ヴォルタースドルフ電気軌道点景

・2022.02.19 画像を交換し、全般的に修正しました。

ヴォルタースドルフ電気軌道公式ページ(http://www.woltersdorfer-strassenbahn.de/ 独文)
2020年1月1日、路線の運営がシェーナイヘ・リューダースドルフ電気軌道(SRS)に委託されたことに伴い、閉鎖された模様。

ヴォルタースドルフ電気軌道
 
 
ラーンスドルフ駅前にある小さな電停が出発点
88号車の左に写っているのがSバーンの駅舎。こちらも古色蒼然とした感じである
当線は電車が付随車を牽引して走り、またループ式ではないるため、電停には機回し線がある。線路の向こうの建屋は乗務員詰所。
 

ラーンスドルフを出発した電車は鬱蒼とした森の中を進んでゆく。大昔、武蔵野台地を切り開いて開業した多摩湖鉄道などは、こんな感じだったのかもしれない。
森の中の交換所は比較的長く、上り下りとも多少減速しただけですれ違った。

(Rahnsdorf Bahnhof〜Göthe Strasse)
 
 
森を抜けると、並木道の路肩に設けられた専用軌道を進んでゆく。
旧東ドイツということで、味気ない街並みを想像したが、閑静な住宅地である。
(Göthe Strasse)
 
 
やがて石畳の併用軌道に変わり、2ヶ所目の列車交換地点のテールマン広場となる。この一帯がヴォルタースドルフの中心地である。
上りも下りも歩道側につけるため、下り電停は交換場所に、そして上り電停は交換所より起点側の本線上にある。

そして、小さな広場の片隅にある売店を掠めて分岐して行く線路がある。

(Thälmann Platz)
 
 
その先にあるのは小さな車庫。
旅客営業車と同じ程度の数の動態保存車が在籍しているのは、ちょっとしたカルチャーショックではある。
 
テールマン広場には教会がある。電車はその隣にある坂道を下る。ここが70‰はあろうと思われる急勾配。付随車を引っ張って走るのだから、当地の電車は力持ちである。
坂を下った先にはアーチ橋の上のSカーブがある。沿線随一の撮影ポイントで、当地の書籍にもよく出てくる。

(Thälmann Platz 〜 BrumenStrasse)
 
 

Sカーブを抜けると、今度は起伏の多い地形となる。
電車は鬱蒼とした並木道の坂を登ってゆく。

(krankenhaus)
 
 
最後の坂道を下れば、終点のヴォルタースドルフ水門前に到着する。
ここは湖畔の静かな街。線路は水門前の街路樹に突き当たるようにして唐突に終わっていた。
そして、トラバントが電車の傍らを過ぎていった。

(Woltersdorfer Schleuse)
 
◆ヴォルタースドルフ電気軌道の電車について
 
 
ヴォルタースドルフの電車は、全てゴータカー(Gotha Wagen)と呼ばれる車両である。ゴータとは旧東独南部にある街の名前で、ここにあった車両工場で1954〜1967年の間、東独国内で使用される路面電車が集中製造された。その後は、コメコン内の製造分業により、路面電車は全てチェコスロバキア(当時)のCKDが受け持ち、いわゆるタトラカーの時代になる。

ヴォルタースドルフの電車は、メーカー型式T57またはT59(電動車)・B59(附随車)という単車(車体長10.9m 車体幅2.2m)で、ゴータの代表的な車両である。T57が6両(27〜32)、B57が4両(88〜90、92)在籍している(その他に保存車4両、事業用車1両を所有)。これらは全車他都市からの移籍車両で、通常の運行で使われるのは自動扉化やテールライトの改造など更新修繕を受けた27、28、30、32の4両のようである。

なお、保存車(KSWと古典車)と事業用車(RawSw製:レコカー)はゴータカーではない。念のため。

27 1960年製 もと13   ←シュベリン市21(1977年入線)
28 1959年製 もと30   ←デッサウ市42 (1978年入線)
30 1960年製 もと28←12←シュベリン市22(1977年入線)
32 1960年製 もと38   ←デッサウ市44 (1978年入線)
88 1961年製 もと26   ←シュベリン市(1977年入線)

19 RawSw製(レコカー TZ70) もとデッサウ市←ベルリン市721075 ・・・らしいが詳細不明
 
 
・参考文献
服部重敬、津田和一「ドイツのトラム 最後の2軸単車」 鉄道ジャーナル434号(2002年12月)

・参考サイト
www.Gothawagen.de - Startseite und Vorwort (独文:ゴータカー専門サイト ヴォルタースドルフについていはこちらを参照)

http://www.schotterschnecke.de/ser31-42.htm
http://www.trampicturebook.de/tram/germany/woltersd/
http://www.tram-ff.de/index.html フランクフルト(オーデル)市電公式サイト

※2006.8 追記
 訪問当時、平日日中の運行では、ラーンスドルフ〜ゲーテ通り間の交換所とテールマン広場電停の2箇所で離合をしていたが、
 2006年6月に、その中間のベルリン広場電停に交換設備を設置し、ここで交換するようになった。従って、運用が1つ削減された模様。

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