日本消化器内視鏡学会甲信越支部

30.8か月前のMRCP・造影CTで指摘困難であった分枝型膵IPMNの経過観察中に発生した下部胆管癌の一例

長野市民病院 消化器内科
多田井敏治、長谷部修、原悦雄、越知泰英、関亜矢子、長屋匡信、伊藤哲也、神保陽子

 症例は73歳男性。既往歴として胃GIST、左胸壁腫瘍(繊維腺腫)の手術歴あり。平成18年より近医にて糖尿病と膵頭部分枝型IPMN( 約3cm)で定期的検査を施行していた。平成24年5月の腹部造影CT・MRIでは分枝型IPMNの他は異常を認めなかった。平成25年1月15日より黄疸を認め、1月30日当科紹介となった。腹部造影CTでは膵管癌を疑う所見はなく、下部胆管に腫瘤性病変を認めた。同日施行したERCにて下部胆管に不整狭窄を認め、IDUSでは同部の壁肥厚を認めた。胆管生検、細胞診では腺癌の所見を認め、下部胆管癌と診断し、2月20日当院消化器外科で膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的には、下部胆管癌はVater乳頭部近傍まで浸潤しており、Bi. 乳頭浸潤型、30mm tub1+tub2. int,. INFβ. Ly1. V0. Pn3. pPanc2, pDuo. pHM0. pEM0. Pn0. pT4N0MX stage4aであった。なお、膵頭部IPMNは腺腫であった。IPMNの経過観察中に発生した胆管癌の報告はまれであり文献的考察を加え報告する。