日本消化器内視鏡学会甲信越支部

22.Cameron病変を伴い大網、小腸および横行結腸が脱出した複合型(type IV) 食道裂孔ヘルニアの1例

信州大学 医学部 消化器外科
鈴木  彰、小出 直彦、奥村 征大、竹内 大輔、宮川 眞一
丸子中央総合病院 外科
尾崎 一典

症例は74歳の女性。労作時の呼吸困難を自覚し来院した。胸部X線検査では縦隔から左右両肺野に広がる腫瘤影を認め、内部に消化管ガス像が認められた。内視鏡検査では食道胃接合部は切歯より30cmに位置し、胃の長軸方向のねじれが存在した。胃体上部に線状びらんと胃潰瘍が認められた。胸腹部CT検査では食道裂孔ヘルニアにより縦隔に滑脱した胃を認め、ヘルニア嚢内には小腸と結腸も認められた。Cameron病変を合併した複合型(type  IV)食道裂孔ヘルニアの診断にて腹腔鏡補助下手術を行った。食道裂孔には胃、大網、小腸、横行結腸の陥入を認め、大網、小腸、横行結腸を腹腔内に還納した。食道裂孔の大きさは11 x 9 cmであった。食道裂孔の修復にはポリプロピレン/ポリテトラフルオロエチレンシートを用いた。術後には呼吸困難や喘息症状は消失し、またPPIの服用を中止しても内視鏡的にびらんや潰瘍病変を認めていない。Cameron病変を伴い大網、小腸および横行結腸が脱出した複合型(IV型)食道裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する。