ソルフェージュ(PC)
 
 まあ、わかる人はタイトルからすぐに、音楽がらみのシナリオなりゲームなんだろう、と推測するでしょう……確かに、音楽がらみの内容であり、ゲームでもあるんですけど、なんと言えばいいのか。(笑)
 まあ、シナリオそのモノはフォルテーヌと呼ばれる魔導奏器(選ばれたモノにしか弾けないと言われ……実際、ほとんどの人間はキーを押しても音が鳴らない)を題材に、少女達の淡い友情だったり、恋心だったりを描き出す、百合シナリオです。
 百合シナリオと言ってもピンからキリまでありますが、まあこのゲームの場合はごくライトなレベルで、手を取り合って見つめ合う……感じの。
 
 物語は主人公宮藤かぐら(初等部5年生)が、父親に連れられていったパーティー会場で流れるフォルテーヌの音にひかれ、そして演奏している美しい少女……再従姉妹である高屋すくね(中等部1年)と出会うところから始まります。
 
『フォルテーヌは、心を映す鏡なの』
 
 奏者の心のありようがそのまま音になって現れる……そう語るすくねの音はとても綺麗で、かぐらはすくねの音に憧れ……それは同時にすくね本人への憧れにつながり。
 その時、かぐらの指先が……フォルテーヌの音を紡いだ。
 それは、すくねの音とは違う、かぐらの心を映す……暖かく、素直な音。
 あまりに素直すぎる、憧れをも全て映したその音は……すくねに、妹を思うような感情を芽生えさせ……以下略。
 それから2年、休日毎にかぐらはすくねの屋敷へ行きフォルテーヌの演奏を教わりながら、満たされた時を過ごす。
 そして、かぐらが中等部にあがり……すくねと同じ学舎へ。
 2年という時の流れはすくねに対するかぐらの憧れを強めこそすれ、揺らぐこともなく……しかし、すくねの中では…。
 
「かーぐーらっ」
「わ、わっ…ちほちゃんっ!?」
 
 かぐらの幼なじみである幸村ちほが、かぐらに抱きついたりして仲良くしている光景を、校舎の窓ガラスから強ばった表情で眺めていたりすることから想像していただきたい。(笑)
 ま、何はともあれ色々あって。
 
「本当に…わたくしでいいのね?」
「……すくねさまが、いいんです」
「かぐら…後悔しない?」
「大切な人と…大好きな人と一緒にいられるのに、どうして後悔なんかするんですか?……もしかして…わたしではダメ…ですか?」
「そう……かぐら、わたくしの全てを受け止めなさい…」
 
 などと、黄金色に輝く夕日に包まれ2人はキスをするのでした……。
 
 までが、プロローグ。(笑)
 
 ええっ、まだ続くんですかっ!?
 などとびっくりしてしまうぐらい、完結した話の流れだったんですが……この直後、かぐらは父親の仕事の都合で海外にお引っ越し。
 すくねに会いたい……と、父親を相手にあらゆる手段を用いて、かつて通っていた学校の高等部に入学。
 と、そこから本編が始まります。
 正直、オープニングのテキストは苦痛でしたが、本編になると大分マシになります……慣れただけかも。(笑)
 
 いや、本編も何も……すくねまっしぐらとちゃいますの?
 
 などとツッコミたいのはやまやまですが、どうやらすくねはかぐらのことを良く覚えていない様子。
 一体すくね様に何があったの……という流れで、すくねはもちろん、オープニングで出てきたちほ、そしてもうひとり、黒髪眼鏡娘の天野まりの3人の誰かを相手にしたエンディングを目指すわけです。
 ちなみに、本編はフーガ(遁走曲…先行する主題に対して、後続が対偶主題を提示し、展開させていく楽曲のこと)、すくねシナリオはノクターン(夜想曲)、ちほシナリオはラプソディ(狂詩曲)、まりシナリオはロンド(輪舞曲)と名付けられ、それぞれの名を意識したシナリオの展開がみられるのは、ちょいとおしゃれですね。
 個人的に、ロンドはちょっと違うような気もします……楽曲の最後という意味ならわからなくもないですけど。
 
 と、一応ツッコミ入れときますね。
 なんというか、シナリオ的に色々縛りがあったせいだろうと思うのですが……本編に入ると、あちこちに矛盾が生じ、いろんな意味でシナリオが破綻しまくってます。
 シナリオ別に、ある行動を起こしたのは別人物になるというスタイルを考慮した上で……の矛盾というか、破綻というか。
 シナリオの本筋に関係ない設定部分ならいざ知らず、本筋に関わってくる部分で『おいおいおいっ』とツッコミたくなるような部分が散見できるのがなんとも。
 
 例えば、かぐらが通うことになる桜立舎学苑は、100年以上も前から続く伝統ある女子校で、幼稚舎から高等部までの徹底した一貫教育で気品と知性のある一流の女性を育成云々。
 かぐらの場合、幼稚舎から中等部入学直後までここに通い……高等部の入学試験を受けて…合格と。
 まず、幼稚舎からの一貫教育のはずなのに、かぐらの知り合いは幼なじみのちほ以外出てきません。
 かぐら本人が引っ込み思案な性格だったため友達がほとんどいなかったとか、初等部で同じクラスになれなかった…ってな発言があるため、規模の大きな学校による無関心のせいだろうと好意的に解釈してもいいのですが、それにしては主人公があまりにも異邦人過ぎだったり……学校に通う生徒がみな何らかの楽器を専門とする人間なのは……まあ、音楽が価値基準の上位に来る異世界だからだろうと解釈すると、日常生活でものすごい違和感を覚えたり……数え上げるとキリがありません。
 まあ、ストーリーに関係するのですが……かぐらがフォルテーヌのデュエット部門に推薦されることに関してもそう。
 シナリオによって、かぐらを推薦した人間は異なるのですが……各人が語る推薦理由が、それぞれソロではなくデュエットに推薦した理由になってなかったり。
 もちろん、デュエットなのはシナリオ上必要だから……なんですけど、必要に対して設定が追いついてないのは明らか。
 まあ、海外に引っ越してからすくねと手紙のやりとりとかしなかったのか……に関しては、ちょっとわけありと言うことで。
 説明されても納得は出来ませんけどね。(笑)

 あと、すくねじゃない他の2人のシナリオエンドを迎えたとき、すくねさまの立場ねえなあ(笑)、とか、他にもツッコミたい部分が多々見られるのですが、結局シナリオの設定そのものがすくねシナリオをベースに作られていて、他の2人の事を考えて作られたわけでないのが明らか。

 すくねだけじゃ寂しいよね…と、一旦組上がったシナリオ設定を弄ることなく、残り2人のシナリオを無理矢理はめ込んだ気配がぷんぷんします。 

 それはさておき……この、黒髪眼鏡娘が可愛いというか。(笑)
 なんかこのキャラだけで元は取ったというか……ギャルゲーなら間違いなく、一部で祭になるだろうと思われます。
 ただ、なんかヒロイン(?)3人のうち眼鏡娘のシナリオだけがちょっとばかり異質に感じるというか。
 独断と偏見ですが、眼鏡娘シナリオだけは百合じゃなくて、心持ちギャルゲーテイストというか……個人的には、この眼鏡娘をきっちり百合テイストで描写して欲しかったなあ、と思うのです。
 ギャルゲーにはギャルゲーの、百合には百合の味わいがあるのですから。
 
 
 さて、ここまでがプロローグ。(笑)
 
 
 ここまで読んだだけならごく単純にライトな百合ゲー……と思うでしょう。
 しかしこのゲームの本質は、百合ゲーと見せかけた、ハードな音ゲー。(笑)
 
 早い話、シナリオを進める上で、ミュージックアクションゲームをクリアする必要があるんです……もちろんオート機能があるので、それをオンにすれば詰まることなくシナリオを進めていけます。
 
 オート機能?
 
 ここで、この言葉に反応した人はなかなか鋭いと思います。
 なんつーか、このオート機能がないとクリアできない人が続出するんじゃないかと思われるほど、ミュージックアクションゲーム(以下音ゲー)が難しいのなんの。(笑)
 もちろん、難易度3段階でイージーモードなら何とかなる……とは思いますが、ハードモードだと、ちょっと神の領域というか……。
 
 なるほど、これは選ばれた人間にしか弾けんわ。
 
 と、作中で出てくるフォルテーヌを無条件で納得してしまうような難易度で……もちろん、人間の可能性は割と無限なので、弾ける人は弾けるでしょう。
 つーか、音ゲーさながらに演奏に得点がつき、その得点をインターネットで競い合うことが出来るので、ゲームを作った人たちは自信満々なんでしょう。
 まあ、ゲームそのモノは基本的な音ゲーと同じで……楽譜というか、五線譜の上をアルファベットの書かれた音符が流れていくので、タイミングを合わせてそのアルファベットを押すという、オーソドックスな造り。
 
 だったら、難しいのは単純に高任が不器用なだけではないんですかという疑問は否定できませんが……ハードモードだと、使う文字が約30あります。
 というか、高任がこれをプレイしてて思ったのは…
 
 これは音ゲーじゃなくて、タイピングソフトやんけっ
 
 でした。
 もう、キーボード壊しちゃいそうと言うか、押し間違う。(笑)
 何で30も使うのかというと……あくまでもイメージですが、まず主旋律と副旋律、そしてリズムサウンドの3種類で、それぞれ10個ずつ。
 主旋律はキーボードのAの段を使います……つまり、Aがドで音階が上がるに連れて右へと移動で10個。
 そして副旋律が上の列で、Qの段。リズムサウンドは下の列でZの段を使用。
 
 で、ノーマルモードだとAの段の10個、イージーモードだとAの段のうちの4つだけを使用し、それ以外の音は勝手に演奏してくれます。
 まあ、ノーマルモードまではなんとなるんですが……この音ゲー、ちょおっとやりづらい部分がいくつかありまして。
 これはある種限られた人だけかも知れませんが、五線譜の上を音符が流れてくるモノだから……『ソ』の音階で流れてくるとつい反射的にGを押してしまう。(笑)
 ドレミファソラシド……を、反射的にCDEFGABCに置き換えて反応してしまうわけで。
 まあ、これは仕方ありません……同じ段の左から順に音階をあげていくってのは、作り手側がユーザーのためを考えて作ったのが明らかですから、単純に高任の愚痴に過ぎません。
 
 そして次に、これは気のせいかも知れませんが……五線譜の上を音符が流れてきて、その音符に文字が書かれていると言うことは、音符同士を重ねるような位置にすると読めなくなる事を意味します。
 もちろん、そのあたりを計算して配置しているようなのですが……時折、旋律の音符の位置というかタイミングが半呼吸から四半呼吸ぐらいずれているような。
 無論、これも慣れることで克服可能(?)ですが。
 
 後は、主旋律というかボイスが歌ってるけど、いきなり副旋律演奏に切り替わります……つまり、曲を聴いてこの音階は……などとごく自然に耳コピやっちゃう人はそこでひっかかりまくります。
 イメージとしては、『春のうららの隅田川〜♪』などとさくらの主旋律がそのまま流れ、こっちはいきなり主旋律から副旋律の演奏へと切り替えるような。
 主旋律には主旋律の、副旋律には副旋律の主題というか……そういう音の流れがあるんですが、それらをぶつ切りにして、とびとびの演奏という感じですか。
 慣れるまでにやたら時間がかかることうけ合いです。
 これは先の続きになりますが、音符の位置を重ねることが出来ないために旋律としては連続した8つの音の流れなのに、流れてくる音符は4つだけ……な部分でかなり違和感を覚えます。
 で、これをどうしたらいいのか……と悩んだ挙げ句にとった手段が。
 
 音を消す。
 
 これで、上記の問題はほとんど解消されます。
 自分が押すべきボタンの順番を完璧に記憶して、それらを元に自分の中でリズムなり旋律を作り上げて、画面はあまり気にせずにひたすら作業に没頭。
 これらをふまえた上で、
 
 音ゲーじゃなくてタイピングソフトやんけっ
 
 の発言につながったわけですが。
 なるほど、これこそがブラインドタッチ…違う、何か違う。
 もちろん、上記の問題点が本当に問題点なのか……は定かではありません。あくまでも、高任がプレイした上でそう感じた……というだけに過ぎませんので。
 セガの魂を持つゲーマーにとってこの音ゲーはかなり血が騒ぐかも知れません。

 ただ、操作性ではない問題点もあって……ゲーム中にプレイヤーが演奏する曲が5曲しかないと言うこと。しかも、シナリオ分岐によって演奏する曲がほぼ全部同じ。

 早い話、いろんな曲を演奏する……ではなくて、攻略キャラのテーマソングというか、攻略キャラとのデュエットという名目があるにしても、同じ曲を何度も何度もエンディングに向けて演奏するだけのシステムになっているのが、ゲームとしては難点。

 まあ、ゲームの中で演奏を楽しむユーザーはむしろ少数でしょうから、クリアしてからひたすら演奏モードでチャレンジするのが正しい姿で、シナリオの中でバラエティを求める方が間違っているのかも。(笑)

しかし、こうして考えると……シナリオは難あり、音ゲーはマニア向き、例によって絵は綺麗。
 じゃあ、ダメじゃん……と言い切れない何かがあるのは確か。
 こう、平均的にダメなんじゃなくて、所々でおやっと思わせる部分があるというか。
 

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