内視鏡観察や処置を行うのにあたり,上下および左右アングルが重要な役割を果たしていることはいうまでもない.特に処置の際には,アップアングルを十分にかけて見上げの状態で行うことが多く,この状態での左右アングルの動き方が非常に大切となっているが,スコープの種類によって異なった仕様となっていることはあまり知られていない.従来型のオリンパス社製の上部汎用内視鏡は,アップアングルを十分かけた状態で左右アングルを動かしても先端の位置が固定される設定(ツイスト型)となっていたが,最新型汎用内視鏡HQ290は先端部分も含め内視鏡軸そのものが回転する設定(Jターン型)に変更され,富士フイルム社製汎用内視鏡の設定と同様となった.今回われわれは,HQ290(Jターン型)と従来型内視鏡であるH260(ツイスト型)の動きの違いがどのように現れるかについてファントムを用いて検討を行った.Jターン型は,一般的に観察がしにくいといわれる胃体上部小弯の観察において左アングルをひねるだけ内視鏡先端が前壁から後壁に移動する動きが得られるため,先端の位置が変わらないツイスト型に比べれば観察しやすい.一方胃体部後壁の観察においては,Jターン型は視野中央にスコープそのものが常に存在する上に,内視鏡の先端の軸が後壁の接線方向に向いてしまうため観察しにくい.処置の際は先端から至近の対象物に対して微妙に角度を変えることが必要となるが,ツイスト型の場合は左右アングルを動かしても捉え方の角度が変わるだけで対象物そのものは視野の中心からはほとんどずれない.一方Jターン型では,先端軸そのものが回転するために,左右アングルを動かすと直ちに対象物そのものも視野から動いてしまう.これを補正するためには,トルク操作も加えながら動かす必要があり手間がかかってしまうことが判明した.以上の検討から,とくに反転操作での処置が多い内視鏡においてはツイスト型の方が左右アングルの設定として適しているものと思われた.