サンワンリバーでの14日間  Part.7

     
     目の前でゆっくり、のんびりと繰り返されるライズ・・・
     釣ることができないことよりも、あきらめることができないことのほうがつらい


サンワンリバーともお別れ

午後は、約束のニューヨークから来た日本人と釣りをした。
今日までサンワンリバーを釣りまくって見つけた、秘密のポイントへ案内してあげた。
そこは何の変哲もない広い瀬なのに、
流れがちょうど集まるようで、数十匹ほどの大きな魚が固まっている。
しかも虫の羽化に合わせてバカみたいにライズするので、
バカリフルと勝手に名前をつけた。
浅い瀬に入っている魚達は、ぼんやりと黒い陰を浮き上がらせ、
パコっと音が鳴るかのように、とがった口先を水面に出してライズする。
見ているだけでも血が騒ぎ、アドレナリンは大噴火状態。
バカリフルはかなり下流のポイントにあり、釣り人を見ることは滅多になく、
魚も憎たらしいほど賢くはなっていないので、流すフライへの反応はいい。
おかげで3人とも大満足の釣りになった。




     楽しい時間と言うのは、あっという間に終わってしまう・・・

エイブスに行ってみると、週末とあって人でにぎわっている。
別れを告げようと来てみたものの、ティムもランディも大忙しの様子。
レストランの片隅でぼけーっとしてると、日本人の釣り人に再び会い、
今日の釣りにとても満足したようで、夕飯をおごってもらった。
釣りの話や同時テロの話であっという間に時間は過ぎ、
お客さんもまばらになって、ティムやランディともゆっくりお酒を飲むことができた。
車の中で広兄と2人で質素に飲むビールもいいけど、
気のあった仲間とにぎやかに過ごす最後の晩餐は、
今日までの出来事がスローモーションのように頭の中に浮かび上がり、
思い出に酔いながら、仲間と笑った。
ここサンワンリバーにはただ釣りがしたいだけのために来たのに、
タイヤのパンクがティムと私を結びつけてくれ、
いつのまにか話がはずみ、
帽子にはライフルの穴が開き、コヨーテを前にして震え、引っ越しを手伝い、
空まで飛んでしまい、いろんな人に巡り会えた。
もちろん釣りも魚も最高だった。
明日の晩にはここにいない寂しさと、今日までやった達成感に、
複雑な思いを胸にゆっくりと時間が過ぎていった。
閉店と同時にみんなで写真を撮りエイブスを後にした。


    
          サンワンリバーを流れていたのは、「最高の時間」だった


いつもの駐車場に車を停め、寝る仕度をして日記を書いた。
10日前この駐車場に来たときは、でっかいお月様がちょうど地平線から顔を出し、
日が経つにつれそれは徐々に北へ移動し、今では満点の星空が輝いている。
私を試しているかのように次から次にいろんなことが起こり、
その一つ一つを体全体で受け止め、感じてきた。
ここサンワンリバーに着いたあのときの気持は、
今となっては、これ以上のものはないという満足感と、
すべてをやり遂げたという達成感に変わった。
残すは無事に日本に帰るだけだ。
寝袋に吸い込まれるかのように眠りについた。

  
          お金がないときはこんな生活

  
     お金があるときはビールも箱で飲める


おまけ

サンワンからの長い道のりも難なくクリアして、
11月12日夕方、無事デンバー空港の近くのモーテルに到着した。
あとはレンタカーを戻し、モーテルで帰る仕度をして、
明日の朝寝坊しないように飛行機に乗り込むだけだ。
もう終わったも同然、余裕ちょいちょいだった。
モーテルの駐車場で鼻歌混じりに荷物を下ろしながら、
明日の時間を確認してみようと、飛行機のチケットをチェックしてみると。
Departure  12 November 7:00
???
えーっと、出発の時刻は。
12 November 7:00
???
あれ?
12日 朝7時出発?
今日は11月12日今は午後4時???

やっちゃっいましたーーーー!
明日の朝だと思っていた飛行機は、今日の朝でした。
さすがアメリカ、そう簡単に旅を終わらせてくれない。
急いでノースウエスト航空のカウンターに向かった。
頭の中では100ドル札が羽ばたいている。
高くつくかなぁ?
おそるおそるカウンターのおばさんに話してみると、
「何で間違えちゃうの!」と、ただでさえ大きな目をさらにまん丸くして、
白目をぎょろぎょろさせて言われた。
パソコンをにらんで、何とかしてくれそうだけど、
パソコンを打つ手がどう見てもあきれている。
私の心配はお金だけで、祈るように答えを待った。
数分後、差し出されたチケットは、明日の朝一日本に向かう飛行機で、
無事日本に帰れることがわかった。
問題は値段だ。
おばさんの説明のあと、おそるおそる「お金は?」と聞いてみると、
「二度と間違えないでね」と再び目を丸くした。

アイラブノースウエスト!!!
ノースウエスト最高!!!
チケットは無事再発行され、
レンタカーのほうも見逃してもらい、
すべてがうまくいってくれ、結局アメリカ生活を1日得してしまった。
ここまで上手く行ってくれると、帰りの飛行機が心配になってくる。
13日の飛行機は12日の朝ニューヨークで起きた飛行機の墜落のせいか、
それとも朝早いせいか、ガラガラで、
窓側の3席を一人で占領して、ゆっくりと横になって日本に帰ってくることが出来た。
家に戻って、白いご飯を噛みしめながらアメリカ生活を懐かしんだ。
 
おわり

  
   サンワンリバーに飛行機が落ちなくてよかった

2001年12月1日 実家川崎より
明日はいよいよニュージーランドに出発だ!

Topへ   fishingへ   ←Part6