。これまでその内視鏡所見についての報告は少なく、特に拡大観察を行った報告はほとんど認められない。わずかに小澤らの報告が認められるが、今回の症例でも小澤らの言う円形の白色物質が一部で認められ、これが粘液癌の早期のものの内視鏡所見である可能性がこの症例からも示唆された。既報との相違も含め、報告する。