日本消化器内視鏡学会甲信越支部

47.神経内分泌腫瘍への分化を伴う低分化型膵腺癌の1切除例

信州上田医療センター 消化器内科
丸山 雅史、丸山 康弘、藤森 一也、滋野  俊、吉澤  要

症例は84歳  男性。2012年6月末より倦怠感が出現したため7月初旬にかかりつけ医を受診したところ黄疸を指摘され閉塞性黄疸の診断で当科紹介となった。造影CTでは胆管と膵管は拡張し膵頭部に25mm大の境界不明瞭な腫瘤を認め、腫瘤は遅延性に濃染を呈することから膵癌と診断した。MRI検査では腫瘤の内部はT1、T2ともに比較的低信号を示し、造影MRIでは不均一な漸増性濃染を呈し浸潤性膵管癌に矛盾しない所見であった。EUSでは膵頭部に不整形低エコー腫瘤を認め、胆管内進展を伴っており胆管内にはdebrisを疑う等エコー病変を認めた。胆管ドレナージ目的で施行したERCPでは下部胆管に不整な締め付け狭窄を認め胆管生検を施行したが腫瘍組織は採取されなかった。後日施行したERPではWirsung管内に進展する腫瘤を認め尾側膵管は造影されなかった。ERP所見から膵管内に進展する腫瘍を疑い神経内分泌腫瘍、腺房細胞癌、膵管内管状腺癌も鑑別に考え同部の生検を施行、組織学的には顕著な異型は見られないが小型の腺管がやや密に存在する部分がわずかに含まれていた。膵悪性腫瘍と診断しインフォームドコンセント後に手術療法を希望されたため8月20日に膵頭十二指腸切除術が施行された。病理所見は20x15x10mmの腫瘍であり低分化型腺癌に相当、部分的に神経内分泌腫瘍様の組織像も伴うため免疫染色を施行したところ同部はchromograninA(focal+)、synaptophysin(+)、CD56(+)であり神経内分泌腫瘍分化を伴う低分化型腺癌の所見であった。最終診断はpoorly  differentiated  adenocarcinoma  with neuroendocrine  differentiation  int  INFβly2 v2 pn1 mpd(borderline) pcm(-)bcm(-)dpm(+)s(-)rp(+)n-、進行度stage3であった。膵腺癌と内分泌腫瘍の併存例の報告は希少であり貴重な症例と考え報告する。