子どもが家で身につけたことは、生涯、生き続けます。
泗水幼稚園家庭教育講演会
平成20年11月27日



 皆さんこんにちは。ご紹介いただきました中川です。よろしくお願いします。
 この教室へ来る途中、可愛い園児が愛らしい笑顔で「おはようございます」「こんにちは」と大きな声であいさつしました。目が輝いてすくすくと育っていることがわかります。すばらしいお子さん達ですね。
 私の話を始めます前にお配りしています資料について説明しておきます。
 「ドキドキ子そだて 家庭教育手帳」はとても小型でしょう。これは、家庭の本箱にしまっておくためではなく、いつもポケットやハンドバックに入れて持ち歩き、お子さんの行動や同じ親同士で話し合うとき疑問に思うようなこと、こんな時はどうした良かろうかなど思ったときにすぐに開いてヒントにするなどのためにコンパクトにしたものです。どうぞ、ハンドバックなどに入れて
いつも手元に持ち、ご活用下さい。
 「くまもと 家庭教育10か条」はこれまで園でも配られたと思います。もう一度目を通して、最後の10条に我が家の家庭教育の信条を書き入れてください。
 12月20日に「子どもの生活リズム向上 全国フォーラムinくまもと」がグランメッセ熊本で開催されます。「早寝早起き朝ご飯」の提唱者、蔭山英雄さんの講演などが計画されています。時間に都合をつけて行ってみませんか。
 本題に入ります。
 皆さんはオオカミに育てられたカマラという少女のことを知っていますか?この少女は生まれて間もなくオオカミにさらわれて、8歳までオオカミに育てられました。その後、人間の村に連れ戻され、牧師夫妻によって人間らしさを取り戻し、17歳で短い生涯を終えました。村に連れ戻されたときのカマラは、裸で4つんばいで歩き、昼は眠り、夜になるとはい回るなどしていたそうです。
 牧師夫妻はこのカマラを、夜は眠り昼に活動するように、4つんばいでなく2本の足で立って歩くように、手を使って食事や作業をするように、そして、言葉を使うようにしていったのです。牧師夫妻の深い愛情と根気強い努力で、カマラは人間としての資質や能力を開花させていきました。
 これは特別な例ですが、動物は乳幼児期の環境によってその後の成長が大きく左右されます。
 人は人間の子として生まれてきただけで、人間になるのではありません。人間となる道を家庭で園で社会で教えられ、身につけてはじめて一人前の人間となります。
 と言うと、とてもプレッシャーを感じますが子育ては、生涯学習、つまり共に学ぶ、共に伸びる、共に楽しむ、共に喜ぶ、そして人権尊重、共に生きるの視点を持ってあたりましょう。
 また、子そだてには調理方法のようにレシピはありません。あなたの子どもさんと向き合って共に育ち合いましょう。
 年金テロかと日本中を震撼させた埼玉・東京の元厚生事務次官の殺傷事件は、出頭してきた男の供述では、家族、小さい頃飼っていた犬を殺された仇討ちだと言うではありませんか。世の中を震撼させた大事件を引き起こすにはあまりにも短絡的な動機でこれからいろいろと取り調べが行われ、動機やなぜ元高級官僚だったのかなどが解明されると思いますが、新聞テレビでは、現在までの調べから自分を表現するために殺人事件を起こしたのではなかろうかなどの憶測が飛び交っています。父親の話によると、小中学生時代は、イヌを可愛がるなどおとなしくて心優しい子だったとか。そのような人間がなぜ、殺人事件まで起こしたのでしょうか。
 最近は、これまでの常識では考えられないような事件が次から次へと起きます。記憶に新しいところでは、3月の秋葉原通り魔事件。「生活に疲れた。世の中が嫌になった。人を殺すために秋葉原に来た。誰でもよかった」などと犯行の動機を言っていました。
 これらの事件を特別な例ととらえるか、いつでも身近に起こりうる例ととらえるかによって、私たちの子そだての在り方は変わってくると思います。
 私は、身近に起こりうることと思います。そこで、そうならないために、国を挙げて家庭教育についていろいろと施策を施しています。
 私は家庭教育の在り方に課題があるのではなかろうかと思います。つまり、体は大人に成長しても、知性や感性、特に命への畏敬の念の成長は途中で止まってしまっているのではなかろうかと思います。「三つ子の魂百まで」という諺がありますように、子どもが小さい頃から両親が、家族が子どもたちとスキンシップを重ねながら人間社会の生き方や道徳心などを家庭で子どもの体に刷り込ませるまで教えるべきだと思います。
 スキンシップは親子の絆を強くします。皆さんは生まれてすぐのあかちゃんをどう抱っこしましたか?
 あかちゃんの顔が左胸に来るように抱っこしましたか?
 右胸に来るように抱っこしましたか?
 (看護師さんから左胸になるように抱っこさせてもらったとのつぶやきあり)
 そうですよね。左抱きにしたと思います。それは、お母さんの心臓の鼓動が一番よく聞こえるからです。あかちゃんは10ヶ月間お母さんのお腹の中で毎日お母さんの心臓の音を聞きながら育ちました。あかちゃんが一番落ち着くのはお母さんの心臓の鼓動を聞くときだそうです。子どもを愛情いっぱいにしっかり抱きしめ、子どもの安全基地をつくってください。そして、知性や感性を豊かに育ててください。
 そこで、子そだてについて皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
 私たち人間は他の動物と違って親が保護しなくては子は生きられません。その保護とは子を一人前の人間にするためです。
 「一人前の人間」とは、どんな人間を言うのでしょうか?
 隣の人と話し合ってみてください。(2分程度)
 基本的生活習慣が身に付いている、誰とでも仲よく遊ぶことができる、我慢ができる、必要な道具が使える、体力がある、自分のことが自分でできる、人の気持ちが分かるなどいろいろありますね。
 つまり、「一人前」とは、「体力」「耐性、我慢できる力」「道徳性、人とのつきあいや善悪の判断など」「感受性 思いやり」そして「自尊感情」が備わっていることです。
 そんな子にするために、「保護」しているわけです。保護には、「世話」があります。「指示」があります。「授与」があります。「受容」があります。先ほど言いましたようにどれもこれをしないと人は育ちません。しかし、それが過ぎるとどうなるでしょう。
 「世話」のし過ぎにより、子どもは自分のことが自分でできなくなってしまっています。子どもはいつも「世話」をされているので自分でする必要がないからです。
 「指示」のし過ぎにより、子どもは自己判断ができなくなっています。いつも「こうしなさい」「ああしなさい」と「指示」されるので、自分で判断して行動する必要がありません。そしていつのまにか、誰かの指示無くしては動けなくなります。これを指示待ち症候群と言うでしょう。
 大学の先生に聞いた話です。今、大学でも「先生、宿題を出してください。何をどう勉強して良いかわかりません」と言う学生がいるそうです。先生の講義を聴き、それに関することを自分で調べたり、自分が興味のあるものを進んで研究したりするのが大学生です。それが、大学生にもなって「宿題を出してください」はあまりにも主体性がありません。
 「授与」、ものの与えすぎにより、子どもの心から「感謝の心」、「物を大切にする心」がなくなってしまっています。次から次にものを与えられるから、ものをもらうのがあたりまえとなります。なくしても直ぐに新しいものを買ってもらえます。今、学校では鉛筆などの落とし物がいっぱいだそうですよ。「これはだれの?」と先生が聞いても、「ぼくのです」「私のです」と言って落とし物の鉛筆をとりに来る子は少ないそうです。私が小学生の頃は筆箱に3本か4本くらいしか鉛筆は入っていませんでした。ですから、1本でも無くそうものなら大変でした。ものを与えすぎると「感謝の心」も「ものを大切にする心」も育ちません。
 私が小さい頃、家は「貧乏」でした。いつもは買ってもらえませんでした。ものを買ってもらえるのは盆と正月でした。だから盆と正月が楽しみでした。このようにものを買ってもらえなかったからから物を大切にしました。我慢しました。たまに買ってもらえるから感謝したのです。
 買ってもらったばかりのコマで、コマ合戦をしました。中学生から見事に割られました。そのときの悔しさ、悲しさ、わんわん泣いたことを今でも覚えています。もう、来年の正月まで買ってもらえないのですから。
 「受容」、子どもの言い分を何でも聞き入れていては、「耐性」「自己規制」「節度」は生まれません。自分の考え、行いを受け容れてもらえるので我慢する必要がないからです。
 そこで、私が思うことをお話しします。


提案の1は、「家族みんなが楽しく過ごす家庭をつくりましょう」ということです。

 笑い声、歌声にあふれた安らぎのある家庭が一番です。泣き声、怒鳴り声の家庭では、心は安らぎません。
 子どもとの会話を増やし、家族のきずなを深めましょう。お子さんは「ねー、ねー、ママ聞いて」とよく言いませんか?そんなとき、子どもの言うことをしっかり聞きましょう。しっかり聞くと言っても難しいですね。子どもの話をよく聞くときはどんなときですか?
 時間にゆとりがあるとき、そして心にゆとりがあるときは子どもの話をよく聞いておられるでしょう。
 ところが、子どもは親が忙しいときに限って「聞いて、聞いて」と言ってくるものです。そんなとき、「あとで」と突き放さないで、さわりだけでも聞きましょう。そして、「ママは、今夕飯の準備で忙しい。夕飯の準備が終わってから聞くね」と言って、夕飯の準備が終わったらゆっくり聞いてあげてください。
 皆さんのお顔を拝見していますと、いきいきと輝いていらっしゃいます。憂鬱そうな顔をしていらっしゃる方は一人もいません。病気が気になっている方いらっしゃらないでしょう。今朝、ご主人と諍いを起こした方もいらっしゃらないでしょう。家庭の中に大きな心配事がある方もいらっしゃらないでしょう。今のような体の状態、心の状態の時はお子さんの話を聞くことが出来ると思います。皆さんの心にゆとりがありますから。
 心にゆとりを持って子そだてにあたりたいものです。そのためには、夫婦仲よく、家族仲よくすること、健康であることです。
 お父さん、お母さんがお子さんを膝の上に抱っこして、絵本を読んで聞かせて欲しい。私の孫は赤ずきんちゃんがとても好きです。わたしが膝の上に抱っこして読んでいると、オオカミが出てくる場面になると、「こわい」と言って手で目を隠していました。でも読み終わると、「もう一度読んで」と言います。何度も読んでいるうちに物語を覚えてしまいます。そして、私が読むより早く孫が先を読みます。自然と字も覚えます。
 私は小さい頃、祖父や祖母の昔話を聞いて寝ました。何度も繰り返して同じ話をしてもらううちに覚えてしまいました。これは私だけではありません。多くの人がこのような体験をしています。
 子どもたちの一番の願い、それは「楽しい家庭」です。
 先日、シンガーソングライター櫻井大介さんの「お家へ帰ろう」を聴きました。その歌詞に
 父ちゃんの大きな笑い声が待ってる 僕を待ってる
 母ちゃんの温かなご飯が待ってる いつも待ってる
 笑いあって 時に怒られて それでも好きなお家へ帰ろう
 どんなことが僕に起こっても迎えくれるお家へ帰ろう
がありました。これが家庭です。


提案の2は「生活リズムを身につけさせましょう」ということです。

 「早寝早起き朝ご飯」を合い言葉に十分な睡眠をとり、規則正しい生活リズムをつくってください。園では、皆さんが送ってこられるのですか。遅刻してくる子はいないでしょう。私が出勤する途中に毎朝、母子で園の車を待っている姿があります。毎朝、大体同じ時刻に車は来ています。園の車の送迎ですので、子どもたちの規則正しい生活ができていると思います。この規則正しい生活リズムが小学生になっても中学生になっても続くように見守ってください。
 私が学級担任をしているとき、朝10時頃登校してくる子が今した。夜更かしのために朝起きることができないのです。お母さんは、子どもに「朝よ。起きるの?起きないの?」と言って子どもに起きるかどうかを決めさせていました。朝起きなければどうするか子どもに問うのではなく「起きなさい」ですよね。
 今、国を挙げて、「早寝・早起き・朝ご飯」を言っています。どうして「早寝・早起き・朝ご飯」が良いのでしょう。隣の方と話し合ってみてください。(2分程度話し合う)
 できたら皆さんに今話し合ったことを発表して欲しいのですが、今日は時間もありませんので私の考えをお話しします。お子さんの睡眠時間は10時間程度でしょう。小学1年生くらいになると9時間程度、4年生くらいになると8時間程度になります。園は8時半くらいまでには登園でしょう。すると、6時半から7時くらいには起こさなければなりません。7時に起きて睡眠時間が10時間というと、夜の9時には寝ることですね。ところが、親がテレビを見るのに付き合って11時近くまで起きている幼児もいるのですよ。睡眠時間は足りません。十分な睡眠時間を取るようにしてください。
 朝ご飯を一緒に食べるというのは、それだけで家族の絆が深まります。お母さんは早く起きて朝ご飯の準備をするでしょう。「愛情がいっぱい詰まったご飯を家族みんなで食べる」これが良いのです。
 お子さんは「自分でする」とよく言うでしょう。これを大切にしてください。そして整理整頓の習慣を身につけさせてください。
 皆さんは「6S運動」という言葉を聞いたことがありますか?
 昨年、東京で開催されている夏目漱石展を見に行ったついでに、東京大学の構内にある「三四郎池」を見に行きました。
 東大の掲示板に「6S運動を推進しましょう」というスローガンが貼ってあるのに驚きました。
「6S」とは、「整理、整頓、清潔、清掃、習慣、しつけ」のことです。東大でこんな基本的なことを呼びかけなければならない時代かと驚いたのです。というのは、この6Sとは、家庭教育の基本でしょう。スローガンの横には自転車がバラバラに置いてありました。
 お子さんにできる範囲内で家庭の中の仕事の役割を持たせましょう。カーテンの開け閉めでよいのです。役割を果たしたことを認め、褒め、励ましてください。そのことにより、責任感、自立心、自己有用感を育みます。この自己有用感がとても大切だと私は思います。人は自己有用感を体感したとき、自己実現を自覚するのです。自己実現を実感した回数が多いほど自尊感情、つまり自分を好きだという感情が高まります。自分を好きだという感情が、向上心、チャレンジ精神を高めます。それは、もっと自分自身を高めたいと思うからです。つまり、生涯学習時代といわれる今、最も求められる資質の一つです。私は学力よりもこの自尊感情が大切だと思います。さらに、この自尊感情が人権尊重の根底にあります。自分が好きと言うことは他人の好きということです。


提案の3は「ルールを守るを教え込みましょう」です。

 「うそをつかない」「無益な殺生はしない」「他人のものを取らない」は、躾の基本です。
 子どもがまちがった行いをしたときは、愛情を持って本気で厳しく叱りましょう。
 私が学級担任をしていたときのことです。小学生ですがね。幾人かが万引きをしたのです。そのときの親の対応に3つほどありました。両親が子どもを連れて詫びに行った家庭。母親だけが詫びに行った家庭。お父さんには内緒にしとくから今度からそんなことはしてはならないよと言った家庭。両親が子どもを連れて詫びに行った家庭の子は2度と間違いは起こしませんでした。他の二つの家庭の子は立ち直るのに時間がかかりました。
 子どもが間違ったことをしたときは、父性の心を持って厳しく叱って何が間違いかを子どもに分からせてください。父性とは「父の性」と書きますが、「父性=父親」ではありません。いろんな都合でお父さんお一人で、あるいはお母さんお一人で子育てをしていらっしゃる方もおいでです。父性とは愛情の上に立った厳しさです。母性とは優しさです。
 私は、正しいしつけは子どもへの大切な贈りものと思っています。


提案の4は「自分の生命は自分で守るを教え込みましょう」ということです。


提案の5は「知的好奇心をくすぐり続けましょう」ということです。

 私の孫は3歳ころから、「これ、なーに?」「どうして?」を連発していました。今でも「何?」「なぜ?」とうるさいくらい聞いてきます。
 皆さんの子どもさんもそうでしょう。
 この「これ、なーに?」「なぜ?」という知的好奇心が学習の始まりなのです。この好奇心を大切にしたいものです。
 また、「自分でする」も連発します。これは自主性の始まりですね。
 孫が3歳頃、みんなが雲底で遊んでいるのを見て、自分も雲底にぶら下がるというのです。まだ、腕力もなく、とてもぶら下がるのは無理だと思って体を支えてやろうとすると、「自分でする」と言って支えさせません。1段も渡らないうちに落ちそうになり「落ちる。おじいちゃん助けて」と言います。そして同じ事を何度も何度も繰り返していました。これが子どもの特性です。
 2年ばかり前の公民館講座受講生受付時のできごとです。講座申し込みに若いお母さんが2歳くらいの幼児を連れておいでました。帰りに、「はい、○○ちゃん、あんよ出して」と言って靴を履かせて帰られました。しばらくして、同じ年格好の幼児を連れたおじいさんが来られました。帰りに「○○、靴は自分で履ききるど。じいちゃんが見とるけん、自分で履け」と言って幼児が靴を履くのをじっと見ておられました。「右左反対に履いてしまったね。よかたい。歩かるるけん」と言って帰って行かれました。靴は左右反対に履くと歩きにくいでしょう。反対に履いて歩きにくい体験をすることで、靴の右左を意識して履くようになるのです。
 どちらの子も靴を履く体験をしました。後で生きて働く体験はどちらでしょうか。言わずもがなですね。
 私は4人兄弟でしたが、以前は兄弟姉妹が多かったので、兄弟げんかをよくしました。兄弟げんかの中で手加減することを覚えました。今泣いているのは本気かどうかを見抜いていました。今、少子化でそれが少ないようです。園でも子どもたちはよくけんかをするでしょう。けんかを奨励するわけではありませんが、わがままでのけんかは勧められませんが、けんかは自己主張の一つです。違う主張のぶつかり合いでけんかになります。すぐにはとめないで見守ることも大事です。
 皆さん、今日から実践して欲しいことの一つを話します。
 兄弟(姉妹)が2人以上いるところ手を挙げてください。かなりいらっしゃいますね。一人のところは?数人いらっしゃいますね。
 おやつをやるとき、どうしていますか?
 袋ごとやりますか?
 例えばチョコボールをおやつとします。兄弟(姉妹)2人。どうしますか?考えてみてください。
 けんかしないように偶数個、お皿に盛ってあげるという人?(ほとんど全員)
 わざと奇数個あげるという人?(0人)
 皆さんは二人で同じように分けておやつを仲よく食べるように偶数個やるのですね。
 私は奇数個やります。すると兄弟(姉妹)で考えるのですよ。上の子が「私が大きいから一つよけいにもらう」と言うかも知れません。それに対して下の子は「ずるい」と言ってくってかかるかも知れません。あるいは「私が大きいから我慢する。あなたに多くあげる」と言うかも知れません。
 子どもが考え合うことを見守っておればよいのです。
 けんかするとき、私の息子嫁は、孫の母親ですが、「お姉ちゃんが我慢しなさい」とは言いません。「どちらかが我慢」と言います。不思議ですね。二人とも我慢するのです。時には妹が泣いていることもありますが。
 一人の場合は、「2日分よ」「3日分よ」といって余りがあるようにあげてください。子どもは一人で考えますよ。今日多く食べようか、明日多く食べようか、みんな食べてしまおうかと。
 これは、算数の勉強の基礎にもなります。食べ物の恨みは恐ろしいといわれるように強烈な印象で残ります。多い、少ないが分かるのは数概念の一つです。そして、自然と数概念が培われます。
 手と指先は第2の脳といわれるでしょう。特に指先を使わせてください。
 話をする前に、ちょっとみんなで指の運動をしましょうか。親指と他の4本の指を向かい合わせてください。
 先ず、親指で人差し指をトントンと2度打ちます。次に、中指をトンと1回打ちます。次に、薬指をトントントンと3回打ちます。最後に小指をトントンと2回打ちます。
 ちょっと練習してみましょうか。トントン、トン、トントントン、トントンです。できましたか?
では、始めますよ。トントン、トン、トントントン、トントン。次は小指から人差し指へ返るのです。これを5回ほど繰り返します。どうぞ。
 私は、よくしていますのですいすいできますが、皆さんは初めてですので少し苦労したでしょう。これで、血流が普段の数倍体中に流れましたよ。脳に血流が流れるのが頭を使うことです。子どもの脳に血流をいっぱい流し込みましょう。
 もう一つしてみましょうか。左手は握り拳をにぎります。右の手のひらを拳の上にのせます。次に、拳の下に手のひらを添えます。次は、左右の手を反対にして、右手が握り拳、左手を拳の上、それから下に当てます。これの繰り返しです。これを「ちゃつぼ」の歌にあわせてするのです。ご存じの方も多いでしょう。
 歌いながら一緒にしてみましょう。
 ♪「ちゃーちゃーつーぼ ちゃーつーぼ ちゃーつーぼーにゃ ふたがない そーこをとって ふたにしろー」♪
「ふたにしろ」と歌い終わったところで、握り拳の上に手のひらがのっているのです。子どもさんと一緒に遊んでください。
 私は今、公民館講座で大人対象にそろばん教室担当しています。40代から70代の方まで15人ほどが学習しています。そろばんは指を使います。脳を使います。脳に血流を送り込んでいます。脳の活性化にとても良いです。
 お子さんは指を使っていますか?
 お子さんはひもを結ぶことはどうですか?
 先ほど、靴を履く話をしましたが、最近の靴は殆どチャック付きでひもを結ぶことはしませんね。ひも靴が良いと思います。
 ホックを留めることはどうですか?
 先日、妻が私に冬用の寝間着を買ってきました。早速着て寝ようと、ボタンを留めようとするのですが、ボタン穴がないのです。ボタンは付いているのですよ。何のことはない、マジックテープでつけるようになっているのです。ボタンは単なる飾りです。手先がうまく使えない人にはとても便利です。しかし、私は指が動くうちはボタンは自分でとめたいと思います。
 お子さんの場合、3歳児くらいからボタンは自分でとめることができるでしょう。
 なるべく苦労させてください。それが子どもの脳に血流を送り込むことになります。
 先ほどのそろばん教室のことですが、先日の検定試験で70代の方が3級に合格しました。何度も受験されました。4回目で合格です。他の人も学習意欲旺盛です。学習日に私が来るのを待って、「ここの割り算がどうしてもできません。教えてください」「私はこんな練習をしているのですが、なかなか合格できません。どんな練習をすればよいか教えてください」と質問攻めです。自尊感情が高い人ばかりです。先ほど、「役割を持たせてください」と言いましたが、昔の人はお手伝いではなく、自分の仕事として家の仕事を分担していました。仕事を分担しながら「うちは私がいるから回っている」「俺がこれをしたからこうなった」「私もすてたもんではなかばい」などの自己有用感、自己存在感を実感していたのです。それが自尊感情の高まりとなったのです。この自尊感情がチャレンジ精神、向上心につながるのです。
 資料につけています生活体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が充実していますは、帰ってから読んでください。


最後の提案は、「自分を大切にする心、自尊感情をはぐくみ続けましょう」ということです。

 先ほどは自己有用感で自尊感情を育てましょうと言いました。それに加えて次のことを親子で体感して欲しいと思います。その一つ一つの積み重ねが自尊感情を高めることになります。
 「うゎーすごい」「うゎーきれい」「うゎーおいしい」などの感動を親子で体感し合ってください。感動は1人よりも2人、3人で味わう方がより大きいものとなります。感動を体感することによって感性を豊かにします。
 「楽しい」「悲しい」「うれしい」「くやしい」などの喜怒哀楽体験を豊かにしたいものです。特に「悲しい」思いをする体験が最近少なくなったようです。
 私の父は、15年前になくなりました。父は生前、「我が家で死を迎えたい」と言っていました。死を間近にした時、病院の先生から「入院すればもっと生きられる」と言われましたが、母や弟達と相談して入院は断りました。
 家族や親族みんなが見守る中で眠るがごとく息をひきとりました。息をひきとるまで、母は、両手で父の手をしっかりと握りしめ、無言で父を見つめていました。父の弟妹は「有っちゃん。有っちゃん」と名前を呼び続けました。私たち子は「父ちゃん、父ちゃん」と呼びかけました。孫たちは「おじいちゃん、おじいちゃん」と呼び続けました。次第に冷たくなる父の体をみんなで必死でさすりました。私は、「父ちゃん、これまでありがとう。これからも俺たちを見守っていてはいよ」とこみ上げる悲しみを必死でこらえながら父に語りかけました。息をひきとると、みんながわっと泣きながら父の体を抱きしめました。
 最近は、このように人の死や誕生に接する機会が少なくなっています。人の誕生や死に立ち会いながらその中で「生きるとは」「命とは」を考えたいと思います。心を揺り動かされる体験から人権感覚は生まれ、磨かれていくものと思います。
 子どもたちには「心が揺り動かされる情動体験」をいっぱいさせてください。
 資料につけています「ドロシー・ロー・ノルトの言葉」を読みましょう。


            子は親の鏡

                                              ドロシー・ロー・ノルト

  けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる
 
  とげとげした家庭で育つと、子どもは乱暴になる

  不安げな気持ちで育てると、子どもも不安になる

  「かわいそうな子だ」といって育てると、子どもは、みじめな気持ちになる

  子どもを馬鹿にすると、引っ込みじあんな子になる

  親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる

  叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう

  励ましてやれば、子どもは、自信を持つようになる

  広い心で接すれば、キレる子にはならない

  ほめてあげれば、子どもは明るい子に育つ

  愛してあげれば、子どもは、人を愛することを学ぶ

  認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる

  見つめてあげれば、子どもは、頑張り屋になる

  分かち合うことを教えれば、子どもは、思いやりを学ぶ

  親が正直であれば、子どもは、正直であることの大切さを学ぶ

  子どもに公平であれば、子どもは、正義感のある子に育つ

  やさしく思いやり持って育てれば、子どもは、やさしい子に育つ

  守ってあげれば、子どもは、強い子に育つ

  和気あいあいとした家庭で育てば、子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる

 私は、愛は、家庭で教わらなかったらよそで学ぶのは難しいと思っています。今、読みました言葉にあるとおりだと思います。
 子どもを家族みんなで育てましょう。
 終わりに、ちょっと実験をしてみたいと思います。実験というと大げさですが、30秒で動物や植物の名前がいくつ書けるかに挑戦してください。
 レジュメの空いているところに、思い浮かぶ動物名を書いてみましょう。どうぞ。
 同じように植物の名前を書いてみましょう。どうぞ。
 動物の名前が多かった人、手を挙げてください。(全員挙手)
 植物の名前が多かった人は?(挙手0)
 皆さん動物の名前が多いですね。動物の名前はすらすら出てきたでしょう。植物の名前は「何があったかなー」と考えられたでしょう。
 どうしてでしょうか?
 私たちは、日頃の生活の中で動物の場合は「あっ、犬の来よる」「可愛い猫がいる」などと名前を言っているでしょう。「動物のおる」などとは言いませんよね。しかし、花や植物については「うわー、きれいな花が咲いている」などと言っていませんか。
 植物には、名前を言わないで「きれいな花」というひとくくりで表現していますね。こんな積み重ねが、思い浮かぶ動物と植物の名前の数の差ですね。
 これからはなるべく「シクラメンの花がきれい」「クロッカスの花はかわいい」などと言おうではありませんか。きっと子どもの語彙にも影響すると思いますよ。
 本日の講演のテーマを「子どもが家で身につけたことは、生涯、生き続けます」としました。  一方的に話しましたが、泗水幼稚園の子どもたちが明るく伸びやかに成長することを祈念して話を終わります。
 長時間のご静聴ありがとうございました。


                          泗水幼稚園講演会感想

○とっても聞きやすくわかりやすかった。もう少し聞きたいなと思いました。
 これからの子育てに役に立つこと、今日からできることをお話ししていただけたので、参加してとても良かった。

○子育ての基本を教わりました。
 手を使ったり、昔ながらの遊びをすることがあまりなかったので、なるべく意識して遊びたいと思いました。

○なかなか講演を聴く機会がないのでとても良かったです。
 子どもにかまい過ぎる点、もう少しかまった方がよいことなどとても勉強になりました。

○良かったです。話を聞きながら子育てについて反省することがたくさんありました。
 話の内容も良かったです。

○年に1度の講演会は、いつも考えさせられます。もっと余裕を持って子どもに接したいと思います。

○いろいろと良いお話が聞けて良かったです。

○いつもの生活の中で、マナーやルール、習慣など日頃の積み重ねが大切だと思いました。子どもとの会話のやりとりや、本の読み聞かせも大事だと分かってはいるけど、反省させられました。勉強になりました。

○何をするにも加減が大切だということに改めて気づきました。

○子どもに接するときには、自分も楽しい気持ちで接すると互いに楽しさも倍加する気がします。
 今日はありがとうございました。

○私は子どもが一人なので、子どもにものを与えすぎたり、することに対しても受け入れすぎたりしていることを考え直そうと思います。ものの大切さを子どもに教えていこうと思います。自分を大切にして、友達をたくさんつくって欲しい。
 いつまでも家に早く帰りたいと思ってくれればよいですね。

○今まで聴講してきた講演会よりもというと、今までお話しされた方に失礼ですが、楽しい雰囲気で聞くことができました。
 心に余裕がないと、子どもの話をしっかり聞いてあげることができません。極力、お風呂などでゆっくりと聞くようにしています。
 自立への道も陰ながら応援しつつ、自分も子どもと友に成長できたらと思います。

○中川先生の人柄がとても良く伝わってきて、ほのぼのとした講演会でした。
 家庭には笑顔が大切というお話に改めて最近の自分を考えると、「忙しい!」で何でも片づけてしまい、子どもと一緒に楽しく笑うことを忘れていたような気がします。
 今日からまた気持ちを新たにして、楽しく暮らしていきたいと思います。

○子どもの成長とともに、自分も成長しなくてはと感じました。
 とてもわかりやすくお話をして頂き、楽しく聞かせて頂きました。是非実践したいと思います。
 ありがとうございました。

○ 中川先生のおやつの与え方で、「二人兄弟に奇数与えてください」と言う話は、ためになりました。

○身近な話しも交えて話して頂き、とても参考になりました。これからの子育てに役立てたいと思います。
 ありがとうございました。

○中川先生は話で、「子どもに何か一つ役割を持たせてください」と言われました。明日から実践していこうと思います。

○あまり聞けない話を聞けて良かったです。

○中川先生がとても親近感のある方で、楽しくお話が聞けました。