生涯学習の視点に立った学校教育の展開
平成17年10月
嘉島町中堅職員研修

1 はじめに
 本来、学習とは自立的なものであり、「教える」と「学ぶ」の関係は別個に存在するものです。
 「教えた」からといって相手が「学」とは限りません。もっとも学校では、すべての子どもたちが「学んだ」と実感するように、先生方は創意工夫しながら授業づくりに努めていらっしゃいますよね。
 逆に、「学んだ」からといって「教えた」人がいたとは限りません。自ら学び、自ら課題を見つけ、考え、解決するという現指導要領の趣旨もこの辺にあるのかも知れませんが。
 自ら学ぶ姿勢を持つことは、個人の動機づけによるところが大きいですね。動機づけは学習の必要性を目覚めさせるための契機となります。だから、動機付けが必要なのです。この動機付けとは、なにも学齢期の子どもばかりとは限りません。
 平均寿命が延びた現在でも、人は6歳から長くても22歳までに勉強することを終え、残りの約50年余りの歳月は、教育を受ける機会を持たないことになります。
 制度としてはありませんが、現実には、企業内教育、先生方には「研修の機会」が数多くあります。大学の聴講生受け入れがあります。第一線をリタイアした人は、カルチャースクールや公民館講座でいろんなことを学んでいますがね。
 生涯教育という概念は、「教育は人生の初期、学校だけ行われるものでない」という考え方から始まっています。
 日本では、臨時教育審議会が、「変化への対応、個性の重視、生涯学習体系への移行」を打ち出しました。極論すると、学歴偏重社会の弊害を是正するには生涯学習の考えを導入する以外にないとのことからだったと思います。

2 生涯教育論の流れ
(1)1965年12月 ポール・ラングラン
   ユネスコ成人教育第3回成人教育推進国際委員会において生涯教育を提唱
   従来の学校教育という概念の改革を考え、教育体系の改善を期待してこの言葉を用いた。
(2)1976年10月 フランク・W・ジェサップ
   人間は生まれてから死ぬまで学校だけではなくあらゆる場所で学習すべきであると提言。
     Lifelong Integrated Education (縦の統合・横の統合)
(3)1996年4月、ユネスコの21世紀教育国際委員会は、「学習:秘められた宝」という報告書を発表。21世紀の教育のキーワードとして生涯学習を設定
   @知ることを学ぶ(Learning to know)
   A行うことを学ぶ(Learning to do) 
   B共に生きることを学ぶ(Learning to live together with others)
   C人間としていきることを学ぶ(Learning to be)
   社会の急激な変貌は、知識の絶え間なき更新を必要とし、人々の価値観も変化してきているので、人生の初期における学校教育とそのあとの継続教育とを伝統的に区分することは困難。
   時間(学習年齢)と空間(学習場所)を超えた生涯学習という理念は新しい概念なのです。
(4)我が国の生涯学習
 @昭和40年    波多野 完治 生涯教育      
 A昭和56年6月  生涯教育について(中央教育審議会)
 B昭和59年〜62年 臨時教育審議会の答申において「生涯学習体系への移行」
 C平成2年1月   生涯学習の基盤整備について(中央教育審議会)
 D平成3年4月   新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について(中央教育審議会)
            生涯学習における学校の役割
 人々の生涯学習の基礎を培うためには、特に初等中等教育の段階において、生涯にわたって学習を続けていくために必要な基礎的な能力や自ら学ぶ意欲や態度を育成することが重要。
 教育内容を精選して基礎・基本を徹底させるとともに、新しい知識を学んだり発見したりすることの楽しさを体験させることが必要。
 E平成2年6月   文部省に生涯学習局を設置
 F平成2年8月   「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」制定
 G平成2年8月  生涯学習審議会の発足
 H平成4年7月  「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」
 I平成8年4月  「地域における生涯学習機会の充実方策について」
 J平成8年7月  「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(中央教育審議会)
・教育における「不易」と「流行」を十分に見極めつつ、子どもたちの教育を進めていく必要がある。
・知識の陳腐化が早まり、学校時代に獲得した知識を大事に保持していれば済むということはもはや許されず、不断にリフレッシュすることが求められるようになっている。
・いかに社会が変化しようと、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性。たくましく生きる健康や体力。「生きる力」
 K平成10年7月  幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について (教育課程審議会)
 L平成10年9月   「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」
 M平成11年6月 「生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ」
   生活体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が充実
   お手伝いをする子どもほど、道徳観・正義感が充実
   自然体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が充実
 N平成11年6月 「学習の成果を幅広く生かす」
   学習機会の拡充と学習に対する支援の充実
   ボランティア活動の推進
   生涯学習による地域社会の活性化の推進など
 O平成12年11月 「新しい情報通信技術を活用した生涯学習の推進方策について」
 P平成13年1月 文部省生涯学習局を文部科学省生涯学習政策局として再編強化
            生涯学習審議会を中央教育審議会生涯学習分科会として再編

3 生涯学習の意義について
 子どもや大人に「自由時間の過ごし方」について尋ねますと、「休養、娯楽、趣味、スポーツなどに使っている」とほとんどの人が応えます。
 ギリシア時代の哲学者アリストテレスは自由時間を、@体の休息(アヒパシウス)、A心の休息(パイデア)、B自己実現(スコレー)に使うべきであると述べています。
 アメリカの心理学者マズローは、「人間はよく生きようとする存在」として「マズローの5段階欲求階層」を示しています。
 第1段階が「生存欲求」です。これは、食べる、飲む、眠るという生活基本欲求です。
 第2段階が「安全・安定欲求」です。これは、おいしいものを食べたい、3度の食事をしたい、栄養のバランスのとれた食事をしたいなどより高度化します。
 第3段階が「愛情欲求」です。
 第4段階は「集団への帰属欲求」。
 第5段階は「自己実現欲求」です。 自分が求めている姿に近づきたい、満足感、充実感、存在感などにひたりたいというより高度な欲求です。
 元お茶の水大学教授、森隆夫先生はこのことを「立派な人間になりたいこと」だと述べています。
 アリストテレスは、自由時間を自己実現に使うべきだと述べ、マズローは自己実現欲求は人間の最高欲求だと入っています。
生涯学習の意義はここにあると思います。
 現に、公民館では高齢者の方が生き生きと学びの活動をされていますよ。
 
4 生涯学習の目的
 今、生涯学習とは何ですかなど尋ねる人はいないでしょう。それぞれが生涯学習を自分なりに受け止め、学習活動に取り組んでいます。何のために学習に取り組むのかを大まかに見てみますと、次の3点になるでしょう。
 一つは、教養・生活充足型です。カルチュアーセンター型、公民館学習型と言ってもよいでしょう。興味・関心や生活に必要な知識・技術を得るための学習です。
 二つは、資格取得型です。実社会に出てから、本人の意志あるいは職務遂行の必要性からの学歴や資格を得るための学習です。通信教育を受けて資格を取る人が増えています。教員免許の上級免許を取るためにたくさんの先生が利用しています。
三つは、専門職充実型です。専門職に従事する人が、その職務を全うするために継続的に行う学習です。先生方は、指導力の指導向上のために絶えず研究と修養に取り組んでおられますね。あるいはよりわかりやすい授業づくりのために教材研究に余念がありません。これが専門職充実型です。

5 生涯学習社会における学校の役割
 平成8年7月19日中央教育審議会は、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」を文部大臣に答申しました。この答申文にはいたるところに生涯学習の視点に立った学校教育の展開の必要性を説いています。そのいくつかを拾ってみます。
○今日の変化の激しい社会にあって、いわゆる知識の陳腐化が早まり、学校時代に獲得した知識を大事に保持していれば済むということはもはや許されず、不断にリフレッシュすることが求められるようになっている。生涯学習時代の到来が叫ばれるようになったゆえんである。
○我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。
○このような[生きる力]を育てていくことが、これからの教育の在り方の基本的な方向とならなければならない。[生きる力]をはぐくむということは、社会の変化に適切に対応することが求められるとともに、自己実現のための学習ニーズが増大していく、いわゆる生涯学習社会において、特に重要な課題であるということができよう。
○教育は、言うまでもなく、単に学校だけで行われるものではない。家庭や地域社会が、教育の場として十分な機能を発揮することなしに、子供の健やかな成長はあり得ない。[生きる力]は、学校において組織的、計画的に学習しつつ、家庭や地域社会において、親子の触れ合い、友達との遊び、地域の人々との交流などの様々な活動を通じて根づいていくものであり、学校・家庭・地域社会の連携とこれらにおける教育がバランスよく行われる中で豊かに育っていくものである。特に、[生きる力]の重要な柱が豊かな人間性をはぐくむことであることを考えると、現在、ややもすると学校教育に偏りがちと言われ、家庭や地域社会の教育力の低下が指摘されている我が国において、家庭や地域社会での教育の充実を図るとともに、社会の幅広い教育機能を活性化していくことは、喫緊の課題となっている
○いまだ成長の過程にある子供たちに、組織的・計画的に教育を行うという学校の基本構造はこれからも変わらないが、これからの学校は、[生きる力]を育成するという基本的な観点を重視した学校に変わっていく必要がある。
 我々は、これからの学校像を次のように描いた。
 まず、学校の目指す教育としては、
 (a) [生きる力]の育成を基本とし、知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、 子供たちが、自ら学び、自ら考える教育への転換を目指す。そして、知・徳・体のバランスのと れた教育を展開し、豊かな人間性とたくましい体をはぐくんでいく。
 (b) 生涯学習社会を見据えつつ、学校ですべての教育を完結するという考え方を採らずに、自ら学び、自ら考える力などの[生きる力]という生涯学習の基礎的な資質の育成を重視する。
 そうした教育を実現するため、学校は、
 (c) [ゆとり]のある教育環境で[ゆとり]のある教育活動を展開する。そして、子供たち一人一人が大切にされ、教員や仲間と楽しく学び合い活動する中で、存在感や自己実現の喜びを実感しつつ、[生きる力]を身に付けていく。
 (d) 教育内容を基礎・基本に絞り、分かりやすく、生き生きとした学習意欲を高める指導を行って、その確実な習得に努めるとともに、個性を生かした教育を重視する。
 (e) 子供たちを、一つの物差しではなく、多元的な、多様な物差しで見、子供たち一人一人のよさや可能性を見いだし、それを伸ばすという視点を重視する。
 (f) 豊かな人間性と専門的な知識・技術や幅広い教養を基盤とする実践的な指導力を備えた教員によって、子供たちに[生きる力]をはぐくんでいく。
 (g) 子供たちにとって共に学習する場であると同時に共に生活する場として、[ゆとり]があり、高い機能を備えた教育環境を持つ。
 (h) 地域や学校、子供たちの実態に応じて、創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する。
 (i) 家庭や地域社会との連携を進め、家庭や地域社会とともに子供たちを育成する開かれた学校となる。
また、 平成10年7月29日「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」を答申しました。この答申文にも生涯学習の視点がいたるところに盛り込まれています。
○学校は、子どもたちの発達の状況を踏まえて、組織的・計画的・継続的な教育を行って、子どもたちの発達を促すという特質をもっている。このような学校教育の特質を踏まえ、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校を通じ、それぞれの学校が子どもたちの発達の状況や教育課程実施の現状、教育課題等を踏まえつつ、系統性のある教育課程を用意し、それぞれの教育課題の実現をしっかりと果たしていくことは極めて重要なことである。
○学校は子どもたちにとって伸び伸びと過ごせる楽しい場でなければならない。子どもたちが自分の興味・関心のあることにじっくり取り組めるゆとりがなければならない。また、分かりやすい授業が展開され、分からないことが自然に分からないと言え、学習につまずいたり、試行錯誤したりすることが当然のこととして受け入れられる学校でなければならない。
○幼稚園においては、幼児の欲求や自発性、好奇心などを重視した遊びや体験を通した総合的な指導を行うことを基本とし、人間形成の基礎となる豊かな心情や想像力、ものごとに自分からかかわろうとする意欲、健全な生活を営むために必要な態度の基礎を培い、小学校以降の生活や学習の基盤を養うことが求められていること。
○小学校においては、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度の基礎を身に付け、豊かな人間性を育成するとともに、自然や社会、人、文化など様々な対象とのかかわりを通じて自分のよさ・個性を発見する素地を養い、自立心を培うことが求められていること。
○中学校においては、義務教育の最終段階として、また、中等教育の前期として、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度を確実に身に付け、豊かな人間性を育成するとともに、自分の個性の発見・伸長を図り、自立心を更に育成していくことが求められていること。
○学校では教師と子どもたちとの信頼関係を基盤に教育活動が展開され、時代を超えて変わらない価値あるものを子どもたちにしっかりと身に付けていかなければならないが、学校教育は言うまでもなく、次代を担う子どもたちの教育を行う場であり、これからの社会の変化を見通し、その変化に適切に対応できる力を育成することもまた極めて重要であると言わなければならない。
○激しい変化が予想される社会において、主体的、創造的に生きていくためには、中央教育審議会第一次答申においても指摘されているとおり、自ら考え、判断し行動できる資質や能力の育成を重視していくことが特に重要なこととなってくる。そして、そのためには、これからの学校教育においては、これまでの知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、自ら学び自ら考える教育へと、その基調の転換を図り、子どもたちの個性を生かしながら、学び方や問題解決などの能力の育成を重視するとともに、実生活との関連を図った体験的な学習や問題解決的な学習にじっくりとゆとりをもって取り組むことが重要であると考えた。
○これからの社会においては、生涯を通じ、いつでも自由に学習機会を選択し、楽しく学び続けることが重要であるとの生涯学習の考え方を更に進めていくことが必要である。我々は、完全学校週5日制の導入を契機に、教育は学校教育のみで完結するのではなく、学校教育では生涯学習の基礎となる力を育成することが重要であるとの考え方に立って、教育内容の改善を図る必要があると考えた。
○これからの学校教育における学習の指導と評価の在り方が極めて重要であるということである。
 自ら学ぶ意欲や思考力・判断力・表現力などの資質や能力の育成を重視するこれからの学校教育においては、従来のような知識を教え込むような授業の在り方を改め、子どもたちが自分で考え、自分の考えをもち、それを自分の言葉で表現することができるような力の育成を重視した指導を一層進めていく必要があると考えた。また、指導に当たって教師は子どもたちと共に学び考え、子どもたちの問題解決を助けていくという姿勢が大切であると考えた。こうした指導を進めていく上で、学習の評価の在り方は極めて大きな影響をもつものである。いくら理想的な指導の在り方を説いても、例えば従来どおり知識の量を測るような評価が重視されていては、指導の改善は進まないと言わざるを得ないからである。
 学力については、中央教育審議会第一次答申も指摘しているとおり、これを単なる知識の量ととらえるのではなく、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]を身に付けているかどうかによってとらえるべきであると考える。ただし、当然のことながら、自ら学び自ら考える力を育成する基盤として、一定の基礎的・基本的な知識や技能等を身に付けていることが不可欠であり、そのため、教師は、カで述べたように、子どもたちにこうした基礎的・基本的な知識や技能等を繰り返し学習させるなどして、確実に習得させる必要がある。
○変化の激しいこれからの社会を考えたとき、多くの知識を教え込むことになりがちであった教育の基調を転換し、学習者である幼児児童生徒の立場に立って、幼児児童生徒に自ら学び自ら考える力を育成することを重視した教育を行うことは極めて重要なことである。
 そのためには、幼児児童生徒の発達の状況に応じて、知的好奇心・探究心をもって、自ら学ぶ意欲や主体的に学ぶ力を身に付けるとともに、試行錯誤をしながら、自らの力で論理的に考え判断する力、自分の考えや思いを的確に表現する力、問題を発見し解決する能力を育成し、創造性の基礎を培い、社会の変化に主体的に対応し行動できるようにすることを重視した教育活動を積極的に展開していく必要がある。また、知識と生活との結び付き、知の総合化の視点を重視し、各教科等で得た知識・技能等が生活において生かされ、総合的に働くようにすることに留意した指導も重要であると考える。
○完全学校週5日制を円滑に実施し、生涯学習の考え方を推進していくためには、時間的にも、精神的にもゆとりのある教育活動が展開される中で、厳選された基礎的・基本的な内容を幼児児童生徒がじっくり学習し、その確実な定着を図るとともに、幼児児童生徒が自分の興味・関心等に応じ選んだ課題や教科の学習に主体的に取り組み、学ぶことの楽しさや成就感を味わうことができるようにすることも必要なことである。

 私は「総合的な学習の時間」を生きる力を相互的にはぐくむ時間ととらえています。つまり、「知の総合化」と言っても良いと思っています。このことについても次のように述べてあります。
○「総合的な学習の時間」を創設する趣旨は、各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を確保することである。また、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]は全人的な力であることを踏まえ、国際化や情報化をはじめ社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するために教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習をより円滑に実施するための時間を確保することである。
 この時間が、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]をはぐくむことを目指す今回の教育課程の基準の改善の趣旨を実現する極めて重要な役割を担うものと考えている。
○「総合的な学習の時間」のねらいは、各学校の創意工夫を生かした横断的・総合的な学習や児童生徒の興味・関心等に基づく学習などを通じて、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることである。また、情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付けること、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育成すること、自己の生き方についての自覚を深めることも大きなねらいの一つとしてあげられよう。これらを通じて、各教科等それぞれで身に付けられた知識や技能などが相互に関連付けられ、深められ児童生徒の中で総合的に働くようになるものと考える。
 さらに、平成8年4月生涯学習審議会も文部大臣に対して「地域における生涯学習の充実方策について」答申しています。この答申文に、「学社融合」という言葉が登場します。答申文は「学社融合」を次のように定義しています。
○従来、学校教育と社会教育との連携・協力については、「学社連携」という言葉が使われてきた。これは、学校教育と社会教育がそれぞれ独自の教育機能を発揮し、相互に足りない部分を補完しながら協力しようというものであった。しかし、実際には、学校教育はここまで、社会教育はここまでというような仕分けが行われたが、、必要な連携・協力は必ずしも十分でなかった。この反省から、国立青少年の家、少年自然の家においては、学校がこれらの青少年教育施設を効果的に活用することができるよう、「学社融合」を目指した取組が行われている。
 この学社融合は、学校教育と社会教育がそれぞれの役割分担を前提とした上で、そこから一歩進んで、学習の場や活動など両者の要素を部分的に重ね合わせながら、一体となって子どもたちの教育に取り組んでいこうという考え方であり、学社連携の最も進んだ形態と見ることもできる。このような学社融合の理念を実現するためには、例えば、学校が地域の青少年教育施設や図書館・博物館などの社会教育・文化・スポーツ施設を効果的に利用することができるよう、それぞれの施設が学校と連携・協力を図りつつ、学校教育の中で活用しやすいプログラムや教材を開発し、施設の特色を生かした事業を積極的に展開していくことが重要である。これによって、学校だけでは成し得なかった、より豊かな子どもたちの教育が可能になるものと考えられる。
 また、学校と家庭・地域社会との密接な役割分担と連携を図りつつ学社融合を円滑に推進していくためには、その基盤を整備していくことが重要である。学校と施設間の人事交流の一層の促進や、学校教員が青少年教育施設で体験的な研修を行うような機会を拡充することなども検討される必要がある。

 これまで見てきましたように生涯学習の視点からの学校教育の展開は時代の趨勢であります。
 これまでのことを要約して申しますと、 学校では、生涯にわたる人間形成の基礎を培うため、基礎的・基本的な内容の指導を徹底し、個性が尊重され多様な選択教科の履修や進路指導の充実を図り、自己教育力の育成を図っていくことです。
 これが、生涯学習社会実現のうえでの学校の役割であると思います。
 特に、学力については、単なる知識や技能の量の問題としてとらえるのではなく、学校、家庭、地域社会における学習や生活を通して子どもが自ら考え、主体的に判断し、行動するための資質や能力として身につけるものでなければならないと思っています。
  また、自然体験、社会体験、生活体験等を通して、論理的思考力、想像力、直感力などの創造性の基礎となる能力を育むとともに豊かな感性や社会性の育成が大切であることは申すまでもありません。
 このような時代の流れの中で、学校や地域の人材活用が叫ばれ始めました。
 地域社会には、郷土の歴史を研究している郷土史家、伝統的地域の行事や伝承遊びなどを守り伝えている人々、ボランティア活動の実践者など数多くの有能な人々がたくさんいらっしゃいます。このような地域の人材の学校教育への積極的な活用が始められているのはご存じの通りです。
 また、先生方が持っている歴史や文学、音楽や美術などの専門的知識や技能、コンピュータ操作、各種のスポーツやレクリエーション活動に対する知識や技能を社会教育に活用することが期待されています。先生方の社会教育活動への参加が徐々に見られ始めています。
 これからは、学校や公民館等を多機能型の幅広い学習の場として利用し、教職員もまた地域における指導者の一人として社会教育活動への積極的な参加が望まれます。
 生涯学習という考え方は、活力と潤いある幸福な社会をめざして、乳幼児期から高齢期にいたるまでの各ライフステージを通じて学校、家庭、社会の各分野の教育機能の有機的統合を図る理念です。
 このような考えに立って、学校は児童生徒の生涯学習の基礎を培う場であり、地域や社会の人々の様々な学習ニーズに応える生涯学習機関であること、学校教育が変わらなければ生涯学習体制も変わらないし、生涯学習の基盤整備も考えられないこと等を一人ひとりの先生方がはっきりと認識すべきであると私は思います。。
 さらに、先生自身が生涯学習に取り組むことは、先生自身にとっても新しい発見と自己の充実・向上に結びつくものであり、教師としての使命感の高揚や指導力の向上に役立つとともに、学校教育そのものにも好ましい影響を与えるものであることを認識して、先生方は生涯学習の実践者であり指導者であるとの自覚を持ち続けてほしいものです。
 生涯学習時代の先生方への期待は大きいものがあります。

6 各学校の生涯学習担当者の役割
 各学校の校務分掌には生涯学習推進担当者が位置づけられていると思います。その役割を見ていきます。
 第1は、教育改革の理念及び動向への注視並びに教職員及び地域住民へのその啓発です。その活動としては次のようなことが考えられます。
@生涯学習関係情報を収集・提供
A校内研修の充実
BPTA研修の充実のための指導・助言
C公民館活動への指導・助言
Dその他
 第2は、生涯学習の視点からの学校教育の創造です。
@もっとも大切なことは「生きる力」をはぐくむ教育課程を編成すること。
A知の総合化にふさわしい総合的学習の時間を創造すること。活動あって学び無しなどと指摘されないような学習内容を創り出すことです。
B各教科の年間計画の生涯学習の視点からの見直しです。学習指導案に「生涯学習の視点」を明記することも一つだと思います。
C学校行事その他の年間計画の生涯学習の視点からの見直しです。
Dその他各学校において、必要と思われることを創造して欲しいものです。
 第3は、学校と地域社会とのコーディネートの役割です。
@町村教育委員会では、学社連携(融合)推進体制が整備されることと思います。その一員として町村や学校の推進体制を整備して欲しいと思います。
A町村教育委員会及び幼・保・小・中・高校との連携をさらに推し進めて欲しいと思います。これは、生涯学習の理念であります縦と横の統合の考え方です。
B人材バンクの設置。これは町村でも各学校でも設置が始まりました。よりたくさんの人材を確保し、より多様で豊かな学習過程を創造して欲しいものです。
C教材マップ作成。地域には様々な自然や歴史、文化、産業などがあります。生きた教材として活用するため是非作成したいものの一つです。
Dその他

 生涯学習推進担当の先生の役割はとても重要です。ですから、私はこの担当は教頭先生若しくは教務主任があたるべきだと考えます。
 私は、このような考えから特に生涯学習推進担当者は置かずに、教務主任の仕事にこのような内容を含ませていました。
 生涯学習社会における学校の役割が果たせるような教育課程を編成することです。
 その視点として、
 (1)生涯学習の基礎つくりの場としての学校
○自己教育力の育成
  @学ぶ意欲を持ち(学ぶ楽しさと意味を知り)、A学ぶための方法を修得し、B自分の目で見、 C自分の頭で考え、D自分の心で感じ、E自分で意志決定し、F自分の意見を自分の言葉で述べ、 G他者の意見を聞いて理解し、討議し、考えを深めることのできる人間の育成。
(2)ミニ学習社会化
○学校自体をミニ社会化した学習の展開
○ミニ図書館構想 図書室利用 ○ミニ博物館構想 資料室や実験室の利用
○ミニ公民館構想 余裕教室や実習室の利用
(3)生涯学習機関としての学校
○学校開放    ○校庭や体育館等の施設の開放    ○ミニ公開講座の開設
(4)学社連携 学社融合
○家庭と学校の連携   ○学校と社会教育の連携    ○社会教育施設の利用
 ○地域の教育資源や地域の人材活用
(5)生涯学習の基礎をつくる学校の具体的展開例
  @生涯学習の基礎つくり
   ・学習習慣を育てる。 ・観察力を伸ばす。 ・教師と子どもの信頼関係を深める。
 ※生涯学習基礎つくりは教師の役割である。
 A学校中心の教育観の変容
 B学校教育と社会教育の連携
   ・公民館講座「家庭教育学級」等の講師
  C社会教育施設を活用した学校教育活動
  ・青少年自然の家を利用した学校教育活動  ・博物館等を利用した学校教育活動
  ・地域の人材等を活用した学校教育活動
  D学校利用の法的根拠
 地方自治法238条の4・4(行政財産の管理及び処分)
 学校施設の確保に関する政令3条(学校施設の使用禁止)
 学校教育法85条(学校施設の社会教育等への利用)
 社会教育法43条(適用範囲)      同44条(学校施設の利用)
      同45条(学校施設利用の許可)  同46条(行政財産の処分等)
      同47条(使用許可の委任)    同48条(社会教育講座)
 スポーツ振興法13条(学校施設の利用)

7 おわりに
 知能には、結晶性知能と流動性知能があるそうです。
 結晶性知能は、乳幼児期から青年期まで急速に発達し、加齢によっても変化はないそうです。
 流動性知能は、乳幼児期から青年期まで急速に発達するが、加齢とともに衰えるのだそうです。
 常に、新しい技術・知識を覚えることに挑戦することが脳の老化にブレーキをかけることにつながります。
 先ずは先生方ご自身が、職業能力向上のための生涯学習、自己実現を図るための生涯学習にお取り組みください。
 生涯学習社会における学校教育の理念に関することのみをお話ししました。具体的な実践例は割愛しましたが、今後、各学校で生涯学習の視点に立った学校教育を展開される中で、特色ある教育を創造され、互いに情報交換ができますことを期待して話を終わります。
 ご静聴ありがとうございました。