日本消化器内視鏡学会甲信越支部

1.内視鏡的硬化療法が奏功した食道血管腫の1例

信州大学 医学部 附属病院 消化器内科
玉井 方貴、菅  智明、大工原 誠一、奥原 禎久、山田 重徳、岩谷 勇吾、伊藤 哲也、須藤 桃子、長屋 匡信、横澤 秀一、田中 榮司
丸子中央総合病院 内科
沖山 葉子
信州大学 医学部 附属病院 内視鏡センター
高橋 俊晴、新倉 則和

症例は40歳代の男性。3年前の上部消化管内視鏡検査にて、胸部食道に小型の血管腫を指摘され、経過観察の予定になった。本年の内視鏡検査で、この食道病変は3cm大に増大していたため、精査加療目的に当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査では、切歯から29cmに約1/3周を占める、暗紫色の柔らかい粘膜下病変を認めた。超音波内視鏡検査では、一部に血管様構造を伴うやや高エコーな腫瘤で、大部分は粘膜下層に存在するが、一部は壁外にも連続していた。海綿状血管腫と診断したが、病変に増大傾向がある事と、病変の表面に発赤所見を認めた事から出血の危険性があると判断し、治療を行う方針とした。造影剤と混合した5%エタノールアミンを透視下で病変に局注したところ、一部に血管様構造が描出されたが硬化剤の停滞は良好であった。術後は軽度の胸痛を認めたが、特に問題となる偶発症は認めず、3日後の内視鏡観察で病変は退縮していた。 食道血管腫はまれな疾患であるが、嚥下障害や出血の原因となる場合には治療の対象となる。治療法には外科的切除と内視鏡的治療があるが、安全性が担保されるなら、侵襲の少ない内視鏡的治療が行われるべきである。内視鏡的治療には、主に粘膜切除術と硬化療法がある。この症例では病変の一部が食道壁外に連続していると考えられたため、粘膜切除術による出血・穿孔のリスクも考えて硬化療法を選択した。本症例ではエタノールアミンを用いた硬化療法を選択し、良好な結果を得た。治療法の選択方法等につき、文献的考察を加えて報告する。