日本消化器内視鏡学会甲信越支部

38.院における大腸癌発見転機の検討 −胃癌との比較−

飯田病院 内科
原 栄志

【背景】大腸癌は悪性新生物の中で死因の3位(女性は1位)であり、増加している癌である。胃癌と同様、大腸癌もほとんどが内視鏡検査にて発見される。

【目的】当院での大腸癌発見例の内視鏡検査受診動機を明らかにすることにより、早期発見につながる方法を検討する。

【方法】2006年から2008年までの間に発見・指摘された大腸癌127名を対象とした。同期間中の胃癌症例は96例であった。内視鏡検査オーダー時の動機を診療記録から検証した。

【結果】大腸癌のうち、早期癌の占める割合は43.3%であり、胃癌で早期癌の占める割合(52.1%)と比べ低かった。大腸内視鏡検査受診動機では便潜血反応陽性者が多く、有症状で発見された大腸癌と比べ、便潜血陽性にて発見された癌はリンパ節転移の無いものが多かった。医師別にみると、主治医が消化器内科医である場合に発見された大腸癌で進行度が低い傾向があった。

【考察】胃癌と比較して大腸癌に占める早期癌の割合は低い。内視鏡検査受診のきっかけとして便潜血反応検査は有用であるが、消化器医だけでなく、ひろく利用されるべき検査と考えられる。