『たまたま』(PC)
 
 ひょっとすると、『たまたま〜となりの彼女は声優のたまご。たまたま生まれた恋のたまごが…』が、正式タイトルかも知れませんが、まあ『たま』という言葉を連発してるから、多分『たまたま』だけでオッケーでしょう。
 ちなみに18禁。
 
 というか、サブタイトルだけでゲームの説明になってるような気もしますが。(笑)
 
 主人公、今江悠(変更可能)は大学生……ですが、ただいま休学中。
 休学した理由は……大学で何を学ぶのか、将来自分は何をしたいのか……などを真面目に悩んだ挙げ句というか。
 父親は大学教授……だけど、海外の遺跡発掘のために、ホンジュラスから、エルサルバトルへ……などと、現在は中央アメリカを制覇しつつあるところで、母親も父親と一緒に発掘ライフ。(笑)
 まあ、主人公が朝目覚めたら、二人して海外に旅立っており、挙げ句の果てに移住を決めるような両親……って、ことは海外の大学教授なのか?
 まあ、そういうわけで、残された一人息子である主人公は親戚である初芝亮二(母の弟)がオーナーをしているアパートに部屋を格安で借り、そのかわり週に3日叔父の経営する喫茶店で働くのが条件と。
 
 まあ、そんな主人公の隣に越してきたのが声優のたまごというか、身体はちっちゃいけど元気いっぱいパワフルだよってな女の子、湧井咲(わくい・さき)。
 夢とか目標とかって、持たなきゃいけないんだろうか。夢を向かって頑張ったり、目標を決めて生きたりしてる人間なんているんだろうか……そんな主人公だけに、夢に向かって元気いっぱい猛進中の彼女にひかれていくのは……。
 
 つーか、彼女が主人公に一目惚れしちゃってるんですけどね。(笑)
 
 と、このゲームは声優のたまごである咲と仲良くなることを目標に、メールしたり、電話でデートに誘ったり……のゲームです。
 恋愛レベルは全部7段階。
 地道に感情値をあげていく……ではダメで、ある特定のイベントを起こすことでレベルが上がる(もちろん感情値をあげておくことは必要ですが)タイプのシステム。
 最初は、引っ越しの挨拶を受けるとか、電話番号を教えあう……ぐらいでレベルが上がりますが、もちろんどんどんややこしくなっていきます。
 『家でごろごろする』『ネットする』『街をブラブラする』『休日出勤する』のコマンドの組み合わせによっては、いつまでたってもイベントが起こらないこともあるので。
 つーか、このゲームは日数制限があり、レベルが低いままだと40日ぐらい、レベルが高くても60日で、咲は引っ越してしまい、ゲームオーバー。
 それに加えて、週に3日喫茶店で働くのですが、そのシフトを自分で選べる……イコール、この日にこのイベントを起こして、この日はデートに誘って、この日に休養を入れないと倒れちゃう……などと、一見恋愛シュミレーション的なゲームでありながら、その実戦略シュミレーションを思わせる計画性が必要とされるゲームだったりします。
 
 それに拍車をかけているのが、デートスポットを発見していくシステムでしょうか。
 主人公は大学を休学し、半ばひきこもりんな生活をしているせいでしょう……いざ咲をデートに連れて行くにしても、どこに連れて行けばいいのか……もしくは、前回と同じ場所(感情値の上がりが鈍る)になってしまうわけで。
 
 つまり、ゲームオーバーまで最大で約9週間。
 主人公のやることは。
『週に3日喫茶店でバイト』
『街をブラブラして新しいデートスポットを見つける(お金がかかります)』
『ちゃんと休養をとり、体調を整える(無断欠勤すると罰金あり)』
『適度に休日出勤してデート費用を稼ぐ』
『咲とデート、メール…仲良くなるためのイベントを起こす』
 
 漫然とプレイしていては、はっきり言って時間が足りません。
 ちなみに高任は、レベル上昇イベントから逆算して、必要な資金を計算し、出勤日数を割り出し、判明した分をスケジュール帳に埋めていき……
 
 なんのゲームですか、これ?
 
 などと我に返って、ディスプレイに向かってツッコミ入れましたよ、マジで。
 それはそれとして、ある意味恋愛シュミレーションの名にふさわしいゲームと言えましょう。
 つーか、初めてプレイしていきなりクリアできる人間がいたなら尊敬します。
 
 ま、それはそれとして肝心の中身ですが。
 18禁と言っても、最後の最後で……だけですし、どこかのなんちゃってギャルゲーよりははるかにギャルゲーっぽいです。
 主人公と初めて挨拶した……とか、主人公と買い物に行った……とかで、場面が切り替わり、咲が嬉しそうに友達に電話で連絡したりするのですが、こう、いい感じに気恥ずかしい出来で。
 主人公と初めてキスをした……自分の部屋の鏡の前で顔を赤らめ、『考えてなかったけど、この先も…あるんだよね』などと呟いて、お風呂に駆け込んだりするシーンは、つぼにはまればかなりの破壊力。(笑)
 出来ることなら、デートの度にそういうイベントを挟んでくれたら……とも思いましたが、それやるとちょっとくどくなるし、ゲームアビリティ悪くなるから仕方がないかもしれません。
 
 なら、かなり出来はいいんですね……と、聞かれるとここが微妙なところ。(笑)
 
 所々でつぼにはまってくれるモノの、それ以外はと言うと……あくまでも平均的なそつのなさまあ、一人の女の子と仲良くなるシステムだとどうしてもこうなりがちなのは、ある意味宿命なんですが。
 今、一人の女の子と言いましたが……実は、もう一人エンディングを迎えられるキャラがいます。
 初芝莉子(はつしば・りこ)主人公の叔父の娘……早い話従妹ですが、主人公の部屋の掃除をしたり、『にいさま』、『にいさま』と世話を焼きたがると言うよりも、主人公の側にいたいです……が滲み出てるキャラで、ヒロインのはずの咲曰く『な、なにこの美少女は……背が高くて、気品があって、腰の位置なんかすっごく高くて…』という感じの。
 
 というか……間違いなくこっちの方がヒロインの気配がぷんぷんしてます。
 
 咲と仲良くしつつ、莉子のイベントもきちんと拾っていくと……
『にいさまが、私以外の女の人に笑いかけたり、にいさまが私以外の女の人と手を握ったり、にいさまが私以外の女の人の頭を撫でたり……私の知らないところで、にいさまが誰かと愛し合って…それでいつかは結ばれて…それなら……それなら、我慢出来るかも知れませんでした…』
 みたいな、『何で私がヒロインじゃないんですかっ!?』というシナリオライターの叫びが聞こえてきそうな(笑)、莉子の魂のこもった独壇場に。
 
 いや、それはいいんですよ……で・も・ね。
 莉子の言葉を受けて主人公が。
 
 もう、逃げるべきではないのかも知れない…
 長年抑え続けてきた想いから……自分自身の中に眠る本当の気持ちから…
 
 などと、これまでの話というか設定を全部台無しにしてしまうような主人公の……っていうか、グイグイ恋愛レベルをあげてきた咲の立場は?(笑)
 やっぱ、こっちがヒロインで、咲は刺身のつまなんだねっ。
 身代わりだったんだ、プレイヤーは全然気付かなかったけど、咲は主人公にとって莉子の身代わりに過ぎなかったんだっ!
 
 …ってな感じに、莉子の告白そのモノはなかなかにグレードが高いはずなのですが、プレイヤーとしては、ディスプレイに向かってツッコミを入れるのに忙しくて忙しくて。(笑)
 挙げ句の果てに、主人公は莉子と結ばれ……咲は、莉子にある言葉を残してアパートから引っ越していきます。
『莉子さん…主人公のこと……私の分まで、愛してあげてね……おねがい…』
 
 うわあああぁぁっ。
 それはっ、それはヒロインが他のキャラに言われる台詞であって自分が使う台詞じゃないですぅっ!
 というか、深読みすると咲はいつからか主人公の秘めた想いに気がついていて……主人公のことが大事だから、主人公が、本当に主人公らしく生きていけるように……
 
 ひどいっ、ひどいよ主人公っ、なんてやつだ主人公っ。
 
 ぜーはーぜーはー……いや、高任がプレイヤーなんだけどさ。(笑)
 と、まあ……そりゃ、咲にはエンディングが2つありますけど、どっちがヒロイン格かというと……ねえ。(笑)
 うまく表現できませんが……こう、イベント数が多いせいか、莉子のそれに感じられた迫力が咲のそれにはあまり感じられないあたりにも原因があるような。
 
 まあ、絶対お勧め……なゲームではありませんが、これはちょいとつぼにはまりそうと感じる人なら、買って気恥ずかしさを満喫するもよしではないかと。
 
 ま、それはさておき……ヒロイン(?)である湧井咲の声優さんが、湧井咲。
 タイトルといい、多分、何らかの企画というか、そういった流れでのゲームなんでしょうけど……まあ、ユーザーには関係ないですし。
 ただ、エンディングはともかく、オープニングの歌はこの人の声質には向いてないような気がします。有効声域が違うというか……でも、何かの企画だったらオープニングやエンディングは声優さんの声にあわせて曲を作るような気もしますが。
 
 原画、キャラデザは門井亜矢氏なのですが……久しぶりに、下級生がプレイしたくなりました。と、いうかエンディングの曲を聴きたくなったというか。(笑)
 

前のページに戻る