日本消化器内視鏡学会甲信越支部

001 化学放射線療法により組織学的CRが得られた進行食道癌の1切除例

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器・一般外科分野
牧野 成人、神田 達夫、小杉 伸一、羽入 隆晃、番場 竹生、坂本 薫、矢島 和人、田邊 匡、大橋 学、畠山 勝義
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍放射線医学
笹本 龍太

 【はじめに】近年、切除可能な進行食道癌に対する初回治療として化学放射線療法を選択する症例が増える傾向にある。それに伴い腫瘍遺残や局所再発を生じ、サルベージ手術を行う症例が多くなってきている。今回われわれは高度進行食道癌に対し、低栄養による全身状態の悪化を理由に根治的化学放射線療法を選択するもPRであったため栄養状態改善後に根治的手術を施行し、組織学的CRが得られた症例を報告する。【症例】 69歳、男性。高度の体重減少と進行する嚥下困難を主訴に近医を受診。上部内視鏡検査にて胸部上部食道に1型の隆起性病変を認め、生検にて低分化型扁平上皮癌と診断された。CT上、反回神経リンパ節、気管前リンパ節、噴門リンパ節への転移が疑われ、T3N3M0 Stage IIIと診断された。原因不明の39度の発熱、白血球数17,550 /μl、CRP 20.3 mg/dlと高度の炎症所見を認めること、およびP.S 3の著明な活動性の低下を認めることから根治的化学放射線療法が選択された。単独照射で開始し、炎症所見および経管栄養による栄養状態改善後にFP療法を併用した。総線量60Gyの時点で縮小率85%とPRであった。体重の増加とP.Sの改善を得たことから、化学放射線療法終了後、第32病日にサルベージ手術として右開胸開腹による食道亜全摘術を施行した。1秒量1420ml、1秒率59%と閉塞性換気障害を認めることから、胸腹部二領域の郭清と術前のPETで陽性と指摘された左鎖骨上リンパ節のサンプリングを併施した。切除後肉眼診断はT2N3M0 Stage IIIであったが、組織学的には癌の遺残はなく、効果判定はGrade3であった。術後経過は良好で合併症もなく術後31日目に退院した。【結語】高度進行食道癌の治療戦略をたてる上で示唆に富む症例と思い報告した。