願わくば、このような穏やかな世界を。
誰もが笑って過ごせる世界が訪れんことを。




夢を見ました。

湖畔の傍のお花畑でわたしは本を読んでいました。
わたしが書いた童話です。
リタはわたしの背に寄りかかりながら猫を撫でていて、
ユーリは近くの木の根元にもたれ、ジュディスと時々言葉を交わしていました。
フレンはわたしの斜め前で、笑いながらわたしのお話を聞いてくれて、
その向こうではシュヴァーンが手馴れた動作でテーブルを用意していました。
アレクセイはテーブルの上にティーカップを並べて、ティーパーティーの準備を。
滅多に淹れてはくれませんが、彼の淹れる紅茶は今は亡きお父様も絶賛するほど美味しくて。
何年ぶりかに飲むことが出来る特別美味しい紅茶に、少しだけ心を弾ませながら
わたしは本を読み続けました。



これが夢だということはわかっていました。







――非道だと、思っていただいて構いません。けれど今は・・・耐えてください。
「・・・わたしはどうなっても構いません、でも・・・」

――わかっています。彼らに手出しはさせません。私もすぐそちらへ行きます。
「待ってください!どうするつもりですか・・・彼を」

――出来るだけ穏便に済ませたいのは私も同じです。恐らくあなたとは・・・理由は違うでしょうが。
「・・・わたしは・・・っ!・・・・・・ごめんなさい、わたしのせいで・・・あなたにばかり重荷を」

――あなたは勘違いをしています。私は・・・あなたが思うほど優しい人間ではありません。
「・・・でも・・・っ」

――守るべきもののためになら非情にでもなれる。ですから、この件については重荷だとは思っていません・・・これが私の選んだ道です。
「・・・・・・・。・・・では、あなたにとっての守るべきもの・・・それは重荷ではないのですか・・・?」

――私、は・・・あなたが思っているほど、寛容でもないのですよ。・・・では、また後ほど。



ぷつりと耳に残る音を最後に、その電話は終わりを告げました。
それでも、しばらくわたしはその場を離れることが出来ませんでした。
彼が何をしようとしているのか・・・わたしにはわかりません。
けれどきっと、彼はあの人を許さないでしょう。
そしてわたしのことも、・・・許していないのかもしれません。
聞いてはいけないことを聞いてしまった、そう思ったのは
平素から落ち着いている彼の珍しくも激情を押さえ込むような声音を聞いてしまった瞬間。


(わたしは・・・なんてことを・・・)


彼は私の身代わりに、守るべきものを背負ってくれているというのに。
それを思うと少し寂しくて、とても悲しくて・・・
思わずベッドの傍らで自分を見つめるテディベアのふわりとした体に手を伸ばして、でも、
この先に待っているだろう結末を想うとどうしても触れることが出来なくて。
・・・わたしにはただ、背を丸めて夜が明けるのを待つことしか出来なくて。


その夜からでした、わたしが自身の身に微かな違和感を感じるようになったのは。
そしてその違和感と連動するかのように、わたしはしばし奇妙な夢を見るようになり・・・


「だ、れ・・・?」


思えばそれは警告だったのかもしれません。
ユーリの身に降りかかった大変な出来事を知り、
わたしが目の前が真っ暗になる、というものを初めて体験したのは、その翌日のことでした。







湖畔の傍のお花畑でわたしは本を読んでいました。
わたしが書いた童話です。
リタはわたしの背に寄りかかりながら猫を撫でていて、
ユーリは近くの木の根元にもたれ、ジュディスと時々言葉を交わしていました。
フレンはわたしの斜め前で、笑いながらわたしのお話を聞いてくれて、
その向こうではシュヴァーンが手馴れた動作でテーブルを用意していました。
アレクセイはテーブルの上にティーカップを並べて、ティーパーティーの準備を。
滅多に淹れてはくれませんが、彼の淹れる紅茶は今は亡きお父様も絶賛するほど美味しくて。
何年ぶりかに飲むことが出来る特別美味しい紅茶に、少しだけ心を弾ませながら
わたしは本を読み続けました。
遅れてやってきたのは・・・

わたしは静かに本を閉じました。



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本当は最後の部分ちゃんと書いてたんですけど、この後の展開が読めちゃって面白くないかなぁと思って消しました・・・orz なんかフレン視点どころじゃなく、他にシュヴァーン視点とかも入ってきそうです・・・なんだこれ←