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◆第47章 外国人登録に代わる新たな制度について◆

みなさん、こんにちは。行政書士の高坂大樹です。今回は現行の外国人登録に代わる新たな制度についてお話します。日本に90日以上滞在する外国人は、外出時には外国人登録証の携帯が義務付けられています。外国人登録制度は日本で暮らす外国人の方にとって一番身近とも言える制度ですが、外国人登録制度の廃止とそれに代わる新たな制度の新設が平成21年度中にも予定されています。

まず、現行の法制度を簡単に説明しましょう。現行の法制度では、日本に滞在する外国人は、入管の上陸審査、在留資格の変更・更新等の手続を経て適法に滞在するとともに、90日以上滞在する場合は、居住する市町村に外国人登録をする必要があります。登録事項は、氏名・生年月日・国籍・職業・在留資格・在留期間・住居所・身分事項などで、申請から2週間程度で外国人登録証明書が交付されます。外国人登録を行なえば、住所証明書(登録原票記載事項証明書)や印鑑証明書を発行してもらうことが可能になり、国民健康保険や国民年金に加入することも可能になります。

この現行の外国人登録制度は、日本人を対象とする住民基本台帳制度とは別システムになっているため、システムの違いから生じる不備が生じることがある上、本人からの申請のみに基づくため、登録内容の正確さが担保されていないことなどの問題があり、法務大臣が外国人の在留状況を正確に把握するためには外国人の在留に関する情報体制の再構築が必要であるということから、今回、抜本的に見直されることとなりました。現在、有識者による懇談会や政策提言が行なわれている段階で、法案が提出されるまでにはまだ時間があり、実際に法案になるまでには紆余曲折があると思われますが、少しずつ内容が明らかになってきましたので、現在わかっていることを紹介します。

新たな在留管理制度では、現行の外国人登録制度を廃止し、日本に滞在する外国人の在留情報を法務大臣が一元的・継続的に把握する制度を構築して、不法滞在・不法就労・外国人犯罪対策に活用するとともに、適法に在留する外国人にとってはより安定的に日本で活動しやすく利便性に優れた方策を講じるものとされています。以下、いくつかの項目に分けて、新たな在留管理制度の概要を紹介しましょう。

(1)制度の対象者は、日本に中長期間在留する外国人として、「短期滞在」者(寄港地上陸者や特例上陸許可者などを含む)は対象外とする。また、過去の経緯により特別永住者、儀礼的観点から「外交」と「公用」の在留資格で在留する者も対象外とする。外国人登録においては不法滞在者も対象者としていたが、新たな制度においては対象外とし、適法に滞在するもののみを対象とする。

(2)届出事項は、在留資格ごとに決定されるが、基本的なものとして、身分事項(氏名・生年月日・性別・国籍)、居住地、所属機関等(学校・会社等)の名称及び所在地などが予定されている。

(3)日本に在留する外国人には、上陸許可・在留期間の更新・変更等の許可を受けた際に、ICチップが登載された在留カード(仮称)が交付される。在留カードの有効期限は、原則として在留期限と一致するものとし、在留期間中に必要事項に変更が生じた場合は法務大臣に届け出るものとする(ただし、居住地については、市区町村の長を経由して法務大臣に届け出る)。届出においては、外国人の負担を考慮して、インターネットを利用した届出も可能にする。

(4)外国人の留学・就学・研修先等の所属機関から所属する外国人に関する情報の提供を受ける制度を創設するとともに、関係行政機関において、それぞれの事務または業務の遂行に必要な限度で、外国人に関する情報を相互に照会・提供できる仕組みを整備する。そして、外国人本人が届け出た情報と、外国人の所属機関および関係行政機関から提供を受けた情報とを照合することで、情報の正確性を向上させる。必要があると認めるときは、職員に事実の調査をさせることもできるものとする。

(5)市町村においては、新たに外国人台帳制度(仮称)を創設し、住民基本台帳制度と連携した行政サービスの提供を行なう。法務大臣は、保有する情報のうち外国人台帳作成に必要な情報を市区町村に提供し、正確な台帳が作成されるよう協力するとともに、法務大臣側においても外国人の在留情報をより正確に把握することも可能となる。

(6)不法に滞在する外国人の抑止を図る一方で、適法に在留する外国人の利便性の向上に努める。具体的には、新たな制度の実施により、在留状況が正確に把握できるようになり、的確な在留管理を行なうことが可能となること等から、一定の在留資格については在留期間の上限を現行の3年から5年程度に引き上げる。また、再入国許可制度を見直し、許可を受けることなく一定期間内の再入国を可能とする。

現在のところ、以上のような制度が構想されています。

新たな制度は不法滞在者には現在より厳しい制度になりますが、在留特別許可が今後どうなるかということが気になるところです。在留特別許可は、オーバーステイや不法入国など正規の在留資格を持たない不法滞在者でも、日本人と結婚した場合などに特別に在留が許可されるものですが、最近では、人道的な配慮もあって、特別なものというより一種の制度的なものとして行政的にもシステム化されつつあり、日本人と不法滞在者の国際結婚カップルの選択肢の一つともなっています。

外国人登録は不法滞在者でも登録することができ、登録すれば身分証明にも利用できるので、在留特別許可を願いでる前提として、外国人登録を行なって婚姻届を提出するのが通常です。しかし、新たな制度では不法滞在者は登録の対象とならないとすれば、果たしてこれまでのように婚姻届がスムーズに受理されるのか、また婚姻届がスムーズに受理されないとすれば、在留特別許可は一体どのように運用されることになるのかという疑問が生じます。現実と法制度の間のズレが生じることが予想されますが、最終的にどのような法改正になるのか、今後の展開を見守って行きたいと思います。

平成20(2008)年5月1日

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