光 瀬  龍
               
 昔読んだ本の中で一番面白かった本は何だろう。
シャーロックホームズや怪盗ルパンは確実に面白かった。甲乙付け難いがガストン・ルルーの
黄色の部屋もよかった。その他題名は思い出せないが、名探偵の登場する本もいろいろ読ん
だ。(内容の一部だけがしっかり印象に残っている。)
 また、三銃士や鉄仮面などの冒険物や不思議な外国の物語なども良かった。
 
 SF物を初めて知ってのは「夕映え作戦」を読んだ時のような気がする。(子供向けに書き直し
た物である。)
 これは一人の中学生が突然戦国の世にタイムスリップして、忍者達の中に混じって活躍する
という奇想天外の物語である。現代の鍛えた体力を持ってすれば、当時の貧弱な食生活で育
った忍者達とも互角かそれ以上に渡り合える・・・という説も面白い。主人公がその優れた運動
能力を生かして縦横無尽に活躍、爽快なストーリーが展開する。

 この作者はいったい誰であったのか、ずっとわからなかった。ある時、小松左京や星新一の
本を読んでいた時に、ふと昔読んだこの「夕映え作戦」を思い出した。さっそく探してみたらなん
と「百億の昼と千億の夜」の光瀬龍ではないか。(この話は漫画(劇画?)で萩尾望が描いてい
た。壮大な宇宙と人間の謎に焦点をあてた力作である。)

 この作家は平家物語全8巻も書き上げている。

            
 寛永無明剣  時は寛永年間・・・・大阪夏の陣の戦が終わって19年、いまだ世情は定まらず、各地には
機会があれば討幕を企てる勢力があり、戦乱を望んでいた。
 松平伊豆の守の支配下、与力六波羅蜜(ろくはらみ) たすくは、反幕陰謀事件を追っている
さなか、柳生の差し向けた刺客に襲撃される。将軍指南役の柳生が、何故豊臣の残党に加わ
っているのか疑問であった。その後、町奉行などを狙う暗殺事件が相次いで起こった。たすくは
これらの事件の背景に、膨大な時の流れの果て、人類終焉のはるか未来から迫り来る恐るべ
きたくらみを知ったのだ・・・。
 史実にそいながら雄大なスケールで描く、時代SFの傑作長編。(解説から)
   う た
 歌麿さま参る
 SF短編が6編。
 ・関ヶ原始末     ・三浦縦横斎異聞    ・ペニシリン一六一一大江戸プラス 
 ・勝軍明王まいる  ・紺屋町御用聞異聞   ・歌麿さま参る
時局員がタイムマシンを使って、「歴史を変えようとする者達」と戦う。
何回読み直してみても面白い。
 歴史そぞろ歩き  光瀬龍が17の歴史の事実に再考を加えている。津軽が登場するのが嬉しい。主なものとし
 て次のようなものがある。
  ・「東日流外三郡誌」考 
  ・伊達政宗 ・まつろわぬ者どもの末裔
  ・空を飛ぶ新皇の首・平将門
  ・義経はどこへ消えた
  ・真田幸隆・真田忍者の宿命
  ・石川五右衛門・大盗賊にされた忍者の不覚
  ・鹿鳴館の女
 平家物語巻1  平清盛の父忠盛は、強大な武力と資力を背景に平安の貴族社会の中で次第に台頭してい
く。元服を終えたばかりの少年清盛も紫辰殿に現れ殿上人を脅かすもののけを対峙したり逞し
く成長していった。
 やがて激しく恋焦がれた美しい雅子と結婚し二人の息子をもうけた。だが、平穏の時は短く
雅子は病没し、清盛は深い悲しみに襲われた。壮大華麗な一門の攻防の物語を現代に再現
する「光瀬版平家」      (解説から)  
              巻2  1153年1月の雪の日、清盛の父忠盛が病没した。父の後を継いだ清盛は伊勢平氏の総帥
となり、この時36才の働き盛りであった。父の死後3年目、皇室内部・崇徳上皇と後白河天皇
との対立が激化し、各々の勢力に連なる摂関家、藤原氏も互いに争い、ついに保元の乱が起
こった。後白河側についた清盛は大勝し、その力は増大した。清盛の子、重盛はこの戦で18
才の初陣を飾った。歴史の流れは一大転換期を迎えようとししていた。(解説から) 
     巻3
 時代は移りつつあった。保元のらんに敗れた崇徳上皇や藤原頼長は失踪、都には血なまぐ
さい風が吹き荒れた。勝利した後白河天皇の側近・藤原信西は絶大な陰の実力者となった。
清盛と共に戦った源義朝は信西と対立、摂関家追い落としで一致していた院と信西との間に
も争いが起こり、清盛は人生の重大な岐路に立たされた。
 その後義朝は信西を討ち取り、清盛は義朝討伐に出陣した。世に言う平治の乱であった。
                                          (解説から)  
巻4
 平家一門の栄耀栄華は続いていた。一門の頂点に立つ清盛は、花に遊ぶ蝶のように美しく
舞い唄う、祗王・祗女姉妹に耽溺していた。その頃東山の深い山あいにある俊寛僧都の鹿が
谷の山荘では、後白河法皇を中心にして平家覆滅の陰謀がめぐらされていた。
 しかし、企ては清盛に伝わり、加わった者は次々と捕らえられ処刑された。
 だが、清盛の心は晴れなかった。反平家勢力の大本である後白河法皇をおさえこまなくて
は意味がないのだ。法皇との対立は深まっていった。           (解説から)  
巻5
  激しい宇治川の戦いで源頼政は敗れ、後白河の第二皇子以仁王の平家覆滅計画は潰え
去った。平家一門の力はみなぎり、清盛は海外との交易を盛んにしたいという夢を実現させる
ため、良港のある福原遷都案を打ち出した。京の公卿たちの不安をよそに新都を造槌音が響
いた。
 一方、平治の乱後、伊豆に流されていた源頼朝は、土地の実力者・北条時政の娘・政子と
結婚した。以仁王の敗北により頼朝の周辺は慌ただしくなり、ついに反平氏の兵をあげた。
 平家一門の運命は?歴史を戦う男たちの大河ロマン!         (解説から)  
巻6
 清盛は、平維盛を総大将とした頼朝追討軍を送り、両軍は富士川を挟んで布陣。士気の低
い平家側は水鳥の羽音を敵襲かと思い、算を乱して潰走した。鎌倉への帰路、頼朝は奥州平
泉から駆けつけた義経と合流し大いに喜んだ。このことを知った都の清盛は、平泉の秀衝に同
盟を結びたいと書簡を送った。秀衝は苦脳した。今後の奥州の命運にかかわる重大事だった。
 その後、清盛は近江源氏の勢力を掃討し、勢いにのり奈良の東大寺、興福寺などの寺院を
焼き討ちした。だが、ゴッドファーザー清盛は大いなる歴史的運命を終えようとしていた。
                                           (解説から)  
巻7
  治承5年、栄華を誇った平家の時代は終わろうとしていた。高熱を出して病床に就いた清盛
は遂に息を引きとり、その後、三男の宗盛が平氏の総帥となり家督を継いだ。平氏一族の動揺
は大きかった。一方源行家は以仁王の令旨を奉戴し、知盛が率いる平家軍と尾張川で対決す
るが惨敗してしまう。木曽に逃げた行家は土地の武士に反平家の思想を吹き込み、木曽に拠を
構える義仲は京都進攻の機を狙っていた。そして、源平の戦いは倶梨伽羅峠で一大決戦を迎
えようとしていた。天下をとるのは誰か!(解説から)  
巻8
  源平の戦いは、もはや平家のものではなかった。
木曽義仲の進攻で京を離れ、建礼門院や幼い安徳帝を擁した平家勢は四国に逃れ、福原の
狭隘の地に鉄壁の陣を築いた。だが、源義経の率いる強大な軍勢に蹴散らされ、四国屋島の
陣へと追いやられてしまった。この戦で平敦盛や薩摩守忠度らが戦死し、平家の地下には著し
く衰える。そして、ついに壇ノ浦で最期の決戦を迎えた。
 平家一門の華麗なる盛衰を描いた歴史大河ロマン「平家物語」全八巻ここに完結!
                                           (解説から)  

  
   
眉 村  卓
 
 
  古本屋で「時空の旅人」を見つけて買った。軽い気分の時にでも読めればと
思ったのである。
 内容は、未来人のために一緒にタイムマシンで過去に移動してしまった中
学生や先生が体験する出来事をスリルとサスペンスを織り込んだものである。
 確かに一見深く考えずに読めるようにも思えるが、読んでいるうちにふと考
えさせられてしまうこともある。それは文明とはなんだろうということである。こ
れが昭和56年に書かれているというのも凄い。

   眉村卓はSF作家ということで中・高校生向けのおとぎ話ばかり書いている
んだろう・・・と思われがちだが、結構大人向けの本も書いている。       

            
 異郷変化
  
  (角川文庫)
 7つの短編集だが、テーマは共通している。
主人公がそれぞれ旅先で出会う女が描かれる。それは時には過去の恋人
の幻影であったり、自然の精霊であったり・・・・・。
中年になった主人公が、切実に自分の年齢を思い知らされる話・・・・・・・
若い時の力とひた向きさを蘇らせてくれる話・・・・。
  魔性の町 
  駅の近くの商店街と新興地。そこに暮らす人々の周辺におこる奇妙な出
来事。ほろにがくちょっと恐い短編集。
 枯れた時間
 独自の未来社会の中で、苦悩し、絶望し、闘う人々。
短編集の中で印象に残るのは表題作の「枯れた時間」である。
柔道部にいた不思議な男野間。ニセ学生の彼がもっとも学生らしかったと懐
古する主人公に共感を覚えた。
 それぞれの曲り角  平凡な中年サラリーマンの前に登場する不思議な現象。
「ビルにいた女」に登場する年をとらない女と主人公が特に印象に残った。
世の流れから取り残されるとうのは重大で決定的なことではない・・・・という
呟きが聞こえてきそうである。
 時空の旅人
(角川文庫)
 映画化された眉村卓の代表作。

  

   

赤 江  瀑
 
 
 この作家についてはよくわからないことばかりである。
 歴史小説を片端から読破しようと思っていた頃に買った本と、立ち読みした本
の二冊しかわからないが、独特の世界が描かれていた。
(この頃は書店で目についた本がちょっとでも面白そうであれば、とりあえず買っ
 てみる・・・・という時期であった。)
 
 1933年生まれであるから若くはないのだが、この年代でこんな世界を書ける
というのも凄い。天文と幻想と・・・・・・現実離れしている。
「金環食の影飾り」というのが直木賞候補になったというが、その後の作品が泉
鏡花賞を受けているところをみると、幽玄の世界に入り込んだのだろうか。
         


 巨門星   「題名は、夜の王宮楼門高くに仰ぐ巨星を意味するが、表向きの歴史には登場し
 ない平安京・夜の王朝支配者を描き配したいと思っている。(あとがきより)

 時の最高官僚の位にのぼり、権力策謀のうず華やかな宮廷政界にあって、失脚、
 流亡の生涯を終え、果ては悪霊神と化す伝説を持つ官人菅原道真の青春を描く
 異色長篇。 (解説より)

      
   
  
     
 谷 恒生(たにこうせい)
 
 
  1945年 東京生まれ。
       鳥羽商船高校卒業後、一等航海士として世界を巡る。 
       その経験を生かした海洋冒険小説「喜望峰」でデビュー。
       冒険小説の旗手となる。
       さらに歴史小説「那須与一」「毛利元就」などで注目され
       る。他にベストセラー多数。
            
陰陽宮5

安倍晴明












 (小学館文庫)

これはシリーズものらしい。・・・・・・・・・
谷恒生の名前は本屋で時々見かけるので、中古本を買ってみた。
この本は面白い。
藤原道長を先駆的視点と行動力を持った人物であり、貴族社会の変革者
であると好意的な視点で捉えているのが興味を引く。
道長の長子小太郎、獅子王丸、風の法師、小観音の活躍で太宰府の港で
大船5艘を手に入れるくだりも痛快。

【カバーの言葉から】
 見よ。
 朦朧たる霧雨の深みから、背丈が十尺はあろうかという十二神将が鉾や
 槍、熊 手、刺股などの武器をふりかざして襲いかかってくるではないか。
 ・・・・・
 野鼠のような小悪党どもが逃げ去ると、十二神将は霧の深みに融け込む
 ように ように消えていった。
 巨大な陰陽宮の四角錐の頂部の五芒星の護符に、立烏帽子をかぶった
 安倍晴明が座していた。


 
 

  
     

 仁木 英之
 
 
1973年 大阪生まれ 信州大学人文学部卒業
2006年 「夕日の梨」で歴史群像大賞最優秀賞受賞。
     「僕僕先生」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。

  著作に「僕僕先生シリーズ」「千里伝シリーズ」
      「五代史シリーズ」などがある。

            
まほろばの王たち 図書館の新刊本紹介。内容紹介を読んで申し込んでみたが、何ページか読
んで離脱・・。
歴史ものを書くのであれば、それなりの文体が必要だと思う。古代であれば
特にそうだ。時代に忠実に合わせれば、とても読みづらい言葉遣いになって
しまうこともあるだろうが、あまりに平易では時代を感じない。現代の空想・・
で終わってしまう。もともとそのような読者層を狙ったのだろうが・・・。
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内容紹介から
家を焼かれた物部の姫・広足(ひろたり)は、験者の集団である賀茂の一族の
長・大蔵(おおくら)に弟子入りすることになった。
蘇我氏への反乱を企む鎌足に雇われた大蔵は、蘇我の神を討ち滅ぼし、宮
中に残っていた妖を殲滅していく。
一方的に相手を痛めつける大蔵を見て、妖に治癒の呪を唱えてしまう広足。
形勢が逆転し瀕死の大蔵が助けを求めたのは、賀茂の行者・小角(おづぬ)
だった。青い光をまとい現れた青年は、広足に問う。
「娘よ。なぜ古き者を助けた」
答えられない広足に対し、小角は大蔵を助けてほしいなら、広足自身を捧げろ
と言う。広足が頷いたのを見て、小角は天竺の術を使って妖と対話し、飛鳥の
宮から離れるよう願った。
そして妖が退き、宮殿に鎌足と中大兄王子が駆け込んできたとき、さきほどま
でいたはずの小角の姿は消えていた。
そして5年後、広足のもとに一本の木簡が届く。
「約束の時は至れり」
かくして賀茂役小角と物部の末裔・広足、そして山の神々との冒険が始まる。

 

 
     
 

 坂本 司
 
 
1969年 東京都生まれ。
2006年 「夕日の梨」で歴史群像大賞最優秀賞受賞。
     「僕僕先生」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。

  著作に「僕僕先生シリーズ」「千里伝シリーズ」
      「五代史シリーズ」などがある。

            
ホリデー・イン

★★★


 目立つような出来事、事件などが起こったりするわけではない。
 ホストクラブを経営しているオカマのジャスミンと周囲の男たちに起こる様々な出来事
 が淡々と描かれる感じ。それでいて日常的でもない・・・。
 2話「大東の彼女」は深い。
 他の作品も読んでみたいと思わせる一冊。
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内容紹介から
 「初めまして、お父さん」。
 元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の登場で一変! 思いも
 よらず突然現れた息子と暮らすことになった大和は、宅配便会社「ハニー・ビー・エク
 スプレス」のドライバーに転身するが……荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの
 連続。宅急便会社の仲間や、ホストクラブの経営者で女装のジャスミン、ナンバーワン
 ホストの雪夜らをも巻き込んでの大騒動を描いた『ワーキング・ホリデー』が刊行された
 のは2007年。

 2012年にはその後の大和と進の物語を書いた『ウィンター・ホリデー』が、同年には
 『ワーキング・ホリデー』が映画化され、人気となっている「ホリデー」シリーズから誕生
 した、初のスピンアウト短編集が本作『ホリデー・イン』である。

 今回は親子の物語ではなく、彼らを取り巻く愛すべき人々のもうひとつの物語。
 ジャスミン、雪夜、進らそれぞれを主人公にした6編が収録された。

01「ジャスミンの部屋」 …… クラブ経営者が拾った謎の中年男の正体は?
02「大東の彼女」 …… お気楽フリーターの大東の家族には実は重い過去があった
03「雪夜の朝」 …… 完璧すぎるホストの雪夜にだってムカつく相手はいるんだ!
04「ナナの好きなくちびる」 …… お嬢様ナナがクラブ・ジャスミンにはまった理由
05「前へ、進」 …… まだ見ぬ父を探し当てた小学生の進の目の前には――
06「ジャスミンの残像」 …… ヤンキーだった大和とジャスミンの出逢いの瞬間

どの作品も登場人物たちの過去の秘密を明かしつつ、ハートウォーミングな結末は読者
を暖かな気持にしてくれる。『和菓子のアン』で大ブレイク中の坂木さんの、さらなる魅力
を惹き出すお洒落な作品集だ。 


 

 
     
 

 百瀬 しのぶ
 
 
1967年 東京都生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒
     主なノベライズ作品に
        「LIMIT OF LOVE 海え猿」
       「僕の、世界の中心は、君だ。」
       「菜緒子」  「ラスト・フレンズ」 「おくりびと」
       「小説 イキガミ」などがある。
            
K-20 

怪人二十面相・伝

★★★


久々に読んだ痛快無類の傑作。
昔、南洋一郎訳の「怪盗ルパン」を読んで、その面白さに引きずり込まれ時間を
忘れて読みふけったが、その時の胸躍る気分を彷彿とさせられた。
原作はもともと江戸川乱歩であるが、北村想がサーカスの天才を二十面相に仕
立てて新しく本を書いた。百瀬しのぶは、この北村想の本を原作として、その続
編のような形で二代目・怪人二十面相の誕生を描いている。
とにかく面白い。

「怪盗ルパン」はモーリス・ルブランの原作より、南洋一郎訳の本が数段面白い。
「怪人二十面相」も江戸川乱歩の原作より、北村想や百瀬しのぶの本が面白い。

映画化もされたようだがまだDVDを見ていない。
謎の人物、変幻自在、神出鬼没・・・。
大人が読んでも面白い、快刀乱麻の活躍を描いてくれた百瀬しのぶに拍手・・。
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内容紹介から
 第二次世界大戦を回避した日本―その中心・帝都は極端な格差社会となり、
 富は一部の特権階級に集中していた。そんな富裕層のみを標的に、美術や
 骨董品を魔法のような手口で盗む怪人二十面相が現れ世間を騒がせている。
 人は彼を「K‐20」と呼ぶ―。
 「違う、俺は二十面相じゃないって!」謎の紳士に騙され、K‐20に仕立て上げ
 られたサーカス団の曲芸師・遠藤平吉は汚名を晴らすため、婚約者の羽柴葉
 子をK‐20に狙われた名探偵・明智小五郎とともに、K‐20との闘いに挑む!
 映画界の常識を超えたアクション大作を完全ノベライズ。
 果たして二十面相の正体は。 

BALLAD 

名もなき恋の歌

★★★

映画化された脚本を小説に書き直している。
タイムトラベルもので、少年と家族が(父母は後でタイムスリップ)戦国時代に
行き、活躍するというもの。
武士の恋、現代の少年の夫婦の問題も絡めて面白く切ない物語が展開する。
深く考えずに読めるのが何よりいい・・・。
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内容紹介から
映画「BALLAD 名もなき恋の歌」(監督・脚本・VFX/山崎貴)の脚本をもとに、
百瀬しのぶが書き下ろしたノベライズ作品。
この映画はもともと、アニメ映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大
合戦』が原作。、原作に対し、井尻・廉姫サイドから描いているのが特徴。

小学校に登校する途中、“川上の大クヌギ”と呼ばれる巨木の下で、真一の視界
は急に揺らぎ、気づいたときには1574年、そこは戦国の世になっていた。
春日の国の侍・又兵衛の命を偶然救った真一は、又兵衛と廉姫が叶わぬ恋心を
互いに抱いていることを知る。

現代では真一の両親が、我が子のタイムスリップに動転しながらも戦国時代に飛
び、真一を迎えに行こうとしていた。
一方、廉姫はその地を治める大名・高虎に婚姻を申し込まれ、了承せざるをえない
状況にあった。
戦乱の世から時空を超え、小学生とその家族に届いた、名もなき恋と感涙の物語。

  

 
     
 

 藤谷 治
 
 
1963年 東京都出身。日本大学藝術学部映画学科卒業。
      会社員を経て、書店経営。
2003年 「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」でデビュー。
2010年 「船に乗れ!」が本屋大賞7位となる。
      「世界でいちばん美しい」「花のようする」などが
      ある。
            
みんなの少年探偵団

全員少年探偵団

★★★


これは文句なしに面白い。
明智小五郎、少年探偵団、怪人二十面相。
この世界にどっぷり浸れる傑作。
少年向けに描かれているので、文も平明でどんどん読める。
一度に読んでしまうのがもったいないくらいである。
江戸川乱歩生誕120年記念オマージュ第3弾! 小路幸也「少年探偵」
先に読んだ。そちらはサスペンス、謎解きの面白さには事欠かないが、
ちょっと「品」がない。
それに比べると、こちらは青少年向けにしっかりとした語り口である。
明智を慕う小林少年、少年たちの結束、正義感・・・。たくさんの子ども達
に読んでほしい秀作である。
謎の男・カクイ、宝石を集めて首飾りなどを作る仕事をしている吉田元基
君のお父さん、元基君とお母さんを狙う二十面相。
誘拐された元基君は二十面相のアジト「へんぷく湯」に連れ込まれる。
そこは地下の要塞・・・手に汗を握る展開が続く・・不気味さも漂わせて。
江戸川乱歩の怪人二十面相は、単純な書き方でないので、この藤谷治
の描く「全員少年探偵団」の方が、数段良く出来ているかもしれない。

以前に読んだ百瀬しのぶ「怪人二十面相・伝」
        北村 想「怪人二十面相・伝 完全版」
   この二冊も最高傑作であったが、この本は勝るとも劣らない・・・。
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内容紹介から
 灰色の紳士カクイ。呪われた美しい首飾り。われらの少年探偵団。
 藤谷治が描く江戸川乱歩生誕120年記念オマージュ第二弾登場! 

 あのとき、“彼ら”に憧れた全ての大人たちに―懐かしくて新しい!
 立ちのぼる空気、怪しげな匂い、全ての質感をそのままに、藤谷治が
 「少年探偵団」を現代に甦らせる!