日本消化器内視鏡学会甲信越支部

28.人間ドックの上部消化管内視鏡スクリーニングに係る合併症の検討

山梨県厚生連健康管理センター
小林 美有貴、北橋 敦子、今村 直樹、高山 一郎、渡辺 一晃、高相 和彦、依田 芳起

【背景】人間ドックの検査では、受診者への配慮等から、一般診療の現場以上にEGDにおける合併症に留意する必要がある。

【対象】当センターで過去5年間に人間ドックで実施した、覚醒下でのEGD(計87859 例)において、発症した合併症について検討した。内訳は、一過性全健忘(TGA)11 例(0.013 %)、キシロカイン・ショック5 例(0.005 %)、顎関節脱臼2 例(0.002 %)、耳下腺腫脹2 例(0.002 %)、咽頭損傷による縦隔気腫1 例(0.001 %)等である。症例の背景因子と合併症の程度、診療経過等について検討した。

【結果】スクリーニングEGDに続発する合併症は、いずれも軽症であった。顎関節脱臼の2 例は整復術を要したが、外来診療のみで軽快した。縦隔気腫の1 例は、入院診療が必要だったが保存的に改善し、他の症例はいずれも積極的な治療を必要としなかった。TGAでは、脂質異常症の既往をもつ者が多かった。

【考察】検討した合併症の経過は、むしろ軽症のものが多かったが、スクリーニングEGDにおける発症の観点等から、十分な配慮に基づく取扱いが必要と考えられた。文献的考察を加えて、報告する。