日本消化器内視鏡学会甲信越支部

58.大腸イレウスを合併した腸管子宮内膜症の一例

新潟県立新発田病院 内科
坪井 清孝、夏井 正明、安住  基、瀧澤 一休、岡  宏充、青木 洋平、山崎 和秀、松澤  純、渡邉 雅史

【症例】36歳女性。【既往歴】平成15年に左卵巣嚢腫にて左卵巣摘出術施行。初経11歳、生理周期28~30日。【現病歴】以前より便秘傾向あり。平成24年5月下旬より左側腹部痛、下痢があり近医を受診。炎症反応高値と、CTにて左半結腸の腸管壁肥厚を認め当科紹介。外来で大腸内視鏡検査を施行したが、前処置不良で疼痛も強く、直腸までの観察不十分で終了。抗生剤、整腸剤、下剤の内服で症状軽快し、炎症反応の改善、排便コントロールもつき外来経過観察となっていた。しかし、7月中旬より再び腹痛が出現し、便秘傾向となる。7月下旬、約2週間排便なく腹部全体に強い膨満感と疼痛が出現し、当院救急外来を受診。CTでは直腸S状部に狭窄を認め、その口側腸管は著明に拡張し、大腸イレウスの診断で緊急入院。全身状態は落ち着いており、3日間腸管安静のみで経過観察したがイレウスは解除されず、大腸内視鏡下に経肛門的イレウス管を挿入留置。その際、直腸S状部に高度狭窄を確認したが、明らかな腫瘍性変化はなく狭窄部の生検もGroup1の診断であった。以後、速やかにイレウス状態は改善したが、イレウス管留置による肛門痛が強いため、イレウス管造影ののち自然排便を期待してイレウス管を抜去。しかし、その後は排ガス、排便は殆どなく、腹部膨満と腹痛の増悪を認めたため、大腸内視鏡下に経肛門的イレウス管を再挿入した。その際施行した大腸内視鏡検査では、高度狭窄部の粘膜は発赤していたが、生検ではGroup1であった。結果、保存的治療で改善しない機械的イレウスと判断し、待機的に低位前方切除術を施行。切除検体は、Rsで輪状潰瘍瘢痕により高度に狭窄し、同部でcaliber  changeを認めた。病理組織学的には、悪性所見はなく狭窄腸管の粘膜下層から漿膜下層に子宮内膜組織を認めた。これにより、イレウスを合併した腸管子宮内膜症と診断し、術後の追加治療としてホルモン療法も検討したが、本人の挙児希望もあり未治療で経過観察中。【結語】大腸イレウスを合併した腸管子宮内膜症の一例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。