日本消化器内視鏡学会甲信越支部

49.上腸間膜動脈症候群及び大腸イレウスを合併したBlau症候群の1例

安曇野赤十字病院 消化器内科
樋口 和男、須藤 貴森、望月 太郎、一條 哲也
安曇野赤十字病院 外科
高山 寛人

【はじめに】Blau症候群は関節炎,ブドウ膜炎,皮膚炎を3主徴とする家族性肉芽腫性疾患として知られ、クローン病の原因遺伝子として同定されたNOD2の恒常活性変異により惹起される常染色体優性遺伝性疾患である。今回我々は上腸間膜動脈(SMA)症候群と大腸イレウスを合併したBlau症候群の1例を経験したので報告する。【症例】62歳男性【既往歴】小児期より手足の関節の変形,13歳時虹彩炎で全盲,45歳時多発根神経炎,以後寝たきり【現病歴・経過】患者長男(21歳)にも小児期より関節炎など症状あり、小児科での遺伝子解析の結果、NOD2遺伝子変異が同定され、Blau症候群と診断された。その後、当患者の遺伝子解析も行われ、Blau症候群と診断され通院加療中であった。X年2月17日嘔吐出現して18日当院受診し、イレウスの診断で入院。脱水とWBC,  CRPの軽度上昇を認めた。腹部単純CTでは胃から十二指腸水平脚までの拡張とニボー形成を認め、SMAと大動脈の間隔が3mmと狭細でSMA症候群と診断。誘因は長期の経口摂取不良に伴う極度のるい痩(BMI10.1)と考えられた。経鼻胃管挿入して保存的治療にて軽快し、経口摂取可能となり27日退院となった。しかし、再び嘔吐出現して3月1日SMA症候群の再燃で入院となった。十二指腸ゾンデ挿入後、経腸栄養導入して加療し、症状は改善中であった。4月11日腹痛が出現し、精査にて上行結腸の偽性腸閉塞の併発と診断した。最終的に経肛門イレウス管を挿入し、保存的治療を継続した。5月になり経口摂取再開して経肛門イレウス管を抜去したが、6月8日に腹痛出現して再び経肛門イレウス管が必要となった。その後、経口摂取・経肛門イレウス管留置のまま6月26日退院、自宅療養となった。Blau症候群の消化管病変については報告はあるものの未だ不明な点が多い。NOD2遺伝子変異を有する病態であることから、クローン病との関連も示唆される興味深い1例と考えられる。