日本消化器内視鏡学会甲信越支部

85.当センターにおける経鼻内視鏡の臨床使用の現状

独立行政法人 労働者健康福祉機構 新潟労災病院 内視鏡診療センター
森 健次、麻植ホルム 正之、前川 智、太幡 敬洋、合志 聡

 【背景・目的】当院では2006年10月よりオリンパス社製GIF-N260を導入し、現在はスクリーニング目的には経鼻内視鏡を積極的に使用している。今日では全国的に経鼻内視鏡が急速に普及してきているが、経口内視鏡と比較すると画質や吸引能・送水能が劣ることや、操作性が若干異なることは否めない。その診断の精度の面で疑問視する意見もある。【対象・方法】2007年9月〜2008年8月に当センターで経鼻法で上部消化管内視鏡検査を行った1576名(男性866名、女性710名、平均年齢65.2才)を対象とした。同時期の経口法787名(男性554名、女性233名、平均年齢69.9才)を対照群として、食道癌 胃癌の発見率について検討を行った。経鼻内視鏡はGIF-N260、経口内視鏡はXQ260を使用した。【結果】胃癌は経鼻法で46例(早期癌21例、進行癌25例)、紹介等で既に内視鏡診断がついていた症例を除くと27例(早期癌18例(1.14.%)、進行癌9例(0.57%))であった。経口法では90例(早期癌52例、進行癌38例)、当科で発見された症例は17例(早期癌12例(1.52.%)、進行癌5例(0.64%))であった。食道癌は経鼻法で14例(表在型食道癌9例、進行癌4例)、当科で発見された症例は11例(表在型食道癌9例(0.57%)、進行癌1例(0.06%))であった。経口法では14例(表在型食道癌8例、進行癌6例)、当科で発見された症例は3例(表在型食道癌2例(0.25%)、進行癌1例(0.13%))であった。さらに有症状者と検診異常者を除外すると、胃癌は経鼻法で11例(早期癌10例(0.63%)、進行癌1例(0.06%))、経口法で6例(早期癌5例(0.64%)、進行癌1例(0.13%))であった。食道癌では経鼻法で7例(早期癌7例(0.44%)、進行癌0例)、経口法で3例(早期癌2例(0.25%)、進行癌1例(0.13%))であった。【結論】経鼻法を選択する患者は経口法を選択する患者と比べて有意に年齢が若かった。特に女性は全体の75.3%が経鼻法を選択しており(男性では約58.2%)、“苦痛の少ない内視鏡検査”に一定の需要があることが示唆された。食道癌及び胃癌の発見率には有意差は認められなかった。細経スコープはその特性を充分理解して使用すれば、非常に有用な検査法であると考える。