月の堕ちる夜
*おまけ*
約束の3日後、エドワードを迎えに1人の男が現れた。
だが、エドワードはこの教会に残った。
理由は勿論・・・
「エド、今日は天気が良いし外でお茶にしようか」
「ふざけんな。ドラキュラに向かって何を言ってやがる!」
「そうは言うけど君の髪の輝きは太陽の下に立つと一層美しいのだよ」
「アホらしい。俺はごめんだね」
「残念だな。今日はステラさんがクッキーを焼いてきてくれると言うのだが」
業とらしく溜め息を吐くロイにエドワードはピクッと反応を見せてソファから上半身を跳ね上げさせた。
そんな態度にロイは笑ってしまう。
このドラキュラは甘い物が好きらしい。
「でもなぁ・・・、流石にこの時間に外に出るのは」
「この間は平気で外にいたじゃないか」
「アレはまだ朝だっただろ?こんなに太陽が照ってたんじゃ流石の俺も死ぬ」
ウンザリした声でエドワードが答える。
それでもロイは諦めきれないのか一つの提案を出してくる。
「では、テラスではどうだね?」
「似たようなもんじゃねぇか」
「屋根はあるよ」
「ガラス張りじゃ余計に死ぬだろ!」
何かにつけてロイはエドワードを連れまわす。
それは礼拝の時も例外ではない。
エドワードには神を崇拝するような気は全く無いのだが、ロイは一番後ろの席にエドワードを座らせる。
例え、エドワードが寝ていても必ずと言う程叩き起こして。
「それにあんなロイ目当ての女達と茶を飲むのも嫌だ」
漸くエドワードは本音を漏らす。
ステラがお菓子を持ってくる時は決って女性が数名ついて来ていた。
それはステラがつれて来るのではなく、ステラが教会に向かう姿を確認した女性達が後から理由を作って相談に来るからだ。
それ故に女性達も一緒にお茶をする事になる。
エドワードはそれが気に入らない。
ロイは女性達に笑顔を振りまいてエドワードは相手にされない。
だから専らステラと会話をする事が多い。
ステラは老齢の婦人で、エドワードやロイを孫や息子の様に可愛がっていた。
エドワードも無償の優しさを向けてくれるステラは好きだが、娘達はどうにも受け入れられなかった。
「昔はそんな事なかったんだけどなぁ・・・」
エドワードとて血を頂くのは年若い女性ばかりだった。
だが、ロイの血を口にしてからそれ以外がダメになったのだ。
1度だけ試しに吸血行為をしようと街に出たが、結局気分が悪くなって帰ってきてからは、一切興味を失くした。
それにはロイの方が喜んだ。
何と言っても自分の血がエドワードを縛ると分かっては居ても今まで、血を与えた者は居なかった為、本当にそうなのか実感が無かった。
それでもエドワードの変化にロイはほくそ笑む。
「エドワード」
「何だよ・・・」
悪態を吐こうとするエドワードの唇をソッと塞ぐ。
ロイのキスをエドワードは抵抗する事無く受け入れる。
こういった触れ合いは好きだ。
「エドは誰よりも可愛いよ」
「だっ!とっとと俺の前から消えろ!!」
真っ赤になって叫ぶエドワードは自分が枕に使っていたソファをロイに向かって投げ付ける。
それを易々と受け止めてロイは笑う。
「今日は女性達にはお引取りを願うし、ステラさんはダイニングに通すからエドも一緒においで」
軽やかにそう告げて廊下へと姿を消したロイに溜め息を吐く。
エドワードはノロノロとソファから足を下ろすと窓の外を見る。
「嫉妬だってさ・・・」
自分の中に渦巻く感情にエドワードは溜め息しか出なかった。
それでもロイの触れた唇の感触を思い出して、真っ赤になりながらも頬を緩める。
正直に言えば嬉しかった。
エドワードの告白までもう少し・・・
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