修了式 講話




               「何事にも興味関心を持ち、前に進みましょう」

 今日は修了式です。
 修了とはその学年の学習を残りなく修めること、学習し自分のものとしましたという意味です。この1年、皆さんはとっても成長しました。朝の登校班での帽子をとっての元気よいあいさつ、車を運転している人へのお礼のあいさつ、クリーン作戦などの朝の活動、朝自習のがんばり、若あゆ集会の集中力、各種大会での活躍など本当にすばらしい成長を遂げました。この成長は、皆さんのがんばりと先生の指導、お父さんお母さんの励ましなどのおかげです。今日は先生や家族の皆さんに胸を張って1年間お世話になりました。また、よろしくお願いしますと言いましょう。
 皆さんのさらなる成長を期待して、私は今日は皆さんにファーブルやシートンと同じように立派な昆虫の研究をしたオーガスト・フォーレルという人の話をします。
 オーガスト・フォーレルは「蟻の研究」では世界一だといわれています。フォーレルは、スイスのアルプスの山に近いところで生まれ、ここで少年時代を過ごしました。
 フォーレル少年は、学校に通うのに山道を通っていかねばなりませんでした。毎日通っている道でしたが、ある日、ふと道の脇にある蟻の巣を見つけました。よく見ると蟻の巣はとても上手にできていました。フォーレルはこんな小さな蟻にどうしてこんなに美しい巣が作れるのだろうかと感じました。蟻の力が不思議に思えてならなかったのです。早く学校に行かなくてはならないのに、歩きながらも美しい蟻の巣のことが頭から離れません。授業が始まっても先生がお話しすることが少しも耳に入りません。蟻の動いていた様子、巣の形など強く頭の中に焼き付いてしまっていたのです。フォーレルは学校が終わると一目散に走っていって、蟻の巣の前に座り込み、日が暮れるまで熱心に見ていました。フォーレルの毎日は朝早く起きて蟻の巣を見に行き、学校が終わると日が暮れるまで見続けて、暗くなってから家に帰るというようになりました。おばあさんはフォーレルが蟻に夢中になっていることを大変誉めました。このおかげでしょうか。
 彼は18歳の時に大変貴重な発見をしたのです。その発見とは、蟻は他の蟻を助けるために、自分で取った食料を与えます。助け合っているのです。ところが、どの蟻も19分の1だけは必ず自分の命をつなぐために残すと言うことでした。フォーレルがこんなにすばらしい発見をしたのはなぜでしょうか。
 1つは、蟻の生活の不思議さに疑問を持ち、興味・関心を見いだしたことだと思います。蟻は私たちの身のまわりにたくさんいます。この身近なものの中から夢中になって調べてみたいと思うものが見つけられたことがフォーレルのものの見方のすばらしさ物語っているのです。
 2つは、この大発見が根気強く、注意深く見続けたからあったのだと思います。小学生の頃に気付いた1つのことを18歳という年齢まで長い年月にわたってあきらめないで、あきないで取り組んできた結果だと思います。
 これまでに貴重な発見や研究をした人々がたくさんいます。これらの人々に共通していることはフォーレルと同じように興味を持ち、関心を持って、根気強く取り組んで目的を果たしたということです。
 お勉強も、部活動も、委員会活動もすべて積み重ねです。身のまわりの小さなことを積み重ねて自分の身に付くのです。
 皆さんは1学年ずつ進級します。これからの生活で何事にも興味関心を持ち、挑戦する気持ちを持ち前進し続けましょう。
 4月9日は、さらに成長した皆さんと会えることを楽しみにしています。



                「努力の大切さ」

 20日は卒業式でした。4年生と5年生がみんなの代表として参加しました。ご苦労様でした。 
 卒業生は6年間の学校生活を懐かしみながらも、胸を張って卒業していきました。特に「明日からの益城中央小学校を引き継いでいく在校生の皆さん、私たちが大事にしてきたことをあなた達の手ですてきな中央小学校にしてください。」と言い残した言葉が、私の心に強く残りました。
 みなさん、1年間よく頑張りました。
 1年生はいよいよ2年生です。児童朝会での並び方、話の聞き方がとてもりっぱになりました。きっと新しい1年生のいいお手本になることと思います。 2年生は、みんなでやる仕事がとても上手になりました。掃除や給食の準備など力を合わせてやっている様子を見て感心しています。
 3年生は元気に溢れています。朝早くから運動場でよく遊んでいました。元気のいい3年生を頼もしく思います。
 4年生は自学自習をがんばりました。学校でのお勉強はもとより、お家でも進んで学習するようになりました。
 5年生、とてもりっぱな1年間でした。授業中の学習の様子、芦北青少年の家での生活の様子を見るにつけ、さすが5年生だなぁととても心強く思っていました。
 4月から皆さんはそれぞれ学年が1つずつ上がります。
 卒業生が「あなた達の手ですてきな中央小学校にしてください。」と言って去っていきましたが、皆さんのこの1年間をふり返ってみて皆さんだったら必ず卒業生のこの願いを叶えてくれるだろうと思います。
 さて、1年の最後にマラソン選手、藤田敦史さんの話をします。
 藤田選手は、1昨年の福岡国際マラソンで、2時間6分51秒の日本新記録で優勝した人です。先日のソウル国際マラソンでも優勝しました。大変まじめで練習熱心な選手で「なぜそんなに練習するのですか」と尋ねられると「ぼくには素質がないから、他の人より何倍も練習しないと人並みには走れません。」という答えが返ってくるそうです。監督も「藤田選手はもう止めろと言うくらい練習をする。」と言っています。素質・能力は努力によってのみ引き出されることを私たちに教えてくれています。
 4月に皆さんは希望に溢れて進級します。1年ごとにぐんぐん大きくなっていく木のように、皆さんはこれから心も体も伸びていくでしょう。しかし、その間、楽しいことや楽なことばかりではありません。苦しいことや辛いことに負けないでやり遂げてこそ、心と体は大きくたくましく育つのです。
 藤田選手のように速く走るようになるには、走るための練習が必要です。漢字が正しく書けるようになるためには、間違えてもがっかりしないで書けるようになるまでがんばることです。係の仕事がどんなに辛くとも、全力をふりしぼって努力してみることです。実際にやってみると、今まで気付かなかった新しい発見にたくさん出会うでしょう。また、「私もできる」「ぼくもやれる」という自信が心の底から湧いてくるでしょう。本当に強い人間は汗を流す体験の中で育っていくのです。
 この春休みを意義のある楽しい休みにしてください。
 4月8日の始業式では、元気な姿で会いましょう。



                「やればできる」「素直で、礼儀正しく」「目標を大きく持つ」

 私は先日、矢部町の通潤山荘に宿泊しました。そこには今から20年ばかり前、昭和59年8月11日、ロスアンゼルス・オリンピックの柔道で優勝した山下泰裕さんに関する資料がたくさんありました。
 表彰台で、金メダルを胸に、メインポールの国旗を仰ぎながら、日本の国歌を涙を流しながら歌っている山下選手をテレビで見、感激で胸を熱くしたことを思い出しました。
 後で山下選手の手記を読んで知ったことです。
 国歌を歌っているうちに、思わず涙があふれてきて、中学時代に書いた「将来の夢」という作文をはっきりと思い出したというのです。
 「私は柔道が好きです。もっともっと柔道が強くなりたいと思っています。柔道の強い高校、大学へ進み、私の夢はオリンピックに出ることです。もしオリンピックに出場できて、メインポールに日の丸を仰ぎ見ながら君が代が聞けたら、最高の気分でしょう。現役を終わったら、海外へ出て、世界の人々に柔道を広めたいと思います。」こんな作文でした。
 中学時代の夢がみごとにかなった山下選手は、「ああ、なんておれは幸せな男なんだ。おれは世界一恵まれた男じゃないか」という喜びが全身にあふれてきました。
 山下選手は、第一試合でセネガルの選手と当たりました。「ジャパン、ヤマシタ」と言われて試合場に上がった時に、非常に感激する出来事が起こりました。それは会場で一斉に日の丸が振られたことです。その日の丸を見た時に、「ああ、これだけの人が応援に来てくれているのか、今日は何が何でも絶対に勝つぞ」と山下選手も非常に気合いが入ったのです。
 一回戦を勝ち、二回戦は西ドイツの選手と当たりましたが、右足をけがしてしまいました。何とかその試合に勝って控え室に戻ると、ほかの選手や先生方が青ざめています。そこで、決して痛そうな顔をしないで、胸を張って「足なんか痛くないんだ」という気持ちで次の試合に臨みました。
 準決勝の相手は、フランスのデルコロンボという選手です。組んで30秒くらいで、相手に投げられて「効果」というポイントを取られました。山下選手は、今まで外国人に投げられたことはなかったのです。とたんに「こんなけがで負けてたまるか。絶対に負けられない」という気持ちになり、激しい闘志が湧いてきました。
 準決勝で勝ち、決勝はエジプトのラシュワン選手です。もうこの時は、頭の中には何もありません。小学校4年で柔道を始めて以来この日までやってきたことを、すべてこの一試合に出し切ろうと思いました。この試合が自分にとっては、現役最後の試合なんだという気持ちでした。
 試合場に上がったら無我夢中で、気付いたら相手が倒れていました。その相手を押さえこんで、30秒たった時には「やったな」という気持ちで、言いようのない感激が湧いてきました。優勝して表彰台に立った山下選手の脳裏には、もろもろの思いがよぎりました。
 山下泰裕さんは、矢部町に生まれました。両親は、柔道は体を鍛え、技を磨くだけでなく、精神修養、心を練るために最もよいスポーツと考え、小学校4年生から柔道を習わせました。
 小学校6年生の時、熊本県の小学生の柔道大会で優勝し、熊本市内の藤園中学校に入学しました。
 藤園中学校の白石礼介先生から次の三つの言葉を教わりました。
 一つは、「文武両道」という言葉です。勉強も柔道も両方とも頑張れ。やればできる。できるかできないかは、君のやる気だ。両方とも一生懸命頑張れば、必ず両立することができる。問題はやる気なんだ、と励ましてくださったそうです。
 二つ目に、「実るほど首を垂れる稲穂かな」という言葉を引用して、人間というのは、強くなればなるほど、立派になればなるほど、素直に、謙虚に、礼儀正しくなっていくんだ。素直に謙虚に他人の話を聞ける人間でないと、柔道は強くならん。礼儀、挨拶がきちっとできない人間は、人間的に立派にもなれないと言われたのです。
 三つ目に、「虎は死んで皮を残す。人は死んで名を残す」という言葉です。目標を大きく持ち、精一杯頑張れば、可能性は無限に広がっていき、将来名前を残せる人間になれる」と教えてくれました。
 皆さんは今日で今の学年を修了します。4月1日からは一つ上の学年に進級します。山下さんが教えてもらった「やればできる」「素直で、礼儀正しく」「目標を大きく持つ」の3つを胸にこれからも益城中央小学校の子どもとして力一杯頑張ってください。