日本消化器内視鏡学会甲信越支部

46. 胃inflammatory fibroid polypの1例

山梨県立中央病院 消化器内科
鈴木 洋司、小嶋 裕一郎、古谷 英人、辰巳 明久、三澤 綾子、望月 仁、廣瀬 雄一、高相 和彦
山梨県立中央病院 外科
三井 照夫
山梨県立中央病院 病理
小山 敏雄

症例は70歳男性、高血圧症、高脂血症、高尿酸血症にて近医通院中、喫煙歴50年。平成18年3月頃より、食後に心窩部痛が出現し、時に嘔吐するようになった。近医で上部消化管内視鏡検査を受け、H2-blocker, PPIなどの内服処方を受けていたが、改善せず、そのまま症状は続いた。体重も7月までに10kg減少したため、当科初診となった。上部消化管内視鏡検査を施行したところ、胃大彎は色調不良で青紫色を呈しており、発赤、糜爛を認めた。十二指腸球後部から下降脚乳頭部対側にかけて、縦走傾向のある、発赤、糜爛、浮腫状粘膜を認めた。症状、病変の分布と胃粘膜色調不良から虚血などの血行動態の異常を考えた。腹部CTでは腹腔動脈起始部に石灰化を認めた。腹部アンギーナ、虚血性胃炎の診断確定、治療のため腹部血管造影を行った。腹腔動脈と上腸間膜動脈は合流して、大動脈より分岐していた。起始部では石灰化により、高度狭窄していた。経カテーテル的に血管形成術を施行した。術後より、食後の心窩部痛は消失し、経過観察で施行した上部消化管内視鏡検査では上述の所見はほぼ消失していた。壊死性の病態に進展前に診断し、非侵襲的に治療しえた症例であり、貴重と思われたため報告する。