このゲームは対談にするしかないでしょう!
 と思っていたのですが、
ラオウ:「あんまり古いゲームで、しかもマイナーなのはやっぱりダメだと思う。」
吉 井:「ちらっと噂に聞いたけど、絶対にプレイしたくない。」
 などと、どうあがいても対談のネタにすることを承知してくれそうもないので、感想日記という形で採り上げることにしました。
 高任もレースゲームに詳しいというわけではないのですが、このゲームの出来が凄まじいということは誰もが理解してくれると信じています。
 
 このゲームは今を遡ること2年ほど前に発売されたパソゲー(18禁)なのですが、高任はラオウさんのおかげでこの凄まじいゲームをプレイする機会が与えられました。
 状況としてはこんな感じ。
 
ラオウ:「高任さん、高任さん!このゲーム!このゲームやらないと2000年問題は見えてこないよ!(当時は1999年)」
高 任:「アンタ、レースゲームには興味なかったのでは?」
 などと呟きながら手に取ったパッケージは……ごくごく普通のゲームに見えました。今思うと、何故それが感じ取れなかったのか不思議に思います。
 ただ、当時はレースゲームと18禁をどうミックスさせるのかに、少し興味が湧いただけのことでした。
 このゲームをやらないと一生の不覚とまで言い切ったラオウさんの表情が少し気になったのですが、おとなしく家に帰って起ち上げました。
 さて、ラオウさんがお勧めしてくれるゲームは、大きく2種類に分かれます。
 1つは本当にお勧めのゲーム。
 さあ、勘のいい人ならここで答えが見えましたね。(笑)
 そう、もう一つは
 
 自分だけがこんな苦しみを味わうのがイヤで、他人に無理矢理押しつけてしまおうと考えるゲーム。
 
 もちろん、ラオウさんにとってこのゲームは後者だったと高任は確信しています。
 しかしゲームを始めた当初はともかく、やりこんでみるとこのゲームが決して単なるクソゲーじゃないことに気が付きました。
 そう、このゲームはどちらかと言えば背筋の痺れるようなバカゲーと言っても良いと思います。
 『どちらかと言えば』という曖昧な表現を使ったのは訳があります。
 このゲームを構成する、『レース』『シナリオ』『システム』『エロ』などの要素が、全くかみ合わずに存在感をアピールしているからです。
 『才能の無駄遣い』とか『一体何のゲームが作りたかったのか?』とか『ミニゲームが一番面白い』などと、レースゲームとしては名高い『ゼロ4チャンプシリーズ』と少し感覚が似ているかも知れません。
 
 黒背景に白文字で『プロジェクト・バイ・ドリームズ』…このゲームのタイトルにもある『ドリーム』という単語が妙に気にかかります。
 そして次に、英文が……ふむふむ、風を感じ……?
 
 『風を感じる』のは、どちらかと言えばバイクの世界だと思いますが、ひょっとするとオープンカーなんでしょうか?
 
 車のドアが閉まる音、突き抜けるようなエンジン音…そしてここで初めてタコメータ(エンジン回転計)と速度計のグラフィックが登場します。
 次の瞬間には、リズム感のある音楽と、ケツを左右に振りながら急発進する車とそれを追う車のグラフィック。
 なんだか拍子抜けするぐらいまともな始まり方で、ほっとするやらがっかりするやらですが、ノリの良さそうな音楽と雰囲気のあるグラフィックに身を乗り出しかけた瞬間、曲にヴォーカルが入りました。
 
 いきなり平手打ちされたような感覚に襲われます。
 
 こう書くと何か誤解されそうですが、曲そのものはなかなかアップテンポのいい曲です。そしてヴォーカルは、サビの部分を聞く限りでは声質は良さそうですし、リズム感もいいです。
 おそらく、歌詞が曲のリズムに全然合ってないのと、歌い手のことを無視しているのが大問題だと思われます。
 そのくせ、オープニングは曲のリズムに合わせて作ったのでしょう、シーンの切り替えや視点変更、文字の挿入タイミング等は絶妙です。曲がサビへと入る部分の強調した三音にタイミングを合わせてCGを持ってくるなど、かなりのこだわりを感じさせます。
 競い合う二台の車を追うカメラ視点や、画面バランスを考えた文字列の登場等は、なかなか見応えがありました。
 そのあたりのこだわりだけでも、そこらに転がっているゲームとは一線を画しているのですが、何故かユーザーに与える印象は最悪です。
 まあ、エロゲーと言うことで『無意味に下着をちらつかせた娘さんが水死体のように下からせり上がってきたり』『うつろな表情の娘さんの顔半分がベタ処理だったり』したのが、ダメダメ感をより一層促進しているのは言うまでもありませんが。
 と、まあ一言で説明しづらい画面なので分けて説明しましたが、『車の映像』『女の子』『文字列』の3つが画面に現れ、流れる曲は絶妙の不協和音。
 何が凄いって……各担当の才能のベクトルが完全に逆方向どころの話ではなく、3次元的にねじれの方角に向かっているところがです。
 1つ1つはなかなかの出来なのですが、これが合体した瞬間、見事なハーモニーを奏で出すどころか、絶妙な不協和音を発するあたりがゲーム開発の難しさでしょう。
 とまあ、約一分程のオープニングは凄まじいの一言に尽きます。
 
 そして本編。
 オープニングであれだけトバしてくれたからには、本編でも魅せてくれるに違いありません。
 もうこの時点で、高任は既にまともなゲームを期待していませんでした。
 さあ、どーんと来いやあっ!
 と、気合いを入れてゲームスタート。
 真っ白な画面に文字が2行。
 読み終えてスペースキーを押しました……反応無し。ひょっとするとエンターキーでしたか、と思ってエンターキーを押す……またまた反応無し。
 Zキー、Xキー、ならびにテンキーも反応無し。
 おやあ、いきなりパソコンがこのゲームに拒否反応を起こしてフリーズしたのかな?と思いましたが、どうも違うみたいです。
 取りあえずキーボードをカチャカチャいわせていると、反応が!
 
 スクロールキーだよ、おい。
 
 上下スクロールキーを押すことで、グラフィックの上をテキストが流れていきます。何やら予想していたのと方向性が違いますが、いきなり魅せてくれました。
 ただ、残念なことにシナリオは普通です。……ラオウさんあたりなら、文句の3つ4つ出てきそうな気がしますが、テキストもまあ普通。
 出来ることなら、シナリオもろとも遠い世界に旅立ってしまうような傑作を期待していたのですが、それは無理な相談だったのでしょう。
 しかし、忘れてはいけないことがあります。
 
 これはレースゲーム。
 
 レースゲームはレースで語る。
 というか、本編ではレース以外に語る部分がほとんどありません…否、レース部分が強烈すぎます。それ以外のことを語るぐらいなら、とことんまでレース部分の仕様について文句を垂れ流し…もとい、その斬新な仕様を説明する方が有益かと思われます。
 一応のツッコミ所としては、いかにも18禁らしく、主人公のもっこりは『シ〇ィーハンター並(しかもジーンズ)』とか、革のロングブーツを履いたまま車のバトルに挑むお姉さんとかいろいろありますが、それは蛇足というものでしょう。
 レースについて簡単にかいつまんで語ると、レースそのものは一対一のバトル形式。どんなに時間がかかろうとも(限度はありますが)相手に勝てばおっけーです。
 もちろん、そのコースの形状に合わせてセッティングも変更できます。と言っても、おなじみのギア比セッティングやパーツ交換ではなくて、低速・中速・高速のギア比選択とポイント割りふりによるセッティングですが。
 ちなみに主人公の愛車は、GTA1300にプラグ2本仕様の2000ccのエンジンをのせかえてるんですが……何やら私の知人はそのことについて凄く憤慨してました。
 
 しかもニトロあり。
 
 『よろしくメ〇ドッグ』の読者世代にとっては、どう反応して良いのかわかりかねますが、とにかくスタート。
 いくつかあるBGMはどれもテンポがよく、レースゲームとしてはまず問題がありません。つーか、レースそのものに問題がありすぎてそれどころじゃないんですけどね。
 まず、画面の左上にタイム表示。中央やや右上に順位、そして右上に速度。左下には小さくニトロの残量。
 さあ、風を感じて……ちょっと待てコラ!
 速度の位置がすごい見にくいというコトはまあ見のがしてあげましょう。そんなことよりも、何よりもまずツッコムべき所は…
 
 タコメーターはどこよ?
 
 はっきり言うと、タコメーターがありません。あのオープニングは一体何だったんでしょうか?しかし、タコメーターのないレースゲームというのもなかなか斬新というか、斬新を通り越して退化しているような気もしますが。
 で、これがどういう事態を引きおこしているかというと…
 最高速でコーナーに突っ込んでも、速度が落ちない。
 とにかくアクセルを踏んでいれば、どんなカーブでも減速せずに曲がっていきます。…もちろん、曲がりきれたらの話ですが。
 まあ、エンジンの回転数の概念がないから仕方のない話です。後はドリフトが出来ないのでグリップ走行のみ(その割にはスリップしまくり)とか、速度感覚が変を通り越して異常です。
 ああ、これがどっかんターボなのか…なんて思うはずもありません。このゲームをプレイするには、これまでのレースゲームで得た経験値を全て吐き出さなければなりません。ついでに、現実世界における運転感覚も。
 はっきり言って、慣れるまでは悪夢です。慣れたら慣れたで、他のレースゲームが出来なくなりますけど。
 
 …これがドリームの正体なのか?(多分違う)
 
 これを車と考えてはいけません。……そうですね、例えるならホバーレーシング系統と思えば、なんとか許容範囲でしょう。
 それ以前に、主人公の愛車と相手の車との性能差がありすぎるので、相手との差が一定以上に広がらないようにプログラムしているところがまた涙を誘います。
 なんせニトロを使っても向こうの車のほうが速かったりするケースがあるので、それがないと勝負にならないという話もありますが。
 しかし、このゲームはエンジンが回転してないくせにいらん所には気が回ってまして、どうしてもクリアできない人には必殺チューンが存在します。
 さてこのゲームにおけるチューンポイントの割りふりには4つの項目が存在します。最高で5ポイントを割りふれるのですが、ポイントは全部で11しかありません。余ったポイントはニトロ使用数。(笑)
 まずはパワー。さらに、ハンドルとブレーキ。……そしてダメージ
 実は、くせもの揃いのこのゲームのなかで厄介なのが、このダメージなのです。高任なんかは自力でクリアしようと思って、パワーを重視して叩き込み、後はハンドルとブレーキにちょびちょびと割り振ってました。
 が、後にこれがゲームを難しくしていたことを知りました。
 何が難しいってそりゃあ……やっとの思いで相手の車を抜き去った瞬間、後ろから追突されてクラッシュ。そして、相手の車は無傷で走行中。
 なんていう悪夢を何度見せられたことか。
 初めてこれをやられたときは、『なるほど、そういうのもありなのか?』と思い、コーナリングの最中に後ろから接触、もちろんクラッシュ。
 
 ただし、プレイヤーの車だけ。
 
 直線でニトロを使用して、後ろから追突。
 プレイヤーの車だけクラッシュ。
 相手の車を直線でブロック。
 プレイヤーの車だけクラッシュ。
 前を走るバイクに追突。
 プレイヤーの車だけ(以下略)
 後ろからバイクに追突される。
 プレイヤーの(以下略)
 
 ……悪夢です。
 さすがにバイクに追突されて、こっちの車だけクラッシュというのはあんまりだと思うのですが。
 さて、ここまで書けば必殺チューンの正体は見当が付きましたね。
 そう、文字通り必殺です。
 しかも、壁にぶち当たってもほとんど減速せずに走り続けることが出来る21世紀の夢のマシーンが登場です。
 
 でも、それはゲーマーとしての敗北。
 
 上手い人なら問題はないのでしょうが、高任レベルだとなかなか苦労しました。高任は相手のコース取りはおろか、減速ポイントを全て暗記して、『抜いてはいけないポイント(後で追突される)』を把握してなんとかクリアしました。
 ゲームクリア後のタイムアタック(ライバル車に勝たない限りタイムが登録されない)の際は、必要不可欠のテクニックだと思われます。高任の感じる限りでは、このタイムアタックに比べたら、ゲームの本編の難易度はぬるま湯のようでした。
 
 とまあ、大まかなところをツッコんで見ましたが、実は鬼のようにやり込んでみるとスピード感覚に溢れててなかなか楽しいと思えるようになります。特に峠のコースは良くできていて、左右へとリズム良くハンドルを切っていると爽快感さえ覚えてしまいます。
 ……ただし、その境地に至るまでは地獄ですが。
 おそらくこのゲームの制作スタッフは、みんなこの感覚に支配されていたのだと思われます。ただ問題は、このゲームをそこまでやり込むユーザーがどのぐらいいたのか?という一点に尽きます。
 タイムアタックのスコアをインターネットでバトル!などと煽ってるからには、スタッフはやる気満々だったのに違いありません。おそらくは一部のゲーマーが集って鬼の様なタイムを競い合っていたのでしょう。
 
 しかしこのゲーム、18禁を求めて購入したユーザーにはレースがイヤでしょうし、レースを求めて購入したユーザーは、それはそれで辛いモノがあったと思われます。
 そして高任はと言えば、このゲームをクリアした後電話の受話器に手を伸ばしました。
「もしもし、高任ですけど!『湾岸ドリーム』ってゲーム知ってる?このゲームやらないと一生の不覚だよ。もう、このゲーム最高!」
 などと、売り上げに貢献したとかしないとか。(笑)
『なんじゃあ、こりゃあっ!』
 という怒りの電話に対しては、
「『最高』とは言ったがな、『良い』とか『素晴らしい』とかの形容詞にかけた覚えはないぞ。」
 と答えて、友情にひびが入ったとか入らないとか。
 ラオウさんから始まったこのチェーンゲームはどこまで続いていったのでしょうか。(笑)
 
 ところで、……このゲームをやけにしつこく勧められた人はいませんか?(汗)それはひょっとすると…(笑)

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