一日のスタートは、朝食から
益城町立第4保育所
平成21年6月10日


 昨日、梅雨入り宣言が出されましたね。
 今日は雨。少雨傾向にある今年は農家にとっては待ちに待った雨ですが、子どもたちにとっては嬉しくない雨ですね。広い運動場で走り回ることができないですから。エネルギーの発散場所がなくて、園でも家庭でも大人を悩ませる時期ですね。しかし、この季節でしか体験でいないものを子どもたちには大いに体験させたいですね。例えば、カタツムリの観察。「つのだせ、やりだせ、めだまだせ」と歌いながら、カタツムリを観察できるのはこの時期だけですからね。
 先ほど園長先生から「保育参観日には、おじいさん、おばあさんもお出でいただくよう呼びかけています」と聞きました。幾人もおじいさん、おばあさんがいらっしゃいます。「家族で子どもの活動ぶりを参観する」いいですね。きっと、今夜は子どもの成長ぶりに花が咲くことでしょう。
 ところで、一頃、「モンスターペアレンツ」という言葉が新聞、テレビを賑わせていましたが、近頃はこの言葉あまり聞かなくなりました。
 世間常識から考えておかしいと思われる要求をするのはいかがなものかとの思いが浸透したからでしょうか。
 それとも、相変わらず自分勝手な要求をすることは絶えないが、今や日常化していて、もうニュースにはならないということでしょうか。
 私は、身勝手な要求は決して子どものためにならないとの思いが浸透してきたからと思っていましたが、あながちそうではないようですね。
 先日、雑誌を読んでいたら、次のような記事が目に留まりました。たばこを吸っている子を注意したら、「親が認めていることを何の権利があっておまえは注意するか」とものすごい剣幕で言われたというものでした。
 昨日の熊日夕刊「はい こちら編集局」に掲載してあったものを切り取ってきました。読んでみますね。熊本市にお住まいの70歳の女性からの電話です。


 先日スーパーで、5、6歳の子ども2人が追いかけっこをしていました。足が悪いので怖くて立ち止まっていたら、1人がぶつかってきたんです。注意したら、近くにいたお母さんが「ほら、おこられたでしょ」とおっしゃってですね。今日も病院で騒いでいる子どもの方を振り返ったところ、こちらもお母さんが「おこられるよ」と私の方を見ながら一言。人にとがめられるからではなく「人とぶつかると危ないから」とか「具合の悪い人もたくさんいるんだから」とか、きちんと理由を説明すべきではないでしょうか。

 
 先週の日曜日、電車に乗っていると、4歳か5歳くらいの子が下履きのまま座席に立とうとしたとき、若いお母さんが「○○ちゃん、ここはみんなが座るところ。靴をはいたまま立ってはいけません。席が汚れます」と注意していました。その子に分かる言葉できちんと理由を説明すべきですよね。
 以前は、地域でみんなで子どもを見守っていました。きちんと理由を言ってなぜそうしてはいけないかを諭していました。そして、付け加えていたのが、「そぎゃんこつすると、たもっちゃんの泣かすぞ」「いいことしよるね。こうへいしゃんの喜ばすばい」でした。「たもつ」は私の父の名前です。「こうへい」は祖父の名前です。
 「善い行いをしたときは褒める、悪い行いをしたときは叱る」は当たり前でした。私もよく地域の方から叱られ、褒められました。このような地域の目がありましたから、誰もがとんでもないようなことはしませんでした。
 近頃は、他人が注意したり叱ったりする光景はあまり見かけません。地域みんなで子育てに当たりたいものですね。
 皆さんは、お子さんがどんな子に育って欲しいとお思いですか。
 こんな子に育って欲しいと思う子ども像を書いてみましょう。「あいさつができる子」「よく手伝う子」「言うことを聞く子」「根性のある子」などです。時間は3分間です。
 時間があれば、「こんな子に育って欲しい」と書いたのをみんなで話し合うとおもしろいのですが、本日は時間がありませんので私がいくつか紹介します。同じようなことを書いた方は、心の中で挙手して下さい。
 「豊かな知識を持った子」「正しい判断力を持った子」「やり抜く根性を持った子」「思いやりを持った子」「感謝の心を持った子」「がまんづよい子」「恥ずべきことをしない子」「卑怯を憎む子」「協力できる子」「自分のことは自分でする子」「実践力のある子」「ルールを守ることができる子」「善悪の判断ができる子」「人を敬うことができる子」「挫折からはい上がることができる子」「命を大切にする子」、まだまだあると思います。
 今書かれた「こんな子」に育って欲しいために、常日頃どんな考えで子育てをしていますか?
 それを話し合うと、子育てについてのヒントがたくさん見つかると思います。ここには、おじいさん、おばあさんもいらっしゃいます。子どもの歳は同じでもお父さん、お母さんの年は違います。「私も以前同じようなことで悩んだが、こうやって解決した」という保護者が周りにはたくさんいらっしゃいます。だから、みんなで話し合うと子育てのヒントがいっぱいあるのです。
 そこに示しています「日々の教え」は福沢諭吉が、子どもとして心がけることを我が子に言って聞かせたものを書き留めたものです。読んでみますね。


  「子供とて、いつまでもこどもたるべきにあらず。おひおひはせいちゃうして、一人前の男となるものなれば、稚きときより、なるたけ人のせわにならぬよふ、自分にてうがいをし、かほをあらい、きものもひとりにてき、たびもひとりにてはくよふ、そのほかすべて、じぶんにてできることは、じぶんにてするがよし。これを西洋のことばにて、インヂペンデントといふ。インヂペンデントとは、独立と申すことなり。どくりつとはひとりだちして、他人の世話にならぬことなり。」


 いかがですか。
 福沢諭吉は、子どもたちに独り立ちを促しています。子どもの独り立ちを促すキーワードは、2つあると私は思っています。
 一つは「手は離して、目は離さずに」であり、もう一つは「早寝早起き朝ご飯」です。
 「手は離して、目は離さずに」について、少し述べます。私たちは案外この反対が多いのです。子どもにできる仕事などはさせないで、子どもがどんな遊びをしているなどは知らないという人が案外多いようです。小学校に勤めていました頃、保護者の皆さんにいつも言っていたことは「上履きは子どもに洗わせて下さい」でした。保護者からは「子どもは綺麗に洗えませんから私が洗います」とか「時間がかかりますので私がつい洗ってしまいます」などが返ってきました。「綺麗に洗えなくても、時間がかかってもいいじゃありませんか。繰り返し洗っている内に上手に洗えるようになります」と言っていました。子どもに洗わせるのは、独り立ちの第一歩です。「洗う」という体験を通して「生きる力」を身につけます。
 数年前、公民館講座の申し込みに若いお母さんが2歳くらいの幼児を連れておいでました。帰りに、「はい、○○ちゃん、あんよ出して」と言って靴を履かせて帰られました。しばらくして、同じ年格好の幼児を連れたおじいさんが来られました。帰りに「○○、靴は自分で履ききるど。じいちゃんが見とるけん、自分で履け」と言って幼児が靴を履くのをじっと見ておられました。「右左反対に履いてしもうたね。よかたい。歩かるるけん」と言って帰って行かれました。
 どちらの子どもも靴を履く体験をしました。後で生きて働く体験はどちらでしょうか?
 本日は、もう一つのキーワード「早寝早起き朝ご飯」をメインにして話します。この「早寝早起き朝ご飯」は、文科相が提唱している国民運動です。
 私の家のすぐ隣にスーパーがあって24時間営業です。昨夜11時頃、近くのスーパーに買い物に行きました。ビックリしたのですが、3歳くらいの子ども連れの客がいるのです。大人にとっては、夜の11時といっても活動中という人も多いでしょうが、子どもにとってはとっくに寝ている時刻です。こんな遅くまで起きていて大丈夫かなと心配になりました。その心配を話しましょう。
 生まれてすぐの赤ちゃんの平均的体重は約3sですね。それが約3ヶ月で倍近くの約6sになります。ところが9sになるのは9ヶ月もかかって1歳頃でしょう。これは、生後4ヶ月くらいまでは昼夜の別なくどんどん出る成長ホルモンが、この時期を過ぎるとある時間帯を過ぎ、ある時間帯になるとまとまって出るようになるからだそうです。その時間帯というのが午前12時をピークとした夜寝ている間ということです。つまり、成長ホルモンは真夜中の12時からまとまって出るということです。しかも、このメラトニンというホルモン分泌のピークは、1歳から5歳だそうです。だから、子どもは早寝が大事なのです。このことは、和洋女子大学教授鈴木みゆき先生が述べておられることです。
 昔から「寝る子は育つ」と言うでしょう。これは科学的根拠があることですね。
 ある学校にいるとき、子どもの就寝時刻を調査したことがあります。そのとき驚いたことは、小学校高学年で真夜中の1時、2時まで起きている子がいたことです。しかもテレビの深夜番組を見て。家族は早く就寝しておられたので知らないのです。自分の部屋のテレビをイヤホーンを使って見ているなら家族は気づかないですね。すぐに親に知らせ、注意しました。就学前の子どもは、9時頃には寝かせつけたいですね。小学生は10時頃までには寝かせたいものです。私は、小学6年生の時、10時まで起きいることができませんでした。10時のラジオニュースでプロ野球の試合結果が放送されていましたが、それを聞く子とができなく、翌日、学校で友から聞いていたことを覚えています。何しろ暗くなるまで遊び、こっくりこっくりしながら夕ご飯を食べていましたから。時には、ご飯茶碗を落とすこともありました。
 先ほど、「寝かしつける」と言いました。就寝時刻は子どもに選択させるのではなくある程度強制的に寝かすことです。ですから、以前から昔話を聞かせたり、子守歌を聴かせたりして寝かしつけていたのです。昔話を聞いたり、子守歌を聴くことで子どもは心が満たされます。愛情をいっぱい感じます。どうぞ、子守歌やお話をしてやって寝かして下さい。
 私たち人間の体内時計は、25時間サイクルだそうです。それをどうやって1日24時に合わせているかというと、朝の光だそうです。脳は、朝の光を浴びることによって「朝だ」と認識して体内時計を24時間に調節するのです。ですから、夜決まった時刻に寝て、朝決まった時刻に起きることが大切なのです。これが生活リズムの基本です。
 朝起きて、太陽の光を部屋に入れるために雨戸やカーテンを開けるでしょう。子どもの脳に「朝だ」と認識させましょう。
 ある学校で、昼夜逆転の子がいました。学校に給食が始まる頃登校してくるのです。顔色もさえず、生気がありませんでした。お母さんによくよく聞くと、「寝るの、寝ないの」「起きるの、起きないの」で子どもは寝たいときに寝、起きたいときに起きるという生活で、就寝時刻も起床時刻も子ども任せです。「朝です。起きなさい」と厳しく指導するように言いました。1ヶ月ほどで生活リズムを取り戻しました。
 朝ご飯の効用について考えましょう。
 私が担任している頃、運動会練習での全体練習の時、よく倒れる子がいました。練習が終わって保健室で休んでいる子に朝ご飯を食べたかを尋ねると、倒れた子のほとんどが朝ご飯を食べていませんでした。食べたという子も食パン一切れとコーヒーというでした。朝ご飯を食べて倒れた子はほとんどいませんでした。
 私たち人間は朝起きるときが、一番体温が低い状態です。おなかも空っぽです。何かを食べて体温を上げ、体にエネルギーを補充しないことには体は動きません。特に脳は、起きてすぐは活発に動きません。
 学校に勤めている頃は、「1時間目が始まる2時間前には子どもを起こして下さい」と保護者に言っていました。だいたい8時40分頃から1時間目は始まります。ですから、6時半には起こすように言いました。就学前の子が起きる時刻は、7時から7時半頃ですかね。
 朝ご飯には、もう一つの効用があります。それは、子どもが家族の愛情を実感する場であることです。皆さんは、家族が起きる前に起きて朝ご飯の準備をしているでしょう。家族に温かいおいしいご飯を食べさせようと思って。これは愛情がないとできるものではありません。仮に今夜私が皆さんのうちのどこかに泊まるとしましょう。私においしい朝ご飯を食べさせようと、明日の朝早く起きて朝ご飯の支度をしますか?おそらく準備をする人はいないでしょう。
 子どもは、ご飯を食べながらお母さんの愛を実感しているはずです。朝ご飯は親子の絆を強める働きもあるのです。
 終わりに、お配りしていますドロシー・ロー・ノルトの「子は親の鏡」をご覧下さい。
 一つ一つ読んでいきます。


                        子は親の鏡

                                                   ドロシー・ロー・ノルト
 けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる
 とげとげした家庭で育つと、子どもは乱暴になる
 不安げな気持ちで育てると、子どもも不安になる
 「かわいそうな子だ」といって育てると、子どもはみじめな気持ちになる
 子どもを馬鹿にすると、引っ込みじあんな子になる
 親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる
 叱りつけてばかりいると、子どもは、自分は悪い子なんだと思ってしまう
 励ましてやれば、子どもは、自信を持つようになる
 広い心で接すれば、キレる子にはならない
 ほめてあげれば、子どもは明るい子に育つ
 愛してあげれば、子どもは、人を愛することを学ぶ
 認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる
 見つめてあげれば、子どもは、頑張り屋になる
 分かち合うことを教えれば、子どもは、思いやりを学ぶ
 親が正直であれば、子どもは、正直であることの大切さを学ぶ
 子どもに公平であれば、子どもは、正義感のある子に育つ
 やさしく思いやり持って育てれば、子どもは、やさしい子に育つ
 守ってあげれば、子どもは、強い子に育つ
 和気あいあいとした家庭で育てば、子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる

 
 いかがですか。
 今学校では、「認め、褒め、励まし、伸ばす」を合い言葉に学校教育がされています。
 学校で、家庭で、地域で「認め、褒め、励まし、伸ばす」ことによって、子どもに自尊感情が育てましょう。最初に考えてもらった「こんな子に」育つはずです。
 お子さんが、心豊かで自立心旺盛な子になることを願って話を終わります。
 ご静聴有り難うございました。