自己免疫性膵炎は種々の多臓器障害を併存するといわれ、以前は個々の疾患として考えられてきたが、IgG4関連疾患としての一つの疾患概念が確立されつつある。2010年度にはあらたな診断手引きとしてIgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患群(以下IgG4+MOLPS)が提唱された。今回、われわれはIgG4+MOLPSを背景とした自己免疫性膵炎の1例を経験したので報告する。【症例】70歳代男性、2009年頃より倦怠感を自覚。白内障のため近医眼科受診中であったが、同時期よりdry eyeのため点眼薬を使用開始し、口腔内の乾燥、耳下腺の腫脹も自覚。2011年春頃より食欲低下みられ、A病院を受診し、肝障害及び耳下腺腫脹を指摘され精査加療目的に2011年11月当院消化器内科紹介受診となる。【臨床経過】当院血液検査にて血清アミラーゼ 375IU/L、血清リパーゼ 276IU/Lと高値を示した。IgG 2672mg/dl、IgG4は184mg/dlであった。画像所見ではCTにて膵尾部腫大、capsule like rimを認め自己免疫性膵炎と診断。両側の耳下腺腫脹、また左総腸骨動脈周囲に軟部腫瘤を認め後腹膜線維症と考えられた。また、左下葉に結節性病変あり炎症性偽腫瘍と診断。IgG4関連肺病変が疑われた。ERCPにて肝内胆管に不整で多発する狭窄像がみられ硬化性胆管炎と診断。当院耳鼻科にて耳下腺より腫脹したリンパ節の生検を施行した。リンパ節は腫瘍性変化のない正常リンパ節であったが、免疫染色にてIgG4の著明な発現を認めた。以上、画像所見及び病理所見よりとIgG4+MOLPSと診断した。テロイド内服にて治療を開始となる。【結語】IgG4+MOLPSは比較的新しい疾患概念であるが、自己免疫性膵炎の診断に際しては十分な全身検索を行う必要があると考えられた。