肥料の危険性(1996年7月) 

              岡本弘司さんの講演より

 農学部の大学院で遺伝子を専攻し、マスターを取得いたしました。食品の
物流の研究をしたいと思い、生協にに勤め、共同購入とか野菜の産地直送、
商品開発や原料の買い付け、そして、販売などの仕事をしておりました。
 
 「農薬」について少しお話しましょう。

 「MRSA」は薬をかけても死なない細菌・抵抗菌の一種です。害虫の場合
は「抵抗性害虫」というのです。薬をかけても死なない、これは非常に深刻な
問題なのです。
 
 たとえば害虫Aに効く殺虫剤Xを散布したとします。はじめはそれでほとんど
駆除できるのですが、害虫Aでも中には生き残るものもいます。その残った
害虫の間で繁殖を繰り返すうちに、ついにどの害虫Aに対しても、殺虫剤Xが
効かなくなるのです。これを「抵抗性の獲得」というのですが、こうなると殺虫剤
をどんどん強力にしなければなりません。

 しかし追いかけっこで、そのうち強くしても効かなくなるので、殺虫剤を替えな
くてはなりません。その度に膨大な開発費がかかります。これが農薬開発には
大変なネックになり、しかも経済的に解決不可能なのです。

 とはいうもののこれまで一般には、害虫駆除には農薬が用い続けられてきま
した。すると当然人体にも悪い影響を及ぼしますので、「残留農薬」が問題に
されるようになりました。しかし、実はそれ以上に深刻な問題が、最近やっと
一般的にも明らかになってきたので、次にそれについてお話します。

 今まで「残留農薬」が体に悪いと考えられていたため、農薬を使っていない
「無農薬野菜」や「有機栽培野菜」が一般的に注目されてきました。しかしほとんど
一般の人は、「肥料が体に悪い」などとは考えたこともありませんでした。

 ところが1990年代に入り、肥料が農薬に比べものにならないくらい体に悪い
ということが、ようやく明らかにされてきた上に、肥料による被害も激増してきた
のです。

 肥料は、化学肥料でも有機肥料でも同様に、主成分は「アンモニア」や「窒素」
です。施肥されるとその成分の「アンモニア」が土壌中の細菌の働きによって
「硝酸塩」という物質に変化します。「硝酸塩」は大人が摂取しても、ほとんど尿
として排泄されるので無害だと一般には思われてきました。

 ところが最近、「硝酸塩」が含まれている野菜を食べると、唾液中の最近と反応して
「亜硝酸塩」になることがはっきりしてきました。この「亜硝酸塩」は「猛毒」で、
かつてそれによって乳幼児の血液が破壊されたり(ブルーベリー症候群)して死亡する
被害が多発しました。しかもこの「亜硝酸塩」が、今までの見積もりよりもはるかに
多く、口の中でできていることがわかってきたのです。

 さらに大人の場合、口の中でできた「亜硝酸塩」が、胃液と反応してNOC
(ニトロソ化合物)という驚くほど強力な「発ガン性物質」が、しかも大量に出来て
いることが最近になってわかってきました。



 その上この「NOC」の「発がん能力」が、農薬の比ではないのです。残留農薬に
ついて実験したとき、100匹のネズミを使って5、6匹ががんになると「発ガン性
が高い」と一般的に言われます。

 一方、「NOC」を少し薄めて二ケ月ほど100匹のネズミに与えると90匹以上がが
んになり、さらにやりすぎると内臓が総て溶けてしまい、がんになる前に死んでしま
います。

 また野菜に含まれる「硝酸塩」は、「残留農薬」の五千倍とか一万倍にも達し、そ
れを食べたときに一回で口の中へ入る量が桁違いなのです。

 さらに農薬は野菜の表面にかかっているので、洗ったり、一番外側を取り除いたり、
また加熱すると分解するので、かなり減らすことができます。しかし一方、「硝酸塩」
は野菜の成分そのものなので、全く減らす方法がありません。しかも加熱処理や冷蔵庫
での保存、漬物にしたりすると、口の中で「亜硝酸塩」になる量がぐっと増えるのです。

 こうして口の中でできる「亜硝酸塩」の量は、子供を含めて日本人一人当たり一日
20ミリグラム以上にもなり、例えると毎日「劇毒薬」を小さじで飲んでいるような
状態なのです。このように「実」は、「肥料」は農薬と比べものにならないほど恐ろしい
物質だったのです。

 ところで注目されてきた「有機農法」をみてみると、一時は土壌中の硝酸塩が減ります。
しかし有機肥料は「家畜の糞尿」などでアンモニアが含まれることにはかわりはなく、
むしろ分解するのに時間がかかる上に、化学肥料よりも肥料成分がたまりやすいのです。
そのため数年で逆転して、有機栽培の方が化学農法よりも「硝酸塩」が激増します。

 だから、今まで素晴らしいと考えられてきた「有機栽培」でも問題は解決しないばか
りか、逆に問題が悪化します。

 実際に早くから「有機農法」を推進していたドイツでは、現在、「圃場の硝酸塩」の
量を検査し、一定基準を超えるとその圃場の収穫予定量の全額補償をして、「作付禁止」
の措置を取っているほど事態は深刻化しています。

 私は、「硝酸塩問題」がこのように深刻になった一番の理由が、「品種改良」であると
考えます。「肥料」は入れすぎると、植物は枯れるのです。ところが、これでは肥料会社
は儲からないので、多額の資金を投入し、いくら肥料をやっても枯れない品種(耐肥性
野菜)を開発してきました。今、世間で売られているのはこういう野菜なのです。

 「窒素」は雨水によって降りますから、「肥料」を入れると窒素過剰になります。本来
の野菜は、「硝酸塩」を吸うとそれを原料にして、「たんぱく質・ビタミン・澱粉」など
の本来の作物に入っているべき成分を作って「実」に送ります。

 しかし、この「耐肥性野菜」は、「硝酸塩」を直接そのまま「実」に送り「ビタミン」
などはほとんど作らないのです。しかも不必要な「硝酸塩」までもどんどん吸ってしまい
(ぜいたく吸収)専門用語で「硝酸野菜」と呼ばれています。

 「NOC」はビタミンと反応して抑制されます。ところが今の野菜は、ビタミンが
ほとんど入っていないので、「NOC」は生成される一方です。植物の中身そのもの
が変わってしまったために、被害が一気に拡大しました。

 こういうものを食べ続けると、がんやアレルギー性疾患が激増する恐れがあります。
最近の研究で、白血病や重症筋無力症も自分に対する一種のアレルギーであることが
わかっていますし、「アレルギーマーチ」と言われるように症状が次々と進行していく
問題もあります。しかも「NOC]は遺伝子への作用なので、細胞分裂がものすごく
さかんな子供は大きく影響を受けます。



 またNOCは胃潰瘍や胃液過多などで傷ついた細胞に非常によく吸収されることが
確認されていますので、ストレスの多い働き盛りの人が被害を受けることになります。
すると税金や年金を支える人を失い、国家経済が崩壊する恐れがあり、諸問題に対応が
遅れがちな厚生省もその対策に動き出しています。

 一般的にはまだ「肥料が悪い」ということがよく理解されておらず、有機農法が素晴
らしいと思われています。

 そして最近それに加えて、EM(Effective Micro-Organisms 有用微生物群)とい
うものが広がっています。日本中の農協や経済連がすでにそれを取り入れ、一部のファ
ミリーレストランの野菜はEMで作ったものに切り替わっています。

 また東南アジアでは劇的に広がり、それを作る大工場を多く建てるなどして、国策で
取り組まれています。この数年で日本に輸入される野菜が片っ端から、EMに代わって
しまうのではないかという勢いで広がっています。

 EMがどういう効果があるのか実際のところよくわかりません。私が偶然図書館で見
つけた本によれば、EMによって最初は「硝酸塩」が少し減るものの、あとで普通の有
機農法よりも圧倒的に増えるようです。

 EM菌はもともと「下水処理システム」であって。分解能力がとても高いのです。だ
から初期効果が高く、あらゆるものを肥料成分に変えてしまうのです。だから最初成長
がよく、「実」がよくなるのですが、土を徹底的に分解し尽くし、消耗し尽くすらしい
のです。

 結局は「硝酸塩」が徹底的に増えてしまう恐ろしいものなのです。

 公式なデータではありませんが、「無肥料・無農薬栽培」では、一般的に行われてい
る農法に比べて、「硝酸塩」が、100分の1とか、200分の1というふうに非常に
少なくなっているのが確認されています。

 だから「無肥料・無農薬栽培」でないとこういう問題は絶対解決しないのです。

 それでも一般に売られているものは非常に悪い上に、みんなが知らないから、これか
ら加速度的に悪くなっていきます。そしてあと数年で、「硝酸塩」の激増とそれに伴う
被害が問題化するでしょう。だから大変な状況に置かれていることを認識して頂きたい
と思います。

 今後は「家庭菜園」で「無肥料・無農薬栽培」の野菜を作ることをお勧めします。