心豊かに生きる 学びのすすめ
〜公民館講座で、私も家族も地域も伸びる〜

平成21年4月22日
益城町文化会館

 楠若葉が新緑で萌えていま。天気も本日の開講式を祝っているようです。
 1年の中で今が一番過ごしやすい時期ですね。
 ちょうど今頃の季節をうたった和歌との説があります柿本人麻呂昨「ひむがしの野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ」は、皆さんよくご存じの和歌ですね。
 私は小学校で学んだように記憶しています。
 数年前、この和歌が小学校6年生の国語の教科書に載っていました。この和歌の学習をしたときの様子をある先生から聞いたことがあります。
 この和歌を学習した後で、和歌に詠まれている情景を絵に表そうということになったそうです。 子どもたちは先ず、東の情景を思い思いに描いたそうです。描き表された情景にあまり違いはなかったそうです。話し合いの結果、東の空の情景は「かぎろひの立つ見えて」から「山の端から今まさに太陽が昇ろうとするところ」でまとまったそうです。
 次に、西の情景を絵に表すと、傾く月の形にいろんな月があったというのです。三日月、上弦の月、下弦の月、満月などなど。東の空から太陽が今正に昇ろうとするときの月はどんな月かをみんなで議論してもなかなかまとまらなかったそうです。先生がヒントを出そうとしたそのとき、一人の子が「太陽と月の関係は4年生か5年生で勉強したごたる。明日理科の教科書ば持ってきてみんなで勉強してみよう。」と提案したそうです。そして、教科書を元に調べてみると、太陽が昇ろうとするとき、西の空に沈む月は満月だとみんなで理解し合ったという内容でした。私は生涯学習の視点からの国語の学習だと感じ入りました。国語の学習だ、理科の勉強だと決めてかかるのではなく、「これまでの生活や勉強で学んで得た知識や技能を総動員して問題を解決する」このような学習が今学校で行われています。私はこれが生涯学習時代の学校教育だと思っています。
 生涯学習というと社会教育のことと思われがちですが、学校では生涯学習の基礎を培っています。公民館講座では、皆さんが生涯にわたって学び、心豊かに生きる暮らしづくりを応援しています。
 もう、6年前になりますが「いきがい」教室で熊本機能病院長の話を聞きました。先生は、「人は40歳代から老化が始まる」と言われました。そしてその特徴として次の5つを挙げられました。その5つとは、「物覚えが悪くなる、物忘れが多くなる、怒りっぽくなる、動作が緩慢になる、社会性が狭まる」です。この5つは、すべて私には当てはまります。皆さんも当てはまりはしませんか?
 私は、このような老化の進行にブレーキをかけるのに適しているのが公民館講座だと思っています。
 今年もペン習字を始め、15講座を開設し、本日現在約500名の方が受講を申し込まれています。今年1年間、いきいきすこやかに学びましょう、遊び心を持って学びましょう、生活リズムを整えましょう、そして新しい友達をたくさんつくりましょう。3月の学習成果発表会での発表を楽しみにしています。
 と同時に、公民館講座で学んで得た知識や技能を地域づくりに生かしてほしいと思います。地域づくりに生かす方法はいろいろあると思います。
 人は一人では生きていくことができません。地域や隣近所で支え合いましょう。子どもから高齢者まで、ともに心豊かに生きる地域をつくりましょう。人のためにできる喜びを味わいましょう。
 具体的には、あいさつ運動があるでしょう。
 声かけ運動があるでしょう。
 皆さんが率先して公民館で学ぶことによって学びの風土づくりがあるでしょう。
 あるいは、子育て応援があるでしょう。
 レジュメに示しています新聞の切り抜きをごらんください。これは、私がある研修会で「子縁」という言葉を聞いたときのことを投書したものです。


          子どもを地域で育みたい

 京都大学霊長類研究所の正高信男教授は、「ヒト以外の動物に老人は存在しない。老人とは、繁殖を停止したのに、なおかつ生きているヒト。生物にとって子孫を残すことは何よりも大事な役目。子孫を残す役目を終えると、その個体は無用の存在となる。なぜヒトは子孫を残す役目が終わってからも生きているか。それは、社会的には生きる知恵を伝え、家庭にあっては子育て支援に関わってきたから。」と述べられたことがある。
 少子・高齢時代の今こそ社会の第一線をリタイアした人の出番だ。今の若者は大学を卒業するまでに親と先生以外の大人との会話がとても少ないという。
 私は小さい頃、近所の大人から「そぎゃんこつすると、父ちゃんの泣かすぞ」「おっ、ええこつしよるね。じいさんの喜ばすぞ」と声をかけてもらっていた。また、時には「もうちょっとがんばれ」と背中を押してもらってもいた。
 ある研修会で「子縁」という言葉を聞いた。子どもや孫のつながりを通して、地域の宝である子どもたちを地域ぐるみではぐくみたいものだ。

 
 益城町では、昨年から放課後子ども教室を飯野小学校と津森小学校に開設しました。そこでは、「そろばん教室」の皆さんが子どもたちにそろばんでの計算方法を教えています。子どもたちからはもとより、両校の先生方、保護者からたいへん喜ばれています。
 また、教えている講座生の方からは「子どもが分かったとき、にこっとするあの笑顔がなんとも可愛い。こちらも嬉しくなる」などと話されます。これも「人のためにできる喜び」だと思います。
 終わりに3つの投書を紹介して終わりにします。

 
          「そろばん使い脳と心の若返り」

 年をとると誰でも物忘れが増える。物忘れは脳の前頭前野の衰えによるのだそうだ。しかし、脳を鍛えれば、衰え始めた脳も復活するといわれている。
 脳の活性化と地域での指導者養成を目指して公民館講座「そろばん教室」が昨年10月開講された。講座生のほとんどが60代で、練習に励んでいる。講座では、読み上げ算、読み上げ暗算、かけ算、わり算、見取り算を学習している。
 「何度も何度も練習して、かけ算のやり方が分かりました。」「寝る前に見取り算の練習をすると頭が適当に疲れてよく眠れますが、わり算は頭がさえて眠れなくなります。」「親指と人差し指の動きがスムーズになってきました。」など励まし合って楽しく学習に取り組んでいる。講座がない日も、時間を見つけて練習する学習意欲旺盛な人ばかりだ。
 「そろばんの技能がどれだけ身に付いたか試してみたい」と珠算検定を受験する人も多い。「わり算の第1問で躓き頭が真っ白になってしまいました。でも全部できました。」「心臓がどきどきのしっぱなしでした。」など、試験終了後の表情は満足感でいっぱいだ。結果は、7級から4級を全員が見事合格。合格を知らせたときの「うわぁー、うれしいー。」の喜びいっぱいの声と顔。そろばんは「脳と心の若さを保つ」のに最適だ。


           「学社連携したそろばん学習」

 先日、公民館講座「そろばん教室」の講座生が小学3年生のそろばんの授業を手伝った。
 「そろばんはどんなときに使うでしょうか?」の先生の問に、「そろばんは昔の電卓」とか「お金を計る(計算の意味)とき使う」などと発表し、子どもたちはそろばん学習に興味を示していた。
 そろばんの名称や5珠、1珠の意味、数の表し方と読み方、簡単な足し算、引き算を先生が全体指導された後で、私たちはグループごとに指導助手を務めた。珠を人差し指だけで入れる子、親指だけで入れる子、先に暗算で答を出してから入れる子、5珠を使った足し算が理解できない子など、子どもたちはさまざま。一人ひとりに計算の仕方と指使いを手を取り教えた。計算が出来ると「ヤッター!」と喜びを表していた。
 授業終了後、講座生が掛け算、割り算、読み上げ算、読み上げ暗算の模範を示した。珠を素早く動かし計算する姿を見て、子どもたちは「うわー、すごい」の言葉を発し、そろばんで正確に、素早く計算できることに驚いていた。そして「ぼくもそろばんを勉強しよう」「おばあちゃんのそろばんを借りて練習しよう」と口々に言っていた。
 社会教育の場で学んだ成果を生かして学校教育を支援する「少子・高齢化時代の学社連携」を求めた試みは大成功だった。


 1年間、遊び心を持って楽しく学び続けましょう。そして、知識や技能を社会に生かしましょう。